給水設備とは、水道管から分かれた給水管から蛇口まで、建物に水を届ける管・水槽・ポンプなどの一式です。
給水設備の中身は給水方式で決まり、直結給水なら水槽もポンプも無い建物があり、受水槽式なら水槽とポンプを建物が持ちます。この記事では、施設の設備担当の方に向けて、5つの給水方式の違い、直結給水が何階まで使えるか、病院・ホテル・工場の方式の選び方、受水槽式から直結への切替え、方式ごとの点検・修理・管理の分担を、法令と国・水道局の資料で整理します。所有者が管理する範囲と点検の法律の全体は建物の水道設備の記事で扱っています。
この記事でわかること
- 給水方式は直結式2つと受水槽式3つ:国の給水装置標準計画は、直結直圧・直結増圧の直結式と、高置水槽・圧力水槽・ポンプ直送の受水槽式、両方を使う併用式に分けています。
- 直結給水が何階まで届くかは水道局で違う:直結直圧は2〜5階、直結増圧は福岡市・大分市・札幌市が10階程度までとし、名古屋市は直列多段で30階程度までとしています。
- 病院・ホテル・工場は受水槽式が求められる:川崎市・大分市は病院・ホテルを直結の対象から外し、福岡市は貯水槽の設置を求め、東京都は貯水槽水道が適当な施設としています。
- 切り替えると水槽の清掃と検査がなくなり、増圧ポンプの点検が加わる:東京都・横浜市・名古屋市・福岡市・川崎市は、増圧給水設備に1年に1回の定期点検を求めています。
- 井戸水は水道の給水装置に直接つなげない:水道法施行令6条1項6号で禁じられ、井戸水を使う施設は受水槽で混ぜる形になります。
給水設備とは|水道管から蛇口までの管・水槽・ポンプ
給水設備は、水道管(配水管)から分かれた水を蛇口まで届ける、建物側の管・水槽・ポンプ・弁の一式です。
法令は「給水設備」を1つの言葉で定義しておらず、水道法・建築基準法・建築物衛生法が、それぞれの範囲を受け持っています。
法律では「給水装置」と、受水槽から先の設備に分かれる
水道管に直接つながる部分が水道法の「給水装置」、受水槽から先が建物の給水設備として別の法律の範囲です。
水道法3条9項は、給水装置を「水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する給水用具」と定めています。受水槽でいったん水を受けると、その先は配水管に直結しないので給水装置から外れます。建築基準法施行令129条の2の4第2項と建築物衛生法施行令2条は、給水装置を除いた飲料水の配管設備を対象にしています。給水装置が基準に合わないと、水道事業者は給水を止められます(水道法16条)。
給水設備を構成する機器
給水設備の機器は、給水管・メーター・受水槽・ポンプ・高置水槽・圧力水槽・逆流防止器・蛇口です。
受水槽と高置水槽の構造は、建設省告示1597号が定めています。建物の中や屋上に置く水槽は外から天井・底・周りの壁を点検できるように設け、マンホールは直径60cm以上の円が入る大きさ(外から内部を点検しやすい小規模な水槽は除く)とし、有効容量2m³以上なら通気の装置を付けます。圧力水槽には有効な安全装置が要ります(建築基準法施行令129条の2の4第1項4号)。
給水方式で、建物にある設備の顔ぶれが変わる
給水方式が違えば、同じ規模の建物でも受水槽やポンプがあるかどうかが変わります。
直結直圧式の建物には受水槽もポンプも無く、直結増圧式には増圧ポンプ、受水槽式には受水槽とポンプ、高置水槽式にはさらに屋上の水槽があります。点検や更新の対象は方式で決まるので、まず自分の建物の方式を確かめることが出発点になります。
給水方式の種類|直結式2つと受水槽式3つ
給水方式は、水道管の水を直接届ける直結式2つと、受水槽にためてから送る受水槽式3つに分かれます。
国土交通省が掲載する給水装置標準計画は、給水方式を直結式・受水槽式・直結・受水槽併用式の3つとし、「給水高さ、所要水量、使用用途及び維持管理面を考慮し決定」するとしています。日本大百科全書も、水道直結・高置水槽・圧力水槽・加圧ポンプの4方式を挙げています。
国の給水装置標準計画、日本大百科全書「給排水設備」、東京都水道局の案内をもとに作成した模式図
| 方式 | 水の流れ | 受水槽 | ポンプ | 届く高さの例 | 断水・停電のとき |
|---|---|---|---|---|---|
| 直結直圧式 | 水道管→蛇口 | 無い | 無い | 2〜5階(水道局と水圧しだい) | 断水で止まる。停電では止まらない |
| 直結増圧式 | 水道管→増圧ポンプ→蛇口 | 無い | 増圧ポンプ | 10階程度(直列多段で30階程度の例) | 断水で止まる。停電では低い階だけ出る |
| 高置水槽式 | 水道管→受水槽→揚水ポンプ→屋上の水槽→蛇口 | ある | 揚水ポンプ | 水槽1つで10階程度 | 2つの水槽に残る分は出る |
| ポンプ直送式 | 水道管→受水槽→加圧給水ポンプ→蛇口 | ある | 加圧給水ポンプ | 小規模の中層建物に多い | 受水槽に残っていても、停電でポンプが止まると出ない |
| 圧力水槽式 | 水道管→受水槽→ポンプ→圧力水槽→蛇口 | ある | ポンプ | 小規模の中層建物に多い | 停電でポンプが止まると、圧力水槽の分しか出ない |
国の給水装置標準計画、東京都水道局・名古屋市上下水道局・川崎市上下水道局の案内をもとに作成。届く高さは水道局と配水管の水圧で変わる
直結直圧式:水道管の水圧だけで届ける
直結直圧式は、ポンプも水槽も使わず、配水管の水圧だけで蛇口まで水を届ける方式です。
設備が最も少なく、水槽の清掃も要りませんが、届く高さは配水管の水圧で決まります。国の標準計画は、配水管の最小動水圧を0.147〜0.196MPaとしてきたため、以前は2階建て程度までを直結、3階建て以上は受水槽としてきたと書いています。
直結増圧式:給水管の途中に増圧ポンプを入れる
直結増圧式は、給水管の途中に増圧ポンプを置き、足りない水圧を足して中高層階まで直結で送る方式です。
国の標準計画は、目的を「受水槽における衛生上の問題の解消、省エネルギーの推進、設置スペースの有効利用など」としています。
高置水槽式:受水槽から屋上へくみ上げ、重力で落とす
高置水槽式は、受水槽の水を揚水ポンプで屋上の高置水槽へ上げ、そこから重力で各階へ送る方式です。
国の標準計画は「受水槽式給水の最も一般的なもの」とし、1つの高置水槽で適当な水圧で届く高さを10階程度としています。高置水槽の清掃と撤去の判断は高架水槽の記事で詳しく書いています。
ポンプ直送式:受水槽からポンプで直接送る
ポンプ直送式は、受水槽の水を、使う量に合わせてポンプの台数や回転数を変えながら直接各階へ送る方式です。
国の標準計画は、小規模の中層建物に多い方式としています。屋上の水槽が要らない代わりに、ポンプが止まるとすぐに水が出なくなります。
圧力水槽式:圧縮した空気の力で送る
圧力水槽式は、受水槽の水をポンプで圧力水槽へ送り、水槽の上部の圧縮空気の圧力で各階へ送る方式です。
圧力水槽は内部が常に加圧されるので、建築基準法施行令が安全装置を求め、告示1597号はオーバーフロー管の規定から外しています。消防設備の「加圧送水装置」や消火用の圧力水槽とは別の設備です。
「加圧給水」と「増圧給水」は、受水槽の後か前かで見分ける
加圧給水は国の標準計画や辞書では受水槽の後のポンプ直送を指し、増圧給水は水道管に直結するポンプを指します。
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインも、揚水ポンプ・加圧給水ポンプ・直結増圧ポンプを分けて書いています。ただし名古屋市と札幌市は直結増圧式を「直結加圧方式」と呼び、増圧ポンプの規格名も「水道用直結加圧形ポンプユニット」です。言葉だけでは決まらないので、ポンプが受水槽の後にあるか、水道管に直接つながっているかで見分けます。ポンプの種類の違いは給水ポンプの記事で扱っています。
直結・受水槽併用式:1つの建物で両方を使う
併用式は、低い階や一部の用途を直結にし、残りを受水槽式にする方式です。
大阪市水道局は、共同住宅の1階の店舗や、受水槽式の建物の直圧の部分に置く停電時の非常用給水栓などで、1つの建物で受水槽方式と直結方式を併用することを認めています。
直結給水と受水槽式の違い|衛生・断水・電気・スペース
直結給水は水槽の管理が要らず省エネになり、受水槽式は断水しても水槽に残った水を使えます。
違いは、水槽の衛生管理、断水と停電のときに出る水、電気代と設置スペースの3つに分けて見ると整理できます。
| 比べる点 | 直結給水(直圧・増圧) | 受水槽式(高置水槽・ポンプ直送・圧力水槽) |
|---|---|---|
| 水槽の清掃と検査 | 要らない | 10m³超は年1回の清掃と法定検査(水道法) |
| 水の鮮度 | 水道管の水がそのまま届く | 水槽にたまる間に残留塩素が減ることがある |
| 断水のとき | 止まる | 水槽に残る分は使える(横浜市は通常の使用で半日分) |
| 停電のとき | 直圧は出る。増圧は低い階だけ(川崎市は概ね3階まで) | 高置水槽は残る分が出る。ポンプ直送と圧力水槽は止まる |
| 電気 | 直圧は不要。増圧はポンプの分 | 揚水・加圧のポンプの分 |
| 設置スペース | 水槽の場所が要らない | 受水槽と(高置水槽式なら)屋上の水槽の場所 |
| 引込管の口径 | 同時に使う量に合わせて太くなる | 直結に比べて細くて済む(福岡市) |
国の給水装置標準計画、横浜市水道局・川崎市上下水道局・福岡市水道局の案内、水道法施行令2条をもとに作成
水槽の衛生管理が要るか
受水槽式の建物は水槽の清掃と点検が要り、直結給水の建物はそれが要りません。
受水槽の有効容量の合計が10m³を超えると簡易専用水道になり、水道法で年1回の清掃と登録検査機関の検査を受けます。令和4年度の集計(2024年4月に水道行政が国土交通省へ移ったあと、国土交通省が公開)では、簡易専用水道206,856施設のうち検査を受けたのは161,356施設で、受検率は78.0%でした。検査を受けた施設の22.4%が何らかの指摘を受け、指摘を受けた施設のうちマンホールの状態が20.8%、受水槽本体の状態が14.5%でした。10m³以下の小規模貯水槽水道は788,542施設で、受検率は3.5%です。国の標準計画が直結給水を進める理由に、受水槽の管理が不十分な場合の衛生問題を挙げているのはこのためです。
断水と停電のときに出る水
断水には受水槽式が強く、停電には直結直圧式が強いという、逆の性質があります。
横浜市水道局は、受水槽の容量を1日の使用量の10分の4〜6程度、高置水槽を10分の1程度とし、断水時に確保できるのは「通常の使用では半日分」と案内しています。一方、川崎市上下水道局は、直結増圧の建物は停電時に概ね3階までは配水管の水圧で水が使えるが、4階以上は断水するおそれがあるとしています。
電気代と設置スペース
直結給水にすると、揚水や加圧のポンプの電気と、受水槽を置く場所を減らせます。
豊中市上下水道局は、5階建て20戸の受水槽式(出力1.5kWのポンプが約15時間動く想定)を直結直圧式に切り替えると、年間の電気が約8,150kWh、CO2が約3,400kg減ると試算しています。
直結給水は何階までか|水道局ごとに上限が違う
直結給水が何階まで使えるかは全国一律の基準ではなく、水道局ごとの基準と配水管の水圧で決まります。
下の表は、各水道局の案内に書かれた上限の例です。同じ市の中でも配水管の水圧で使えない場所があるので、所在地の水道局で確かめる必要があります。
| 水道局 | 直結直圧 | 直結増圧 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 3階まで。水圧の高い地域は特例で4階以上も | 標準型は階高の制限なし(水理計算の範囲) | 4階以上に蛇口を置くなら増圧か貯水槽水道 |
| 横浜市 | 3階建て以上は事前の水圧調査(0.25MPa以上の区域か) | 引込管75mm以下・同時使用水量1時間40m³まで | 増圧ポンプの工事費と維持管理費は設置者 |
| 名古屋市 | 原則2階、要綱により5階まで | 直結加圧で10階程度、直列多段で30階程度(2014年4月から) | ポンプは呼び径75A以下・吐出圧力0.75MPa以下 |
| 川崎市 | 原則2階、条件で3階直結・特例直結 | 配水管の最小動水圧0.20MPa以上 | 特例直結直圧は0.30MPa以上 |
| 福岡市 | 3階建ての共同住宅など | 概ね10階程度(業務用水の要らない建物) | 病院・ホテル・飲食店・工場は貯水槽 |
| 大分市 | 条件を満たせば5階建てまで | 10階建て程度まで | ホテル・病院は対象外 |
| 札幌市 | 主に5階程度まで | 主に10階程度まで | 直結加圧装置は1年以内ごとに1回点検 |
| さいたま市 | 3階まで | 15階程度まで | ― |
各水道局の給水方式の案内と施工基準(2026年10月26日に確認)をもとに作成。上限は配水管の水圧と建物の規模で変わる
直結直圧は2〜5階で、水圧が条件になる
直結直圧で届く高さは、水道局と配水管の水圧によって2階から5階までの幅があります。
川崎市上下水道局は、2階までの直結直圧に0.15MPa以上、専用住宅以外の3階直結直圧に0.20MPa以上、特例直結直圧に0.30MPa以上の配水管の最小動水圧を求めています。横浜市水道局は、3階建て以上で直結直圧にするなら、事前に給水水圧調査依頼書を出すよう求めています。
直結増圧は10階程度、直列多段で30階程度
直結増圧の上限は福岡市・大分市・札幌市が10階程度とし、名古屋市はポンプを直列に並べて30階程度まで広げています。
名古屋市上下水道局は、2014年4月1日から、ポンプを直列に複数置く直列多段方式で30階程度までの給水を可能にしました。大阪市水道局も、建物の高さなどで受水槽方式しか選べなかった建物に向けて条件を緩め、2018年7月2日の工事申込分から直結増圧の直列多段式を採り入れています。
口径と水量の上限、事前の協議
直結増圧には、引込管の口径と同時に使う水の量の上限を設ける水道局があり、横浜市は上限を数字で示しています。
横浜市水道局は、引込管口径75mm以下かつ計画同時使用水量が1時間40m³(1分666L)までの規模に限るとしています。一度に多くの水を使う施設が直結にすると、周りの配水管の水圧を下げるおそれがあるためです。
施設の給水方式の選び方|病院・ホテル・工場は受水槽式
病院・ホテル・水を多く使う工場は、国の標準計画が受水槽式とする場合に当たり、水道局の基準でも受水槽式が求められます。
国の標準計画は、直結式について「災害、事故等による水道の断減水時にも給水の確保が必要な建物などには必ずしも有利でない」とし、建物の用途を踏まえて検討するよう求めています。標準計画は水道事業者が給水の基準を作るときの標準で、施設に何が求められるかは、所在地の水道局の基準で決まります。
国の給水装置標準計画、東京都水道局・川崎市上下水道局・福岡市水道局・横浜市水道局の案内をもとに作成。判断は所在地の水道局との協議で決まる
国の標準計画が受水槽式とする4つの場合
国の標準計画は、断水時の給水、大量の使用、一定の水圧、逆流の汚染のおそれの4つの場合を受水槽式としています。
4つは、①病院などで断減水時にも給水の確保が必要な場合、②一時に多量の水を使うか使用量の変動が大きく配水管の水圧を下げるおそれがある場合、③常時一定の水量と水圧が要る場合、④有毒薬品を使う工場など逆流で配水管の水を汚すおそれがある場合です。
水道局が直結の対象から外す施設
川崎市と大分市は病院・ホテルを直結の対象から外し、東京都は病院・ホテルを貯水槽水道が適当な施設としています。
東京都水道局は、毒物・劇物・薬品などの危険な化学物質を扱う工場や事業所(例:クリーニング、めっき、食品加工)を直結が認められない施設とし、ホテル・飲食店・病院などは断水時の影響が大きいので貯水槽水道が適当な施設としています。川崎市上下水道局は、病院・ホテル、公衆浴場・大規模マンション、製造工場、薬品工場などを対象外の4類型に挙げ、大分市はホテル・病院などを対象外としています。福岡市は給水条例で、給水が制限されても一定の業務用水が要る場所に貯水槽の設置を求めています。
受水槽の大きさの決め方
受水槽の容量は、国の標準計画で1日に使う水の量の4割から6割程度を目安に決めます。
国の標準計画は、受水槽の容量を「計画一日使用水量の4/10~6/10程度が標準」としています。断水に備えて大きくすると、水が入れ替わるまでの時間が長くなり、残留塩素が減りやすくなります。厚生労働省は、災害拠点病院の要件で、適切な容量の受水槽の保有や停電時にも使える井戸設備などで水を確保するよう求めています。
直結と受水槽の併用という選び方
断水に備える用途だけを受水槽式に残し、ほかの用途を直結給水にする併用式も選べます。
大阪市水道局は、受水槽方式の建物の直圧の部分に停電時の非常用給水栓を置くことを、併用を認める場合に挙げています。川崎市上下水道局は、増圧給水設備を置く建物に、故障と停電の備えとして建物の外の直結給水栓を求めています。
受水槽式から直結給水への切替え|条件・手続き・費用
受水槽式から直結給水には、水圧・階数・口径の条件を満たし、水道局の承認を得れば切り替えられます。
東京都の報告書(2023年)によると、都内の給水件数に占める直結給水の割合は令和4年度末で77%、貯水槽水道からの切替えは令和4年度の1年間で約1,000件で、近年の新築建物の9割程度が直結です。
切り替えられるかは水圧・階数・口径で決まる
切替えは、建物の階数と同時に使う水の量が、その水道局の直結の上限に収まるかで決まります。
福岡市水道局は、2005年3月31日までに建てられた3階建ての貯水槽式の建物は、再協議で直結直圧に切り替えられる場合があるとしています。病院のように受水槽式が求められる施設は、条件を満たしても切替えの対象になりません。
手続きは指定給水装置工事事業者を通す
切替えの相談と申込みは、水道局の指定を受けた給水装置工事事業者を通して行います。
東京都水道局は、工事費と工事内容は建物ごとに違うので指定給水装置工事事業者に相談し、なるべく複数社から見積書を取るよう勧めています。受水槽・高置水槽の廃止や直結への切替えのときも、指定給水装置工事事業者を通じて水道局へ届け出ます。
費用と助成
切替えの費用は建物で変わり、道路部分の給水管を太くする工事を水道局が負担・助成する例があります。
東京都水道局は、2012年12月1日の申請受付分から、道路部分からメーターまでの給水管を太くする増径工事を局で施工しています。ただし病院など貯水槽水道が適した建物と、増改築に合わせる建物は対象外です。豊中市上下水道局は、道路部の給水管増径工事費を1件50万円を上限に助成しています。川崎市上下水道局は、給水管の新設と撤去、受水槽の撤去、増圧給水設備の設置などの初期費用がかかるとしています。
なくなる点検と、残る点検
直結増圧に切り替えると水槽の清掃と検査がなくなり、水道局が求める増圧ポンプの定期点検が加わります。
東京都水道局は、増圧給水設備を置く場合は1年以内に1回の定期点検が必要としています。横浜市水道局は、専門的技術を持った製造業者による年1回の定期点検を求め、名古屋市上下水道局は、減圧式逆流防止器を点検したら局へ報告するよう求めています。
失うのは、貯めておける水
受水槽をなくすと、断水したときに建物の中に貯めておける水も一緒になくなります。
国の標準計画が直結式を断水時に「必ずしも有利でない」とするのはこのためです。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインは、性能を上げる工事の例に直結増圧への変更を挙げていますが、病院や工場は、水槽を残す意味を先に確かめてから判断することになります。
給水設備の点検・修理・管理|方式ごとに誰が何をするか
給水設備の点検と修理は、水道局の持ち物であるメーターを除き、建物の所有者・設置者が手配します。
給水設備の全体に一律にかかる法定点検は無く、受水槽の容量、建物の用途、水道局の規程によって、どの設備に何の義務がかかるかが変わります。
| 設備 | 決まりの出どころ | 頻度 | 主な担い手 |
|---|---|---|---|
| 受水槽(有効容量10m³超) | 水道法(簡易専用水道) | 清掃と登録検査機関の検査を1年以内ごとに1回 | 設置者が清掃業者と検査機関に頼む |
| 受水槽(10m³以下) | 自治体の条例・要綱 | 自治体による | 設置者 |
| 延べ3,000m²以上の事務所・店舗などの給水設備 | 建築物衛生法(特定建築物) | 貯水槽の清掃は1年以内ごとに1回など | 建築物環境衛生管理技術者の監督の下で |
| 増圧ポンプ・減圧式逆流防止器 | 水道局の規程・要綱 | 1年以内ごとに1回(東京都・横浜市・名古屋市・福岡市・川崎市) | 製造業者など。名古屋市は逆流防止器の点検を局へ報告 |
| 揚水ポンプ・加圧給水ポンプ・給水管 | 一律の法定点検は無い(建築基準法12条の定期検査などの対象になる建物はある) | 建物の管理計画による | 設置者が保守業者に頼む |
水道法34条の2、建築物衛生法、東京都水道局・横浜市水道局・名古屋市上下水道局・福岡市水道局・川崎市上下水道局の案内をもとに作成
給水設備の点検:法令と水道局の規程
給水設備の点検の義務は、水槽は水道法と条例、増圧ポンプは水道局の規程から来ます。
受水槽の清掃と法定検査の中身は簡易専用水道の記事、ポンプの点検項目と法定点検の有無は給水ポンプの記事、建物ごとにどの法律がかかるかは建物の水道設備の記事で詳しく書いています。
給水設備の修理:境目と頼む先
給水設備の修理は、給水装置なら指定給水装置工事事業者、受水槽から先は設備の保守業者やメーカーへ頼みます。
水道法16条の2は、水道事業者が、指定給水装置工事事業者の施工した給水装置であることを給水の条件にできると定めています。増圧ポンプは製造業者の点検を求める水道局があります。給水管のどこまでを水道局が直すかは水道事業者ごとに違い、給水管の記事で整理しています。
給水設備の管理:更新の目安
給水設備の更新の目安は、国土交通省のガイドラインで給水ポンプが14〜18年、貯水槽が26〜30年目です。
| 設備 | 補修の目安 | 取替の目安 |
|---|---|---|
| 給水ポンプ(揚水・加圧給水・直結増圧・弁類) | 5〜8年(分解整備) | 14〜18年 |
| 貯水槽(受水槽・高置水槽) | 12〜16年 | 26〜30年目 |
| 給水管(屋内共用) | 19〜23年(更生) | 30〜40年 |
国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月)の記載例をもとに作成。マンション向けの目安の一例で、法定の耐用年数ではない
実際の更新時期は、点検の記録と部品の供給の状況で決めます。
管理の不備で起きたこと
受水槽への汚水の混入と、地震での受水槽・給水管の破損が、施設の水を止めています。
札幌市保健所によると、2024年12月29日、市内の雑居ビルで地下に埋めた受水槽の水が原因とみられるノロウイルスの食中毒が起き、汚水槽か雑排水槽からあふれた汚水が受水槽の上部の隙間やひび割れから入ったと推定されました。市はビルの所有者に水道法36条3項に基づく改善を指示しています。高知県が国に出した政策提言書は、能登半島地震で病院内の受水槽や給水管が壊れ、医療の継続が難しくなったと書いています。
井戸水を給水設備に加えるとき|受水槽で混ぜる
井戸水を施設の給水設備に加えるときは、水道の給水装置に直接つながず、受水槽で混ぜる形になります。
井戸水を足すと、断水しても敷地の中に水源が残ります。その代わり、配管のつなぎ方と、水道法の区分が変わる点に注意が要ります。
井戸水の配管は、水道の給水装置に直接つながない
水道法施行令6条1項6号は、給水装置を給水装置以外の水管や設備に直接つなぐことを禁じています。
国の給水装置標準計画は、これをクロスコネクション(誤接合)と呼び、つながれやすい配管の筆頭に井戸水の配管を挙げ、給水管と井水管を直結して切り替えて使う配管を「接続してはならない配管」の例にしています。受水槽から先の飲料水の配管も、建築基準法施行令129条の2の4第2項でほかの配管と直接つなぐことを禁じられています。
受水槽で混ぜるときの届出と区分
水道水と井戸水を受水槽で混ぜると水道法の区分が変わり、名古屋市のように書類の提出を求める水道局もあります。
名古屋市上下水道局は、受水タンクで水道水と地下水などを混ぜることを「他水混合」と呼び、他水混合施設計画確認書の提出を求めています。水道水だけを水源とする条件から外れるので、受水槽が10m³を超えていても簡易専用水道にはならず、規模によっては専用水道になります。手続きと検査は専用水道の記事、井戸水の設備の全体は井水の記事で扱っています。
当社の仕組みは、受水槽に入れる
当社が扱う地下水飲料化システムは、浄水した地下水を受水槽へ入れ、施設の給水系統へ送る仕組みです。
当社のシステムのページのとおり、深井戸の地下水を井戸の水質に合わせた設備で浄水し、水質基準を満たした水だけを受水槽へ送ります。受水槽から先は施設の今の給水方式をそのまま使うので、高置水槽式でもポンプ直送式でも給水の流れは変わりません。直結給水だけの建物は受水槽が無いので、当社は水道の使用量と受水槽の状況を伺ったうえで、導入できるかを判定します。地下水そのものの性質は地下水のページで紹介しています。
給水設備についてのよくある質問
給水方式は受水槽・屋上の水槽・ポンプの位置で見分けられ、停電で水が止まるかどうかも方式で決まります。
Q. 自分の建物の給水方式は、どこで確かめられますか
A. 受水槽と屋上の高置水槽があれば高置水槽式、受水槽はあるが屋上に水槽が無くポンプ室があればポンプ直送式か圧力水槽式、受水槽が無くメーターの近くにポンプユニットがあれば直結増圧式、どちらも無ければ直結直圧式です。図面や管理会社の記録で分からなければ、所在地の水道局に給水装置の記録を問い合わせます。
Q. 停電すると、給水方式ごとにどうなりますか
A. 直結直圧式は配水管の水圧で届くので、停電では止まりません。直結増圧式は、川崎市の案内では概ね3階までは出て4階以上は断水するおそれがあります。高置水槽式は屋上の水槽に残る分だけ出て、ポンプ直送式と圧力水槽式は受水槽に水があってもポンプが止まれば出ません。
Q. 「加圧給水ポンプ」と「増圧ポンプ」は同じものですか
A. 国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインは、受水槽の後で送る加圧給水ポンプと、水道管に直結する直結増圧ポンプを分けて書いています。ただし名古屋市・札幌市は直結増圧を「直結加圧」と呼ぶので、名前ではなく、ポンプが受水槽の後にあるか水道管に直接つながるかで見分けます。直結増圧のポンプには日本水道協会の規格品(JWWA B130)が求められます。
Q. 受水槽をやめて直結にすると、水道料金は変わりますか
A. 東京都水道局は、切替えで給水管を太くする工事をしてメーターの口径が大きくなると、水道料金が増える場合があると案内しています。一方で、受水槽の清掃と法定検査の費用と、揚水ポンプの電気代は要らなくなります。
Q. 増圧ポンプの点検は、誰に頼みますか
A. 横浜市水道局は、専門的技術を持った製造業者による年1回の定期点検を求めています。名古屋市上下水道局は、増圧ポンプと減圧式逆流防止器を1年以内ごとに1回点検し、逆流防止器の点検をしたら局へ報告するよう求めています。点検の費用と維持管理の費用は、横浜市では設置者の負担です。
参考情報
この記事は、次の法令と国・水道局の資料をもとに作成しました(2026年10月26日に確認)。
- e-Gov法令検索「水道法」
- e-Gov法令検索「水道法施行令」
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」
- e-Gov法令検索「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令」
- 国土交通省「建設省告示第1597号」
- 国土交通省 給水装置標準計画・施工方法
- 国土交通省「貯水槽水道及び飲用井戸等に係る衛生管理状況について」(令和4年度)
- 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月)
- 日本大百科全書「給排水設備」(コトバンク)
- 東京都水道局「給水方式」
- 東京都水道局「直結給水の普及」
- 東京都水道局「直結給水への切替え」
- 東京都水道局「貯水槽水道」
- 東京都の報告書(直結給水率・切替え件数)
- 横浜市水道局「給水のしくみ」
- 名古屋市上下水道局「給水設備」
- 名古屋市上下水道局 給水装置工事施行基準
- 川崎市上下水道局「給水方式」
- 福岡市水道局「給水方式の種類と特徴」
- 福岡市水道局「直結増圧式給水」
- 福岡市水道局「直結直圧式給水」
- 大阪市水道局 直結増圧直列多段式の採用
- 大阪市水道局 受水槽方式と直結方式の併用
- 大分市上下水道局「直結給水方式について」
- 札幌市水道局「直結給水方式」
- さいたま市水道局「家庭の水道のしくみ」
- 豊中市上下水道局 直結給水への切替え助成
- 札幌市保健所「ビルの受水槽の汚染による食中毒」
- 高知県 政策提言書(2024年)
- 厚生労働省 災害拠点病院の給水設備
- 株式会社豊「システム」
