膜ろ過とは|MF・UF・NF・RO膜の違い、砂ろ過との違い、地下水を飲料水にする仕組み

膜ろ過とは|MF・UF・NF・RO膜の違い、砂ろ過との違い、地下水を飲料水にする仕組み

膜ろ過とは、目に見えないほど小さな穴があいた膜に水を通し、濁りや細菌、病原性の原虫などをこし取る浄水の方法です。

浄水場では砂の層でこす「砂ろ過」が長く主流でしたが、塩素が効かない原虫への対策をきっかけに、膜ろ過を使う浄水場が増えてきました。この記事では、膜ろ過の仕組みと、MF膜・UF膜・NF膜・RO膜の違い、砂ろ過との違い、水道で膜ろ過が使われる理由と国の決まりを、国と水道事業者の公式資料で整理します。後半では、施設の井戸の地下水を飲料水にするときの膜ろ過の流れと、地下水膜ろ過システムの仕組みを書きます。

この記事でわかること

  • 膜ろ過は穴の大きさでこす処理:膜の穴より大きい濁りや細菌、原虫を止め、水だけを通します。
  • 膜は4種類:穴の粗い方からMF膜・UF膜・NF膜・RO膜で、NF膜とRO膜は水に溶けた成分も止めます。
  • 水道の膜ろ過の浄水場は591か所:水道技術研究センターの集計で、2003年度の36か所から2023年度に591か所へ増えました。
  • 膜ろ過だけでは水道水にならない:国の基準は、膜ろ過の設備に監視と前処理を求め、消毒の設備も別に求めています。
  • 地下水膜ろ過システムは水源を2本にする仕組み:施設の井戸水を膜ろ過などで飲料水にし、吹田市水道部の資料が示す形では、水道を予備に残して使います。
目次

膜ろ過とは|小さな穴の膜で水をこし、濁りや病原体を取り除く処理

膜ろ過は、細かい穴のあいた膜に圧力をかけて水を通し、穴より大きいものを物理的に分ける浄水処理です。

神奈川県の解説は、膜ろ過を、所要の圧力で原水を送り、一定以上の大きさの不純物を物理的に分ける方式と説明しています。薬品で汚れを固めて沈め、砂でこす従来の浄水処理の工程を、膜でこす1つの工程に置き換えられる点が特徴です。

膜の種類と、止めるもの濁り・原虫原虫は4.5〜5μm細菌小さい粒子高分子溶けた成分の一部溶けた塩類MF膜精密ろ過膜ここまで止めるUF膜限外ろ過膜ここまで止めるNF膜ナノろ過膜ここまで止めるRO膜逆浸透膜ここまで止める右へ行くほど小さいもの。穴が細かい膜ほど、水を通すのに強い圧力が要る

図1 膜の種類と止めるもの(当社の整理)。国立環境研究所「環境技術解説 水処理膜」、東京都水道局「膜ろ過・その他の除去設備」「クリプトスポリジウム対策」をもとに作成

膜の穴より大きいものを止める

膜ろ過で取れるかどうかは、取りたいものの大きさと膜の穴の大きさで決まります。

膜は、穴より大きい粒子を表面で止め、穴より小さい水の分子を通します。病原性の原虫クリプトスポリジウムは直径4.5〜5μm(東京都水道局)で、浄水場で使われる膜の穴よりずっと大きいため、膜で止められます。逆に、穴より小さいもの、たとえば水に溶けている成分は、穴の細かい膜でなければ通り抜けます。

水を押し通す力は圧力

膜の穴は細かいので、水を通すには、水圧やポンプで膜の片側から圧力をかけます。

穴が細かい膜ほど水が通りにくく、強い圧力と電力が要ります。東京都水道局の解説も、穴の小さい膜ほど加圧とエネルギーが必要だとしています。浄水場で穴の粗い膜が多く使われる理由の1つです。

全量ろ過とクロスフロー

膜への水の当て方には、原水を全部膜に通す全量ろ過と、膜の表面に沿って流しながらこすクロスフローの2つがあります。

全量ろ過(デッドエンドろ過)は、原水を膜面に直角に当てて全部をこす方法です。クロスフローは、膜面に沿って水を流し、一部だけを膜に通して、汚れが膜にたまりにくくします。学術誌「膜」の総説(2012年)は、地下水は濁りが少ないので、水道では全量ろ過が主流だとしています。

膜の形と材質

膜には、細い管を束ねた中空糸膜、板状の平膜、セラミック製の膜などがあり、原水の水質と設置の条件で選ばれます。

中空糸膜は、ストローのような細い管の壁が膜になっていて、管の内側か外側から水を通します。神奈川県の浄水場では、酢酸セルロース製の中空糸のUF膜を、管の内側から水を通す形で使っています。同じ総説は、樹脂などの高分子膜とセラミック膜の両方が水道で使われているとしています。

膜の種類|MF膜・UF膜・NF膜・RO膜の違い

水処理の膜は、止められるものの大きさで、粗い方からMF膜・UF膜・NF膜・RO膜の4種類に分かれます。

国立環境研究所の解説は、水処理の膜を分離できる物質の大きさで4種類に分けています。次の表は、その解説と東京都水道局の解説をもとにまとめたものです。

膜の種類止める大きさの目安主に取れるもの
MF膜(精密ろ過膜)一般に0.1〜1µmの粒子や高分子濁り、細菌、クリプトスポリジウムなどの原虫
UF膜(限外ろ過膜)0.1µm〜2nmの粒子や高分子MF膜で取れるものに加え、より小さい粒子や高分子
NF膜(ナノろ過膜)2nmより小さい粒子や高分子水に溶けている成分の一部
RO膜(逆浸透膜)主に塩類を分ける(脱塩)水に溶けている塩類などの成分

表1 水処理の膜の種類。国立環境研究所「環境技術解説 水処理膜」と東京都水道局「膜ろ過・その他の除去設備」をもとに作成。1µmは1mmの1,000分の1、1nmは1µmの1,000分の1

MF膜(精密ろ過膜)

MF膜は4種類の中で穴が最も粗い膜で、濁りや細菌、原虫を取るのに使われます。

東京都水道局は、MF膜とUF膜は主に濁りや細菌類を取り除くとしています。穴が粗いぶん、弱い圧力でたくさんの水を通せます。学術誌「膜」の総説は、水道で膜ろ過が広がり始めたころはUF膜が多く、ろ過の動力を下げるため、近年はMF膜の例が増えているとしています。

UF膜(限外ろ過膜)

UF膜は、MF膜より細かい穴で、より小さい粒子や高分子まで止める膜で、「限外ろ過膜」とも呼ばれます。

国立環境研究所の解説は、UF膜はMF膜よりも細かい物質を分けられるとしています。水道では、MF膜と同じく濁りや細菌、原虫を取る目的で使われ、神奈川県の浄水場もUF膜です。

NF膜(ナノろ過膜)

NF膜は、2nmより小さいものまで止める膜で、水に溶けている成分の一部を取り除けます。

東京都水道局は、NF膜とRO膜は水に溶けている成分も取り除けるとし、その前段には通常MF膜かUF膜を置くとしています。細かい膜を目詰まりから守るためです。

RO膜(逆浸透膜)

RO膜は、水に溶けた塩類まで止める最も細かい膜で、海水を真水にする淡水化などに使われます。

国立環境研究所の解説は、RO膜は主に塩類を分ける脱塩に使われ、塩類などは通さず水だけを通すことができるとしています。実際にどれだけ取れるかは膜の性能と運転の条件で変わります。強い圧力が要るため、水道の浄水場で使われる例は、MF膜やUF膜より限られます。

穴の大きさの数字は、資料で幅がある

膜の穴の大きさの数字は、膜の作り方や測り方で違い、資料ごとに幅があります。

たとえばMF膜について、国立環境研究所は一般に0.1〜1µmとし、吹田市水道部の資料は膜ろ過の穴を0.1〜2.0µm程度と書き、メーカーの解説には数十nm〜10µm程度とするものもあります。選ぶときは数字だけで比べず、取りたいものが止まるかを、原水の検査と膜の試験の結果で確かめます。

膜ろ過と砂ろ過の違い|浄水場の4つの方式

砂ろ過は砂の層の中で汚れを捕まえるのに対し、膜ろ過は膜の穴の大きさで確実に分ける点が大きく違います。

水道の浄水場は、主な処理の方法で「消毒のみ」「緩速ろ過」「急速ろ過」「膜ろ過」の4つに分けて集計されています。水道技術研究センターが2026年6月にまとめた2023年度(令和5年度)の水道統計の集計は次のとおりです。

方式処理のしかた浄水場数計画浄水量の割合
消毒のみろ過をせず、塩素消毒で浄水する5,03615.3%
緩速ろ過砂の層をゆっくり通し、砂の表面の生物の働きも使う1,2993.9%
急速ろ過凝集剤で汚れを固めて沈め、砂の層で速くこす2,16678.2%
膜ろ過膜の穴の大きさで分ける5912.5%

表2 浄水の方式と浄水場数(2023年度・上水道事業と水道用水供給事業。簡易水道を含まない)。水道技術研究センター「全国の浄水場数及び計画浄水量(その1)」(2026年6月26日)と学術誌「膜」の総説をもとに作成

急速ろ過は、凝集剤と砂の層でこす

急速ろ過は、薬品で細かい汚れを固めて沈めたあと、砂の層を速く通してこす方式で、日本の浄水量の約8割を占めます。

学術誌「膜」の総説は、急速ろ過は砂の層の深さ全体で粒子を捕まえる方式で、適切な維持管理ができていれば原虫も十分に取れる一方、原水の水質や運転の条件によっては取れる程度が下がるおそれがあるとしています。

膜は、穴の大きさで確実に分ける

膜ろ過は、穴の大きさで水と汚れを分けるため、膜が傷んでいなければ、原水の濁りが変わっても穴より大きいものを止めやすい方式です。

神奈川県の解説は、膜ろ過で濁度・細菌・原虫などをほぼ100%取り除けるとしています。同じ総説も、膜ろ過は砂ろ過より濁りを取る力が高く、原虫だけでなく大腸菌などの細菌も高い割合で取れるとしています。

膜でも取れないものと、前処理

膜の穴より小さい、水に溶けた有機物やにおい、鉄やマンガンの一部は、MF膜やUF膜だけでは取れません。

同じ総説は、膜ろ過は穴より小さい物質を取り除けないため、溶けた成分が多い原水では、凝集剤や活性炭などの処理を前後に組み合わせるとしています。東京都水道局も、落ち葉などが分解されてできるフミン質などは膜ろ過の施設では取りにくいとして、活性炭の設備を組み合わせています。

水道の膜ろ過|クリプトスポリジウム対策から広がった

水道で膜ろ過が広がったのは、塩素では死なない原虫クリプトスポリジウムを、確実に取り除く方法として使われたためです。

塩素消毒だけでは足りない水があるのですか

あります。クリプトスポリジウムは塩素への耐性が強く、ふつうの塩素消毒では消毒できません。原水に混ざるおそれがあるときは、ろ過で取り除くか、紫外線で感染力をなくす設備が要ります。

塩素が効かない原虫

クリプトスポリジウムは人や家畜の腸で増える原虫で、塩素では消毒できないため、ろ過などで取り除く必要があります。

東京都水道局によると、クリプトスポリジウムは直径4.5〜5μmの殻(オーシスト)に包まれていて、塩素の注入では消毒できません。東京都水道局の解説は、米国ミルウォーキー市で40万人以上が感染した事例を挙げています。国の資料も、日本で1996年(平成8年)に埼玉県越生町の上水道で起きた事故に触れています。

国の対策指針は、原水でレベルを分ける

国の「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」は、原水の種類と指標菌が出たことがあるかで、施設をレベル1〜4に分けています。

指標菌は、ふん便による汚れの目印になる大腸菌と嫌気性芽胞菌です。2019年5月に改正された指針は、レベルごとに次の施設と検査を求めています。

レベル原水と指標菌求められる施設原水の検査
4(汚染のおそれが高い)地表水で、指標菌が出たことがあるろ過設備(急速ろ過・緩速ろ過・膜ろ過など)でろ過水の濁度を0.1度以下に保てるもの、またはろ過と紫外線処理水質検査計画などに基づく適切な頻度
3(汚染のおそれがある)地表水以外で、指標菌が出たことがある上と同じろ過設備、または紫外線処理設備同上
2(当面、汚染の可能性が低い)地表水などが混ざらない被圧地下水以外で、指標菌が出たことがない指標菌の監視3か月に1回以上、指標菌
1(汚染の可能性が低い)地表水などが混ざらない被圧地下水だけで、指標菌が出たことがない指標菌の監視年1回の原水の検査、3年に1回の井戸内部の点検

表3 クリプトスポリジウム等対策指針のレベル。厚生労働省「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」(2019年5月29日の通知の別紙、国土交通省掲載)をもとに作成

井戸の地下水でも、浅い井戸や地表の水が混ざる井戸で指標菌が出れば、レベル3として膜ろ過などの設備が要ります。大腸菌の検査は大腸菌検査の解説で書いています。

対策が必要な施設の約7割は対応済み

国の調査では、2021年3月末現在、予防対策が必要な浄水施設8,042のうち5,777施設が対策を終えています。

厚生労働省の調査は、川や湖の水、伏流水、湧き水、地下水を水源とする浄水施設20,246のうち、クリプトスポリジウム等による汚染のおそれがある施設(予防対策が必要な施設)を8,042(約40%)としています。残る2,265施設は対策を検討中で、そのうち217は専用水道です。また、1996年の越生町の事故以降、水道を原因とする感染症の発生は報告されていないとしています。

膜ろ過の浄水場は、2023年度に591か所

膜ろ過を主な処理にする浄水場は、2003年度の36か所から、2023年度には591か所まで増えました。

水道技術研究センターが水道統計(上水道事業と水道用水供給事業。簡易水道は含まない)から集計した推移は次のとおりです。

年度膜ろ過の浄水場数膜ろ過装置の計画浄水量全体に占める割合
2003年度(平成15年度)369万6,174m³/日0.1%
2008年度(平成20年度)11477万8,695m³/日1.1%
2013年度(平成25年度)187107万714m³/日1.5%
2018年度(平成30年度)482164万88m³/日2.3%
2023年度(令和5年度)591183万4,680m³/日2.5%

表4 膜ろ過の浄水場数と計画浄水量の推移。水道技術研究センター「全国の浄水場数及び計画浄水量(その1)」(水道ホットニュース第998号、2026年6月26日)から作成

消毒だけの施設を含めた浄水場数の合計は2023年度で9,092で、ろ過のある浄水場(緩速・急速・膜)は4,056です。そのうち膜ろ過は591で約15%ですが、浄水量の割合は2.5%で、1か所あたりの規模が小さい浄水場が多いと読めます(当社の計算)。同センターは、2023年度に消毒のみ・緩速ろ過・急速ろ過の数がやや減ったのは、膜ろ過への更新が主な理由と考えられるとしています。

膜ろ過を使う浄水場の例

膜ろ過は、山あいの小さな浄水場から、1日数万m³をつくる都市の浄水場まで使われています。

東京都水道局は、1999年度(平成11年度)から多摩地区の山間部を中心に膜ろ過を入れ、2007年3月からは区部の砧浄水場と砧下浄水所で、それぞれ1日4万m³をつくっています。北海道の釧路新聞(2026年4月12日)によると、釧路市の新愛国浄水場は膜ろ過設備などの設置を終えて4月から試運転を始め、1日の処理能力は最大7万500m³です。福井県高浜町は、1日28〜100m³の小さな簡易水道などの6施設で膜ろ過を使い、すべてを24時間遠方監視しています。

膜ろ過装置に国が求めること|施設基準省令の要件

国の「水道施設の技術的基準を定める省令」は、膜ろ過を使う浄水施設に、監視・洗浄・前処理など8つの要件を定めています。

同じ省令の第5条は、地表水や地下水を原水とする浄水施設は、規模と原水の水質に応じて、消毒処理、緩速ろ過、急速ろ過、膜ろ過、活性炭処理などで必要な水質を得るものとしています。膜ろ過を使うときの要件は第4項で、まとめると次のとおりです。

#要件の中身
1膜の表面全体で、安定してろ過できる構造
2洗浄で膜に付いた汚れを除き、洗浄の排水を出せる構造
3膜の両側の水圧の差、膜でこした水の量と濁度を監視し、異常のときは運転を速やかに止められる設備
4膜モジュールは壊れたり変形したりしにくく、必要な通水性と耐圧性がある
5膜モジュールは、原水の浮遊物質を有効に取り除ける構造
6ろ過の速さは、原水の水質と最低水温、膜の種類、前処理などに応じて決める
7原水の水質に応じて、前処理の設備などを設ける
8前処理の設備は、膜モジュールの構造・材質・性能に合わせる

表5 膜ろ過を用いる浄水施設の要件。水道施設の技術的基準を定める省令 第5条第4項(e-Gov法令検索、2026年11月2日確認)を当社で要約

圧力の差・水量・濁りを見張り、異常なら止める

膜ろ過の設備は、膜が詰まったり破れたりしたことを、圧力の差・水量・濁度の変化で見つけて止められなければなりません。

膜の両側の圧力の差が大きくなれば目詰まり、こした水の濁度が上がれば膜の破れや漏れが疑われます。省令は、こうした変化を監視し、異常のときは関係する浄水施設の運転を速やかに止められる設備を求めています。

洗浄と、洗浄の排水

膜は使ううちに汚れが付くので、水や空気を逆向きに流す洗浄と、薬品での洗浄を組み合わせて性能を保ちます。

神奈川県の浄水場は、膜の外側に残った汚れを、1回/60分の間隔で、こした水を外側から内側へ流して洗い流しています。学術誌「膜」の総説が紹介したセラミック膜の例では、薬品での洗浄は年1回程度で、洗浄でろ過の性能がほぼ初めの状態に戻ったとしています。洗浄の回数は膜と原水の水質で変わり、省令は洗浄の排水を出せる構造も求めています。

膜ろ過のあとも、塩素消毒が要る

膜ろ過をしても、水道として配るには、消毒の設備で塩素を入れ、蛇口まで消毒の効果を保たなければなりません。

省令は、浄水施設に、消毒に必要な時間だけ水が薬剤に触れる構造や、注入設備の予備などを備えた消毒設備を求めています。水道法施行規則は、蛇口の水で遊離残留塩素を0.1mg/L以上に保つよう定めています。測り方は残留塩素の基準と測定方法で書いています。

水道用の膜モジュールの認定

水道で使う膜モジュールには、業界団体と研究機関による規格の認定や、仕様に合うことの登録の仕組みがあります。

一般社団法人膜分離技術振興協会は水道用膜モジュールの規格に合う製品を認定品の一覧に載せ、水道技術研究センターも仕様に合う膜モジュールの登録一覧を出しています。水道技術研究センターは膜ろ過の浄水施設の研修会も開いていて、2026年10月29〜30日の回は定員50名が埋まりました。

地下水を飲料水にする膜ろ過|処理の流れ

施設の井戸の地下水を飲料水にするときは、原水の検査で処理を決め、前処理・膜ろ過・消毒を順に通してから使います。

地下水を飲料水にする流れ(一般の例)井戸原水を検査前処理鉄・マンガン・におい膜ろ過濁り・細菌・原虫消毒塩素を入れる受水槽施設へ送る蛇口残留塩素・52項目監視と洗浄圧力の差・水量・濁度水道予備としてつなぐ例前処理と膜の種類は、原水の検査の結果で決まる。膜ろ過のあとも消毒は要る

図2 地下水を飲料水にする流れ(当社の整理・一般の例)。水道施設の技術的基準を定める省令、水道法施行規則、吹田市水道部「地下水等利用専用水道について」をもとに作成

原水の検査で、処理の組み合わせを決める

膜ろ過が要るか、どの膜を使うか、前処理に何を足すかは、くみ上げた原水の水質の検査結果で決まります。

省令は、地下水を原水とする浄水施設について、原水の水質とその変動に応じて処理を選ぶとしています。指標菌が出たことのある井戸は、対策指針でレベル3になり、膜ろ過などの設備が要ります。鉄やマンガン、硬度、においが高いかどうかで、前処理も変わります。飲料水にできる条件は地下水を飲料水にする条件で、処理の方式は井水の処理と設備で書いています。

前処理で、膜を目詰まりから守る

地下水に鉄やマンガンが多いと膜が早く詰まるので、膜の前に除鉄・除マンガンや活性炭のろ過を置きます。

省令も、原水の水質に応じて前処理の設備を設け、それを膜に合ったものにするよう求めています。学術誌「膜」の総説は、膜ろ過に前後の処理を組み合わせる対象として、溶けた有機物、におい、色、水源によっては溶けた鉄やマンガンを挙げています。

膜の洗浄と交換

膜は洗浄で性能を保ちながら使い、洗浄しても戻らなくなったら、膜モジュールを取り替えます。

取り替える時期は、膜の種類と原水の水質、運転のしかたで変わります。水道で使う膜の寿命を一律の年数で示した公的な資料は見当たらないため、導入を検討するときは、洗浄の頻度と交換の目安を、設備を運営する事業者に確かめてください。

消毒と水質の確認

膜ろ過と消毒を終えた水は、水質基準に合うことを検査で確かめてから飲料水として使います。

水道法の水質基準は、2026年4月から52項目です。施設の規模によって、毎日の検査や定期の検査が法令で求められます。項目と頻度は水質検査の項目と頻度と井戸水の水質検査で書いています。

地下水膜ろ過システムとは|施設の井戸水を飲料水にする仕組み

地下水膜ろ過システムは、病院や工場などの施設が敷地の井戸の地下水を膜ろ過などで浄水し、飲料水として使う設備の呼び名です。

法令の用語ではなく、設備を扱う会社などが使う呼び名です。中身は、井戸・前処理・膜ろ過・消毒・受水槽までの一式と、運転を見守る仕組みで、この記事の前の章で書いた浄水場の膜ろ過を、施設の規模に合わせて置くものです。

水道と地下水の、水源を2本にする

吹田市水道部の資料が示す形では、水道の契約を残したまま地下水を主な水源にし、地下水が使えないときは水道の水で補います。

吹田市水道部の資料(2023年3月)は、こうした施設を「地下水等利用専用水道」と呼び、専用水道に当たり、水道の水をバックアップ(地下水などが使えないときに使う水)として使う施設と説明しています。増えた理由として、膜処理などの技術の進歩で事業者が自ら飲用水をつくれるようになったこと、水道の水を買うより安くつくれる場合があること、災害時の自前の水源になること、井戸の掘削から運転までを行う業者が増えたことを挙げています。

専用水道になるかは、人数と水量で決まる

居住者100人超に水を供給するか、生活用の1日最大の水量が20m³を超えると、水道法の専用水道になります。

水道法第3条第6項は、自家用の水道のうち、100人を超える者にその居住に必要な水を供給するものと、1日最大給水量が政令の基準を超えるものを専用水道としています。

水道法施行令第1条と施行規則第1条は、20m³の水量を、飲用・炊事・入浴など人の生活の用途に使う水量で数えるとしています。工場の製造用水のような用途の水は、この水量に入りません。専用水道になると、設置の確認や水道技術管理者の配置、水質検査などの義務がかかります。どの規模で何が求められるかは専用水道の解説で書いています。

自治体の水道から見た影響

水道を多く使う施設が地下水に切り替えると、自治体の水道の料金収入が減るため、自治体によっては料金の仕組みを見直しています。

吹田市水道部の資料は、地下水等利用専用水道が水道事業に与える影響として、大口の使用者の給水量が減ることによる料金収入の減少を挙げています。水道を予備として残すときの料金や手続きは自治体ごとに違うため、検討の早い段階で、施設のある自治体の水道の窓口に確かめてください。

この施設の井戸水を、膜ろ過で飲料水にできるか

当社は、施設の水道の使用量と敷地の条件から、深井戸の地下水を浄水して施設の水源に加えられるかを判定します。導入できない施設には、その旨をはっきりお伝えします。

導入できるか診断する

ご相談の段階で費用は発生しません。

当社の地下水飲料化と膜ろ過

当社(株式会社豊)は、施設の深井戸の地下水を膜ろ過などで浄水して受水槽へ送る、地下水飲料化システムの代理店です。

このシステムは、上場企業である供給事業者が事業として運営していて、当社サイトの「事業者とシステム」のページのとおり、この供給事業者のシステムが2025年4月現在、全国66地点で稼働しています。当社は代理店として、導入のご相談から現地の確認、契約の調整、運用中のご連絡までの窓口を受け持ちます。仕組みの全体は地下水飲料化とはと事業者とシステムで書いています。

処理は、井戸の水質に合わせて組み合わせる

供給事業者のこのシステムでは、除鉄・除マンガン、活性炭、膜ろ過、軟水器を、井戸の水質と使い道に合わせて組み合わせます。

供給事業者の説明では、膜はMF膜・UF膜・RO膜を使い、塩素消毒では死なないクリプトスポリジウムなどの除去を膜ろ過が受け持ちます。水質と設備の稼働の状況は、供給事業者の体制として、遠方監視装置で24時間続けて監視されています。当社はこの仕組みを設計・運営する立場ではなく、代理店として窓口を受け持ちます。

検討するときに確かめること

膜ろ過で地下水を飲料水にできるかは、井戸の水質と水量、施設の水の使用量、敷地の条件で決まります。

まず、施設の毎月の水道の使用量と、敷地に井戸を掘る場所があるかを確かめます。次に、専用水道に当たるか、地下水の採取に自治体の規制がかからないかを確かめます。これらがそろえば、原水の検査結果をもとに、膜の種類と前処理の組み合わせを決めていきます。

水道の使用量から、地下水飲料化を置けるか確かめる

当社は、検針票の数字と敷地の条件から、全国66地点と同じ仕組みを施設に置けるかを判定します。当てはまらない施設には、その旨をはっきりお伝えします。

導入できるか診断する

ご相談の段階で費用は発生しません。

膜ろ過についてのよくある質問

膜ろ過は穴の大きさでこす処理で、飲料水にするには前処理と消毒、水質の確認を組み合わせます。

Q. 膜ろ過した水は、そのまま飲めますか

A. 水道として配るなら、膜ろ過だけでは足りません。国の施設基準省令は浄水施設に消毒の設備を求め、水道法施行規則は蛇口で遊離残留塩素を0.1mg/L以上に保つよう定めています。そのうえで、水質基準の52項目に合うことを検査で確かめます。

Q. 膜ろ過でウイルスは取れますか

A. 膜の種類で違います。ウイルスは細菌よりずっと小さく、東京都水道局はMF膜とUF膜の主な除去対象を濁りと細菌類としています。メーカーの解説には、MF膜ではウイルスの一部を取りきれないとするものがあります。水道では膜ろ過のあとに塩素消毒を組み合わせます。

Q. 家庭用浄水器のRO膜と、浄水場の膜ろ過は同じものですか

A. 同じ原理の膜ですが、使われる膜が違うことが多いです。RO膜は水に溶けた塩類まで止める最も細かい膜で、強い圧力が要ります。水道の浄水場では、濁りや細菌、原虫を取るMF膜やUF膜が多く使われています。

Q. 膜ろ過と紫外線処理は、どう違いますか

A. 膜ろ過はクリプトスポリジウムなどを取り除き、紫外線処理は取り除かずに感染力をなくします。国の対策指針は、地表水以外が原水のレベル3の施設では、ろ過設備の代わりに紫外線処理設備を置くことも認めています。ただし施設基準省令は、紫外線を当てる水の濁度や色度が処理に支障がない場合に限るとしていて、濁りのある原水ではろ過が要ります。

Q. 井戸が深い被圧地下水なら、膜ろ過は要りませんか

A. 指標菌が出ていなければ、国の対策指針のうえでは要らない場合があります。地表の水が混ざらない被圧地下水だけを原水にし、指標菌が出たことがない施設はレベル1で、求められるのは年1回の原水の検査と3年に1回の井戸内部の点検です。ただし、鉄やマンガン、硬度など、ほかの項目で処理が要ることがあり、指標菌が出ればレベルが変わります。

参考情報

国と自治体、研究機関の資料は2026年11月2日に確認しました。

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