給水ポンプとは、受水槽や水道管の水に圧力をかけて、建物の上の階や離れた蛇口まで送る機械です。
給水ポンプが止まると、水道管から水が来ていても、建物の中では上の階から水が出なくなります。点検の義務は建物と給水方式によって決まり、すべての建物に一律にかかる法定点検はありません。交換の目安は、業界団体の資料で小形のユニット全体が10年です。この記事では、施設の設備担当の方に向けて、止まったときに起きること、法定点検の有無、点検と交換の目安、止めないための備えを、法令と公的な資料で整理します。
この記事でわかること
- 止まったときに起きることは給水方式で違う:高置水槽は槽の水が残る間は出ますが、ポンプ直送と直結増圧は上の階からすぐに出なくなります。
- 法定点検は一律ではない:義務になるのは4つの場合に限られます。
- 年数は3種類ある:税・国のマンション向けの目安・業界団体の年数は別物です。
- ポンプの備えと水源の備えは別の層:井戸を足しても、建物の中で水を送るポンプと電源は別に備える必要があります。
給水ポンプとは|水に圧力をかけて、建物の上の階や末端まで送る機械
給水ポンプは、水道管の水圧だけでは届かない高さや距離まで、水を押し上げて送るための機械です。
東京都水道局は、水道管(配水管)の水圧で直接届かない建物の4階以上に蛇口を置く場合は「増圧直結給水方式」か「貯水槽水道方式」を選ぶよう案内しています。どちらの方式でも、建物の中で水を送っているのは給水ポンプです。
揚水ポンプ・加圧給水ポンプ・増圧ポンプの違い
揚水ポンプ、加圧給水ポンプ、増圧ポンプは、どれも給水ポンプの一種で、水をどこからどこへ送るかで呼び名が変わります。
JIS B 0131:2017(ターボポンプ用語)は、揚水ポンプを「建築物の衛生設備などで一般清水の供給用として使用されるポンプ」と定義しています。 同じ規格は、自動給水ポンプを、建築物の飲料水などの加圧給水に使い、圧力タンクや制御盤などを附属したポンプユニットと定義しています。受水槽の水を各階へ直接押し出す加圧給水ポンプは、この自動給水ポンプに当たります。
増圧ポンプは、同じ規格で「送水管路の途中に取り付け,主として圧力を増大させることを目的とした加圧ポンプ」とされています。建物では、水道管と建物の給水管の間に付けて使います。
1台ではなく、ユニットで動いている
建物の給水ポンプは、ポンプ本体、圧力タンク、制御盤、配管の弁類がひとまとまりになったユニットとして動いています。
JIS B 0131は、圧力タンクを、空気だまりで圧力を保ち、ポンプが止まっている間もタンクから給水できるようにしたもの、と定義しています。 2台以上のユニットでは、一定時間ごとにポンプを切り替える「交互運転」や、2台の水を1本の管に合流させる「並列運転」が使われます(どちらもJIS B 0131の用語)。インバータで回転速度を変え、使う水の量に合わせるものもあります。
給水方式ごとのポンプの役割|水が貯まっているかどうかが分かれ目
給水ポンプの役割は給水方式で違い、建物の中に水が貯まっているかどうかで、ポンプが止まったときの影響が変わります。
| 給水方式 | 使うポンプ | 建物に水が貯まるか | ポンプが止まったとき | 公的な資料での扱い |
|---|---|---|---|---|
| 高置水槽方式 | 揚水ポンプ(受水槽→屋上の高置水槽) | 受水槽と高置水槽 | 高置水槽の水がある間は出る。なくなると断水 | 高置水槽に水がある間は断水しない(大阪市) |
| ポンプ直送方式 | 加圧給水ポンプ(受水槽→各階) | 受水槽 | 上の階へ送れなくなる | 受水槽手前の検水栓を非常用に使える場合がある(大阪市) |
| 直結増圧方式 | 増圧ポンプ(水道管→各階) | 貯まらない | 水道管の水圧で届く低い階だけ出る | 貯留機能がないため断水することがある(東京都) |
東京都水道局の給水方式の案内、大阪市水道局の停電時の案内、埼玉県上里町・岡山県玉野市の受水槽の資料をもとに作成
高置水槽方式:揚水ポンプで屋上へくみ上げる
高置水槽方式は、受水槽の水を揚水ポンプで屋上の高置水槽へくみ上げ、そこから重力で各階へ流す方式です。
東京都水道局は、貯水槽水道方式を、受水槽に貯めた水をポンプで高置水槽へ送り、自然流下で給水する方式として説明しています。大阪市水道局の案内のとおり、ポンプが止まっても高置水槽に水がある間は断水しないので、時間の余裕があります。
ポンプ直送方式:受水槽からそのまま押し出す
ポンプ直送方式は、受水槽の水を加圧給水ポンプで直接各階へ押し出す方式で、高置水槽を持ちません。
埼玉県上里町の資料は、ポンプ直送式を「受水槽からポンプにより圧送して給水する方式」と説明しています。受水槽には水が残っていても、ポンプが止まれば上の階へは送れません。
直結増圧方式:水道管に増圧ポンプを直接つなぐ
直結増圧方式は、水道管に増圧ポンプを直接つなぎ、受水槽を通さずに各階へ送る方式です。
東京都水道局は、直結方式について「事故や災害時等に、貯留機能がないため断水することがあります」と案内しています。建物の中に水を貯めないので、水道管か増圧ポンプのどちらが止まっても余裕はありません。
東京都・川崎市・秋田市は、病院を直結増圧の対象から外している
東京都・川崎市・秋田市の水道事業者は、断水の影響が大きい病院などを、直結増圧方式や直結への切替えの対象から外しています。
東京都水道局は、直結給水への切替えの支援の対象外に「断水した場合に影響が大きい病院などの貯水槽水道が適している建物」を挙げています。川崎市上下水道局は、直結増圧給水は「病院等の緊急時に水の使用が必要な建築物には適用できません」としています。秋田市上下水道局も、病院やホテルなど断水の影響が大きい施設や、一度に大量の水を使う施設は直結式にできないことがある、と案内しています。
3つの案内は、病院を「貯水槽水道が適している」「直結増圧を適用できない」「直結式にできないことがある」建物として扱っています。受水槽の方式の病院では、受水槽から先の給水ポンプが、建物の水を止めない要になります。病院の水の備えは病院の水源確保のページにまとめています。
給水ポンプが止まると、施設で何が起きるか
給水ポンプが止まると、水道管が断水していなくても、建物の中では上の階の蛇口から水が出なくなります。
東京都水道局、大阪市水道局の案内をもとに作成。止まってから断水までの時間に一律の数字はない
例外は、高置水槽に水が残っている間と、水道管の水圧で届く低い階です。
水道管が生きていても、建物の中は断水する
建物の中の断水は、水道管が止まっていなくても、給水ポンプが止まるだけで起きます。
大阪市水道局は、ビルやマンションでは「水道管自体は断水していなくても、高層階まで水を送るためのポンプが停電により停止した場合、建物内で断水が起こります」と案内しています。京都市上下水道局も、水を送っているポンプが停電や故障によって止まり、断水になることがある、としています。熊本市、門真市、札幌市の水道事業者も同じ趣旨です。
東京都水道局は、配水管から分かれた先の設備は所有者が維持管理するものだとしています。ポンプが止まったときに水道局へ連絡しても、建物の中の断水は直りません。
方式によって、止まってから水が出なくなるまでが違う
ポンプが止まってから水が出なくなるまでの時間は、建物の中に水が貯まっているかどうかで決まります。
高置水槽方式では、大阪市水道局の案内のとおり、停電しても高置水槽に水がある間は断水しません。ポンプ直送方式と直結増圧方式は、ポンプが止まると上の階からすぐに水が出なくなります。
止まっても使える蛇口もあります。東京都水道局は、増圧給水設備が停電や故障で止まっても、配水管の水圧が通常であれば1階などの給水栓は使えるとしています。大阪市水道局は、直結増圧方式では配水管が健全なら2、3階程度までの共用の水栓を、受水槽方式では受水槽の手前に検水栓があればそれを、非常用給水栓として使えると案内しています。
停電と浸水:ポンプそのものは壊れていなくても止まる
給水ポンプは電気で動くので、ポンプ本体が壊れていなくても、停電や電気設備の浸水で止まります。
2026年8月の千葉県の豪雨では、マンションの地下の電気設備が浸水で故障し、少なくとも12棟で停電と断水が続きました。電力会社の供給に問題はなく、断水が1週間以上続いた例や、復旧まで1カ月以上の見込みの例も報じられています。県内の総合病院も、地下の電気設備の浸水で停電が続き休診しました。
国土交通省と経済産業省の「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」(2020年6月)も、地下の電気設備の浸水被害がきっかけで作られました。
病院で起きたこと:水槽が壊れると水道が戻っても使えない
給水ポンプの手前にある受水槽や高置水槽が壊れると、水道が戻っても建物の中では水を使えません。
2024年1月の能登半島地震では、石川県の公立病院で、断水に加えて貯水槽と高架水槽が大きく損傷しました。透析患者105人を12施設へ移し、手術や内視鏡検査も一時止め、透析の再開は2月7日でした。原因は水槽の損傷で、給水ポンプの停止ではありませんが、水を貯めて送る設備のどこか1か所が止まれば診療が止まる点は同じです。
令和6年版厚生労働白書は、能登半島地震で医療施設26か所が停電・断水などにより入院診療に制限が生じたと記録しています。断水が続く期間の目安は断水はいつまで続くかの記事に、施設の水源の備えは災害時の水源確保(BCP)のページにまとめています。
故障のサインと、止まったときに最初に確かめること
給水ポンプの故障は、異音・振動・水漏れ・圧力の低下と、ポンプの動き方の変化に先に出ます。
異音・振動・水漏れ・圧力の低下
いつもと違う音や振動、軸まわりの水漏れ、蛇口の水の勢いの低下は、給水ポンプの故障のサインです。
建築基準法の定期検査の基準(平成20年国土交通省告示第285号)は、給水ポンプの運転の状況を水圧計で測り、作動を確かめるとしており、「運転中に異常音、異常振動等があること又は定格水圧がないこと」を是正が必要な状態としています。
日本産業機械工業会の「汎用ポンプの保守管理について」(2023年1月改訂)は、部品を取り替える兆候として、軸受が過熱したり異音が出たりしたとき、メカニカルシールから1秒間に1〜2滴程度の漏れを確認したとき、などを挙げています。JIS B 0131は、ポンプの中で起きるキャビテーション(圧力の低い部分で水が泡になる現象)が騒音と振動の原因になり、発達すると性能が下がると定義しています。
ポンプが頻繁に動いたり止まったりする
水をあまり使っていないのに、ポンプが短い間隔で動いたり止まったりするのは、圧力タンクの不具合のサインです。
圧力タンクは、ポンプが止まっている間の給水を受け持つ部品です。日本産業機械工業会の資料は、隔膜式の圧力タンクを「ポンプの停止時間が極端に短くなったら取替」とし、取替周期の目安を3年としています。荏原製作所の直結給水ブースタポンプの取扱説明書も、圧力タンク内の封入圧力は「必ず6 ヶ月毎に点検してください」としています。
同じ取扱説明書は、圧力センサやフロースイッチなどが故障すると、ポンプが止まらなくなり、ポンプや配管の温度・圧力が上がるおそれがある、とも書いています。動き方がいつもと違うときは、ポンプ本体だけでなく、制御の部品も疑います。
止まったら:制御盤の表示を控え、メーカー・保守業者へ
給水ポンプが止まったら、まず制御盤の表示と止まった時刻を控え、メーカーか保守業者に連絡します。
東京都水道局は、増圧給水設備の「ポンプ停止等設備の故障の修理等は、増圧給水設備の製造業者等が対応します」と案内しています。夜間・休日に来てもらえるかは、平時に確かめておきます。
修理を待つ間は、止まっても使える蛇口(1階の給水栓、受水槽の手前の検水栓)を使います。どれが使えるかは平時に確かめておきます。
給水ポンプに法定点検はあるか|一律の義務は無く、4つの場合に義務がかかる
給水ポンプには、すべての建物に一律にかかる法定点検はありません。点検が法令や規程の義務になるのは、次の4つの場合です。
| 義務になる場合 | 根拠 | 中身 | 頻度 |
|---|---|---|---|
| 特定行政庁が指定した建物 | 建築基準法12条3項 | 給水設備の定期検査(給水ポンプの運転の状況を含む) | 特定行政庁が決める(東京都は毎年報告) |
| 国・自治体の建物 | 建築基準法12条4項 | 建築設備の損傷・腐食・劣化の状況の定期点検 | 定期(国土交通省令による) |
| 直結増圧方式の建物 | 水道事業者の規程(東京都の給水条例施行規程8条の2) | 増圧給水設備の逆流防止機能・運転制御機能などの点検 | 1年以内ごとに1回 |
| 受水槽が一定の容量を超える建物など | 水道法34条の2・同法施行規則55条・56条(簡易専用水道)、建築物衛生法施行規則4条(特定建築物) | 受水槽の清掃と検査、残留塩素の検査。条文に「ポンプ」の語は無い | 清掃・検査は年1回以上 |
建築基準法、同法施行令、平成20年国土交通省告示第285号、東京都の定期報告の案内、東京都給水条例施行規程、水道法施行規則、建築物衛生法施行規則をもとに作成
建築基準法12条の定期検査:特定行政庁が指定した地域の建物
建築基準法12条3項の定期検査で給水設備が対象になるのは、特定行政庁(都道府県や一部の市)が指定した場合だけです。
12条3項は、政令で定める建築設備と、特定行政庁が指定する建築設備に、定期の検査と報告を求めています。政令(施行令16条3項)が全国一律に定めるのは昇降機と防火設備の一部だけで、給水設備は入っていません。
特定行政庁が給水設備を指定すると、平成20年国土交通省告示第285号の基準で検査を受けます。検査の項目には「給水ポンプの運転の状況」があり、水圧計で測って作動を確かめます。東京都は、指定した建築物の「給水設備及び排水設備(給水タンク等を設けるもの)」を毎年報告の対象にしています。自分の建物が対象かどうかは、所在地の特定行政庁の定期報告の案内で確かめます。
国・自治体の建物は12条4項で点検
国、都道府県、建築主事を置く市町村が所有・管理する建物は、建築基準法12条4項で、建築設備の定期の点検が義務になっています。
12条4項は、これらの建物の特定建築設備等について、定期に「一級建築士若しくは二級建築士又は建築設備等検査員」に損傷・腐食その他の劣化の状況を点検させなければならない、と定めています。都道府県立の病院や、建築主事を置く市の庁舎などの給水ポンプは、この点検の対象に入ります。
直結増圧は水道事業者の規程で年1回(東京都の例)
直結増圧方式の建物では、水道事業者の規程で、増圧給水設備の年1回の点検が義務になっていることがあります。
東京都給水条例施行規程8条の2は、増圧給水設備の管理責任を持つ人に、逆流防止機能、運転制御機能、そのほか正常な運転に必要な機能について「一年以内ごとに一回、定期点検を行わなければならない」と定めています。ほかの地域は各水道事業者の規程で確かめます。
受水槽の清掃・検査はポンプの点検とは別の制度
受水槽の清掃と検査の義務は、水道法とビル管法にありますが、どちらも水槽と水質の制度で、給水ポンプの点検を定めたものではありません。
水道法では、受水槽の有効容量の合計が10m³を超えると簡易専用水道になり、水道法34条の2と水道法施行規則55条・56条で、水槽の掃除と検査を毎年1回以上行う義務がかかります。条文に「ポンプ」の語はありません。国土交通省の資料では、簡易専用水道は全国に206,856施設あります(令和4年度の水道統計の値)。
ビル管法(建築物衛生法)では、同法施行規則4条で、特定建築物に、貯水槽の清掃を1年以内ごとに1回、遊離残留塩素の検査を7日以内ごとに1回行う義務がかかります。特定建築物の用途は店舗、事務所、学校などで、病院と工場は入っていません。受水槽側の制度は水質を守るための義務で、受水槽に水があっても、ポンプが止まれば上の階へは届きません。
点検の頻度と項目|官庁施設の標準は6か月か1年
給水ポンプの点検の頻度は、国の官庁施設の標準では、項目ごとに6か月か1年です。
国土交通省の「建築保全業務共通仕様書」(令和5年版)は、官庁施設の保全業務の標準を定めた資料で、給水ポンプの点検項目と周期は次のとおりです。
| 点検項目(陸上ポンプ) | 周期Ⅰ(標準) | 周期Ⅱ(軽減) |
|---|---|---|
| 吸込圧力と吐出し圧力が許容範囲内か | 6か月 | 6か月 |
| グランドからの水漏れが正常か | 6か月 | 6か月 |
| 軸継手ゴムの損傷など | 6か月 | 1年 |
| 回転方向が正しいか | 1年 | 1年 |
| 絶縁抵抗の測定 | 6か月 | 1年 |
| 運転電流が定格値以下か | 6か月 | 6か月 |
| 圧力タンクの腐食・損傷・水漏れ | 6か月 | 6か月 |
| 圧力タンクの封入ガスの圧力 | 6か月 | 6か月 |
| 運転の状況(12条の点検に当たる) | 1年 | 1年 |
国土交通省「建築保全業務共通仕様書」(令和5年版)表4.5.7(A)から抜粋。周期Ⅱは、重大な支障が生じないと想定される範囲で頻度を軽くした周期
建築保全業務共通仕様書の点検項目
共通仕様書の給水ポンプの点検は、圧力、水漏れ、電気、圧力タンク、運転の状況に分かれます。
対象は、揚水ポンプ、電動機出力の合計が7.5kW以下の小形給水ポンプユニット、水道用直結加圧形ポンプユニットなどです。 メーカーの取扱説明書にも、別の周期があります。荏原製作所の直結給水ブースタポンプの取扱説明書は、圧力タンクの封入圧力を6か月ごと、逆流防止器を少なくとも1年に1回、ストレーナの清掃を3か月に1回を目安にしています。点検の契約では、仕様書の項目とメーカーの周期が範囲に入っているかを照らし合わせます。
井戸の水中ポンプも同じ仕様書で点検する
井戸から水をくみ上げる深井戸用の水中ポンプも、共通仕様書に点検項目と周期があります。
共通仕様書の表4.5.7(B)は、深井戸用水中モーターポンプについて、締切圧力と吐出し圧力の確認、単位時間の揚水量の確認を6か月ごと、絶縁抵抗の測定を周期Ⅰで6か月、周期Ⅱで1年としています。井戸と受水槽をつなぐ設備の考え方は地下水の活用のページにまとめています。
交換の目安|ユニットは10年、部品は1〜8年で替える
給水ポンプの交換の目安は、日本産業機械工業会の資料で、小形の給水ポンプユニット全体が10年、部品は種類ごとに1〜8年です。
| 部品 | 取り替える兆候 | 取替周期の目安 |
|---|---|---|
| ユニット全体 | ― | 10年 |
| オーバーホール(分解・点検・整備) | ― | 4〜7年 |
| 軸受 | 過熱したり、異音が出たりする | 2〜4年 |
| メカニカルシール | 1秒間に1〜2滴程度の漏れを確認 | 1〜2年 |
| グランドパッキン類 | 増し締めしても著しく水漏れする | 1年 |
| インバータ | 動作が不確実になる | 7〜8年 |
| プリント基板 | 各運転の動作が不確実になる | 5年 |
| 逆止弁 | ― | 3〜5年 |
| 圧力タンク(隔膜式) | ポンプの停止時間が極端に短くなる | 3年 |
日本産業機械工業会「汎用ポンプの保守管理について」(2023年1月改訂)表4 小形給水ポンプユニットの取替周期の目安をもとに作成。対象は定格出力7.5kW以下(1台あたり)
表4の10年は、1台あたり定格出力7.5kW以下の小形のユニットが対象です。増圧給水ポンプユニット(同じ資料の表5)もユニット全体10年で、こちらは適切な維持管理と年1回以上の定期点検が前提とされています。メーカーの川本製作所は、同じ周期の表に「水質、使用状況環境により異なります」と添えています。
年数は3つある:税・国交省・業界の年数を混ぜない
給水ポンプについて目にする年数は、税の耐用年数、国のマンション向けの目安、業界団体の取替周期の3つで、それぞれ意味が違います。
1つめは、減価償却資産の耐用年数等に関する省令が「給排水又は衛生設備及びガス設備」に定める15年です。税金の計算のための年数で、ポンプが使える年数ではありません。
2つめは、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)の目安です。給水ポンプ(揚水ポンプ、加圧給水ポンプ、直結増圧ポンプ)について、補修(分解整備)を5〜8年、取替を14〜18年としています。これはマンションの修繕計画のための参考の周期で、稼働時間の長い病院や工場に、そのまま当てはまる年数ではありません。
3つめが、前の表の業界団体の取替周期で、小形のユニット全体10年です。替える時期は、年数だけでなく、表の兆候と点検の結果、メーカーの目安を合わせて判断します。
部品の供給が終わると、修理ではなく交換になる
古い型の給水ポンプは、メーカーの部品の供給が終わると修理ができなくなり、ユニットの交換が必要になります。
大手メーカーの1社は、2015年4月のトップランナーモータ規制で旧型のモータを調達できなくなったとして、ある型は2017年1月、別の型は2024年12月末で部品の供給を終えると告知し、新しいユニットへの交換を案内しています。点検のときに、ポンプの型と部品の供給の予定を確かめておくと、急な交換を避けられます。
交換費用は規模と方式で変わる:見積りで比べること
給水ポンプの交換費用は、ポンプの台数や出力、給水方式、工事の条件で大きく変わり、公的な相場はありません。
見積りを比べるときは、金額だけでなく、次の項目が同じ条件になっているかを確かめます。
- ポンプの台数と出力、交互運転か並列運転か
- 給水方式(高置水槽・ポンプ直送・直結増圧)と、方式を変えるかどうか
- 制御盤や圧力タンクまで替えるか、ポンプ本体だけか
- 工事の間の仮設の給水が含まれているか
- 断水する時間と、工事をする曜日・時間帯
- 交換後の点検と保守の契約
交換工事の間の水をどうするか
交換工事の間は水が止まる前提で、使える蛇口と仮設の給水を事前に決めておきます。
直結増圧方式なら1階などの給水栓、受水槽の方式なら受水槽の手前の検水栓が使える場合があります(東京都水道局・大阪市水道局の案内)。病院のように水を止められない施設では、仮設のポンプでつなぐかどうかを、見積りの段階で業者に確かめます。
止めないための備え|ポンプの二重化と、水源の二重化は別の層
給水ポンプを止めない備えは、ポンプ、電源、蛇口、水源の4つの層に分かれ、1つの層の備えでほかの層は補えません。
大阪市水道局の案内、国土交通省・経済産業省の浸水対策ガイドラインの公表資料、豊の地下水飲料化システムの仕組みをもとに作成
ポンプ:予備機と交互運転
ポンプの層の備えは、2台以上のポンプを交互運転にして、1台が故障しても残りで送れるようにしておくことです。
交互運転は、JIS B 0131の定義のとおり、2台以上のポンプを一定時間ごとに切り替えて運転する方式です。ただし、1台だけで必要な量を送れるかどうかは機種の仕様で決まり、電源が共通なので、停電では2台とも止まります。
電源:非常用電源にポンプを載せる、電気設備を浸水させない
電源の層の備えは、給水ポンプを非常用電源につなぐことと、電気設備を浸水させないことです。
大阪市水道局は、ポンプ用の非常用電源設備を備えている建物では、停電でポンプが止まってもすぐに断水を解消できると案内しています。非常用発電機があっても、給水ポンプが発電機の回路に入っていなければ水は出ません。自分の施設の発電機が、どのポンプまで動かせるかを図面で確かめておきます。
千葉県の豪雨の例のように、電気設備が水につかるとポンプに電気を送れません。電気設備を地下に置いている建物は、国の浸水対策ガイドラインで対策を確かめます。
蛇口:非常用給水栓を用意しておく
蛇口の層の備えは、ポンプが止まっても水を取り出せる蛇口を、あらかじめ決めておくことです。
大阪市水道局が非常用給水栓に挙げる、直結増圧方式の2、3階程度までの共用の水栓や、受水槽の手前の検水栓がそれに当たります。検水栓の場所、容器、運ぶ人手まで、平時に決めておきます。
水源:井戸を足しても、建物のポンプは要る
水源の層の備えは井戸などの水源を足すことですが、建物の中で水を送るポンプと電源の備えは別に要ります。
豊の地下水飲料化システムは、井戸の水を浄化処理して受水槽へ送り、いまの給水配管のまま施設で使う仕組みです。受水槽に入る水のうち50〜90%が井戸水になり、井戸側に異常があれば水道が自動でバックアップします。東日本大震災では、導入していた病院が非常用電源で井戸と浄水処理設備を動かし、数日間の飲用水と医療用水をまかないました。
一方で、この仕組みが水を足すのは受水槽の手前です。受水槽から先の給水ポンプが故障したり、ポンプの電源が止まったりすれば、井戸があっても上の階の蛇口から水は出ません。井戸のポンプと浄水処理設備も電気で動くので、停電に備えるには非常用電源が要ります。水源の二重化は水道が止まったときの備えで、ポンプと電源の備えの代わりにはなりません。導入後の保守の考え方は保守・サポートのページに、BCPの中での水の備えの位置づけはBCP対策の具体例の記事とBCP策定の手順の記事にまとめています。
給水ポンプについてのよくある質問
Q. 給水ポンプの寿命は何年ですか
A. 一律の寿命はありません。日本産業機械工業会の資料では、ユニット全体の取替周期の目安が、1台あたり7.5kW以下の小形の給水ポンプユニットで10年、増圧給水ポンプユニット(年1回以上の定期点検が前提)でも10年です。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインは取替を14〜18年としていますが、これはマンションの修繕計画のための参考の周期です。税の法定耐用年数の15年は減価償却の年数で、寿命ではありません。
Q. 給水ポンプの点検は誰がしてよいのですか
A. 建築基準法12条の定期検査と、国・自治体の建物の定期点検は、一級建築士、二級建築士、建築設備等検査員のいずれかが行います。それ以外の日常の点検や保守は、メーカーや保守業者に依頼します。東京都水道局は、増圧給水設備の故障の修理は製造業者等が対応すると案内しています。
Q. ポンプが2台あれば、1台壊れても断水しませんか
A. 交互運転で、1台でも必要な量を送れる仕様なら、1台の故障で断水は起きにくくなります。ただし、使う水が多い時間帯に2台を並列運転で同時に動かしている場合は、1台が止まると送れる量が減ります。停電では2台とも止まります。1台で送れる量は機種の仕様書で確かめ、ポンプの電源は非常用電源につないでおきます。
Q. 停電したら、どれくらい水が使えますか
A. 給水方式で変わり、一律の時間はありません。高置水槽方式は、高置水槽に水がある間は断水せず、その長さは、高置水槽の有効容量を1時間あたりの使用量で割ると目安がつかめます。使用量は時間帯で変わるので、昼の多い時間帯の量で見積もります。ポンプ直送方式と直結増圧方式は、停電でポンプが止まると上の階からすぐに水が出なくなります。直結増圧方式でも、配水管の水圧で届く1階などの蛇口は使えます。
Q. 交換工事の間は水が止まりますか
A. 止まる前提で段取りします。工事の前に、使える蛇口(直結増圧なら1階などの給水栓、受水槽の方式なら受水槽の手前の検水栓)と、仮設の給水が見積りに含まれているかを確かめます。断水の時間帯も、見積りの段階で業者と決めておきます。受水槽の清掃(簡易専用水道なら年1回以上)でも断水するので、同じ日に工事を合わせられないかを業者に相談すると、断水の回数を減らせます。
参考情報
- JIS B 0131:2017(ターボポンプ用語)
- 東京都水道局 給水方式・直結切替え・増圧給水設備の維持管理の案内、東京都給水条例施行規程
- 川崎市・秋田市・大阪市・京都市・熊本市・門真市・札幌市の水道事業者 給水方式と停電時の案内
- 埼玉県上里町、岡山県玉野市 受水槽の管理の資料
- 建築基準法、同法施行令、平成20年国土交通省告示第285号、東京都都市整備局 定期報告の対象の案内
- 水道法、同法施行令・施行規則、建築物衛生法、同法施行令・施行規則
- 国土交通省 簡易専用水道の施設数の資料(令和4年度)
- 国土交通省「建築保全業務共通仕様書」(令和5年版)
- 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表第一)
- 日本産業機械工業会「汎用ポンプの保守管理について」(2023年1月改訂)
- 川本製作所 保守・点検サービスの案内、荏原製作所 PNAGM型 取扱説明書、テラル 部品供給終了の告知
- 国土交通省・経済産業省 電気設備の浸水対策ガイドラインの公表資料(2020年6月)
- 東京海上ディーアールの解説、共同通信の報道(2026年8月)
- 石川県の公立病院の活動報告書、厚生労働省「令和6年版 厚生労働白書」
