災害時の水は、飲む水と調理の水で1人1日3Lを目安に、最低3日分、大きな災害に備えるなら1週間分を蓄えておきます。
それとは別に、トイレや手洗いに使う生活用水も要ります。この記事では、人数と日数ごとの量、水の種類ごとに保存できる期間、置き場所と入れ替えのしかた、水道水の汲み置き、生活用水の備え、断水したときの流れ、職場と施設の水の備えを、農林水産省・首相官邸・水道局などの資料をもとに書きます。
この記事でわかること
- 飲む水は1人1日3L:農林水産省は、飲料用と調理用だけで1人1日3Lが要るとし、最低3日分で9Lとしています。
- 大きな災害は1週間分:首相官邸の案内は、飲料水3日分を挙げ、大規模災害では1週間分の備蓄が望ましいとしています。
- 水の種類で保存できる期間が違う:長期保存水は5〜10年、ふつうのミネラルウォーターは約2年、汲み置きの水道水は常温で3日程度、冷蔵庫で10日程度が目安です。
- 生活用水は飲む水と別に用意する:風呂の水を張っておく、ポリタンクに水道水を入れておく、携帯トイレをそろえる、の3つが基本です。
- 職場では事業所内で勤務する全従業員の分:国と東京都の目安は、1人あたり3日分で水9Lです。
災害時の水の備えとは|飲む水は1人1日3Lを最低3日分、できれば1週間分
災害時の水の備えとは、水道が止まっても数日は暮らせるように、飲む水と生活用水を家や職場に蓄えておくことです。
地震や大雨で水道管や浄水場が壊れると、蛇口から水が出なくなります。電気やガスよりも、水は無いとすぐに体と衛生に響きます。量の目安は省庁と水道局の資料でそろっていて、1人1日3L、最低3日分です。
3Lは、飲む水と調理に使う水の合計
1人1日3Lは、飲み水と調理の水だけの量で、洗い物やトイレの水は入っていません。
農林水産省の家庭備蓄のページは、飲料用と調理用だけで1人1日3Lの水が要ると言われているとし、湯せんや、食品・食器を洗う水は別に要るとしています。3Lは「生活に使う水の全部」ではなく、「命をつなぐための最低の量」と考えます。
3日分は最低限で、大きな災害には1週間分
3日分は最低限の量で、首相官邸の案内は、大規模災害では1週間分の備蓄が望ましいとしています。
首相官邸の「災害に対するご家庭での備え」は、飲料水を3日分(1人1日3Lが目安)としたうえで、大規模災害の発生時には1週間分が望ましいとしています。農林水産省の消費者の部屋も、1人1日3Lを目途に、最低3日分〜1週間分の備蓄が望ましいと答えています。最初は3日分をそろえ、置き場所に余裕ができたら1週間分へ増やす、という順番で十分です。
飲む水とは別に、生活用水が要る
トイレを流す、手を洗う、体を拭くといった生活用水は、飲む水の3Lとは別に備えます。
首相官邸の案内は、飲料水とは別にトイレを流すための生活用水も必要だとし、水道水を入れたポリタンクを用意する、お風呂の水をいつも張っておく、といった備えを挙げています。生活用水の備え方は、このあとの章で詳しく書きます。
何リットル備えるか|人数と日数で数える
備える量は、1人1日3Lに人数と日数をかけて出し、4人家族の3日分なら36Lです。
家族の人数と、何日分を備えるかを決めれば、量は計算で出ます。次の表は、1人1日3Lで数えた量と、2Lのペットボトルに直した本数です。
| 人数 | 3日分 | 1週間分(7日) | 2Lのペットボトルの本数(3日分/1週間分) |
|---|---|---|---|
| 1人 | 9L | 21L | 5本/11本 |
| 2人 | 18L | 42L | 9本/21本 |
| 3人 | 27L | 63L | 14本/32本 |
| 4人 | 36L | 84L | 18本/42本 |
| 5人 | 45L | 105L | 23本/53本 |
表1 人数と日数ごとの飲む水の量(当社の計算)。農林水産省・首相官邸の「1人1日3L」の目安に人数と日数をかけ、2Lのペットボトルの本数は端数を切り上げた。生活用水は含まない
2Lのペットボトルなら、1人3日分で5本
1人3日分の9Lは、2Lのペットボトル5本で10Lになり、最低量がそろって少し余ります。
農林水産省のページは、まとめ買いをせず、買い物のついでに2Lのペットボトルを1本ずつ買えば、5回で1人分の最低量がそろうと紹介しています。一度にそろえようとすると重く、置き場所にも困るので、少しずつ足していくのが続けやすいやり方です。
家にいない時間の分は、職場や学校で備える
平日の昼に災害が起きると、家族はそれぞれ職場や学校で過ごすことになり、家の備蓄はすぐには使えません。
東京都の帰宅困難者対策条例は、事業者に、従業者を施設内に待機させるための3日分の水や食糧を備えるよう求めています(努力義務)。家の備蓄は家族全員の分を数えつつ、職場の備えがどうなっているかも確かめておきます。職場の目安は、あとの章の表4で書きます。
どの水で備えるか|保存水・ペットボトルの水・汲み置きの水道水
備蓄の水は、長期保存水・ふつうのペットボトルの水・汲み置きの水道水の3つから、保存できる期間で選びます。
農林水産省のページは、市販のペットボトル入りの水やウォーターサーバーの水のほか、一工夫すれば水道水でも備蓄できるとしています。どれを選ぶかは、入れ替えの手間をどこまでかけられるかで決まります。
| 水の種類 | 保存できる期間の目安 | 向いている使い方 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 長期保存水(ペットボトル) | 賞味期限 5〜10年 | 入れ替えの手間を減らす。押し入れや車など、ふだん開けない場所に置く | 農林水産省 消費者の部屋 |
| ふつうのミネラルウォーター(ペットボトル) | 賞味期限 約2年 | ふだん飲みながら買い足す(ローリングストック) | 農林水産省 消費者の部屋 |
| 汲み置きの水道水(清潔な容器・満水・密栓) | 塩素の消毒効果が続く目安:常温で3日程度、冷蔵庫で10日程度 | 断水の予報が出たときや、毎日の入れ替えができる家庭 | 東京都水道局・鹿児島市水道局 |
| ウォーターサーバーの水 | 製品の表示による | ふだん飲んでいる水をそのまま備蓄に回す | 農林水産省 |
表2 水の種類と保存できる期間の目安(期間は各資料の値、向いている使い方は当社の整理)。農林水産省「大事な水、どうやって備えますか?」・消費者の部屋「防災備蓄用の水は賞味期限が切れたら使用できなくなりますか」、東京都水道局と鹿児島市水道局の案内をもとに作成(2026年11月6日に確認)
長期保存水は、賞味期限が5〜10年
長期保存水は賞味期限が5〜10年と長く、買い換えの回数を減らしたい家庭に向いています。
農林水産省の消費者の部屋は、長期保存水の賞味期限は5〜10年で、ふつうのミネラルウォーター(約2年)の2倍から5倍ほど長もちすると答えています。農林水産省の家庭備蓄のページも、こまめな入れ替えが面倒なら、買い換えの頻度が少なくて済む長期保存の水での備蓄を勧めています。
ふつうのミネラルウォーターは約2年で、使いながら買い足す
ふつうのミネラルウォーターは賞味期限が約2年なので、ふだん飲みながら買い足す回し方に向いています。
賞味期限が近いものから飲み、飲んだ分だけ新しく買い足せば、期限切れを出さずに一定の量を家に置いておけます。
賞味期限を過ぎても、一律に飲めなくなるわけではない
賞味期限は品質を保てる期限の目安で、過ぎたら一律に飲めなくなるものではないと農林水産省は答えています。
農林水産省の消費者の部屋は、国産のミネラルウォーターの多くは製造の工程で加熱殺菌などが行われていて品質が落ちにくいとし、賞味期限が切れたからと慌てて処分せず、いざというときに役立ててほしいと答えています。ただし、容器が傷んでいる、においや濁りがあるときは飲まず、トイレや掃除の水に回します。
500mlと2Lは、量と持ち出しで使い分ける
当社の整理では、家に置く量は2Lのペットボトルでそろえ、持ち出す分と、開けてから飲み切りたい場面には500mlを足します。
2Lは同じ量を少ない本数で置けますが、重く、開けると飲み切るまでに時間がかかります。500mlは避難のときにリュックに入れやすく、1人ずつ配れます。どちらか一方に決めず、家に置く分と持ち出す分で分けます。
水の保管のしかた|置き場所・入れ替え・汲み置き
水は直射日光を避けた涼しい場所に何か所かに分けて置き、日付を決めて入れ替えます。
図1 水の備えの回し方(当社の整理)。農林水産省 消費者の部屋、東京都水道局・鹿児島市水道局の案内をもとに作成。期間は水道局の目安
直射日光を避け、家の中の何か所かに分けて置く
置き場所は、直射日光が当たらず、温度が上がりにくい場所を選び、1か所にまとめず分けて置きます。
農林水産省のページは、収納が少ない家ではキッチンだけでなくリビングや脱衣所にも置き、2階建て以上の家なら1階と2階に分けて置くとリスクの分散になると紹介しています。同じページは、これをリスクの分散になるとしています。
使いながら買い足す(ローリングストック)
ローリングストックとは、ふだんから少し多めに買い、使った分だけ買い足して、一定の量を切らさない備え方です。
農林水産省の消費者の部屋は、普段から少し多めに買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足して、使いながら備蓄することを勧めています。古いものから使えば、期限切れの水がたまりません。
汲み置きは、蛇口から口元までいっぱいに入れる
水道水を汲み置くときは、清潔でふたのできる容器に、蛇口から直接、口元までいっぱいに入れてふたを閉めます。
東京都水道局の案内は、できるだけ空気に触れないよう口元までいっぱいに入れること、浄水器を通したり沸かしたりすると消毒用の塩素が抜けるので、必ず蛇口から注いで沸かさずに保存することを挙げています。
汲み置きの水は、常温で3日程度、冷蔵庫で10日程度
汲み置いた水道水の塩素の消毒効果が続く目安は、直射日光を避けた常温で3日程度、冷蔵庫で10日程度です。
東京都水道局の案内は、塩素の消毒効果は、直射日光を避けて常温で保存すれば3日程度、冷蔵庫で保存すれば10日程度続くとし、日付をメモしておくと便利だとしています。鹿児島市水道局も同じ日数を挙げ、3日に1回程度は容器を洗って新しい水に入れ替えるよう勧めています。どちらも水道局の目安で、容器の汚れや置いた場所の温度で変わります。
期間を過ぎた水は、捨てずに掃除や洗濯へ
入れ替えで出た古い水は捨てず、掃除・洗濯・トイレなどの生活用水に回します。
東京都水道局は保存期間が過ぎたら掃除や洗濯に、鹿児島市水道局は洗濯やトイレに使うよう案内しています。手洗いや食器洗いには、古い水ではなく、入れ替えたばかりの水道水を使います。
生活用水の備え|トイレ・手洗い・洗い物の水
生活用水は、風呂の水を張っておく、ポリタンクに水道水を入れておく、携帯トイレをそろえる、の3つで備えます。
飲む水は3Lで足りても、暮らしにはその何倍もの水を使います。生活用水まで全部をペットボトルでそろえるのは難しいので、使い道ごとに備え方を分けます。
| 使い道 | 備え方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| トイレ | 携帯トイレ・簡易トイレを1人1日5回分、まず3日分。流すなら風呂の残り湯 | 配管が壊れていると流した水が逆流するおそれがあるため、まず携帯トイレを使う |
| 手洗い・体を拭く | ウェットティッシュ、ポリタンクに入れた水道水 | 飲む水を回さない |
| 食器を洗う | 紙皿・ラップで洗い物を減らす。ポリタンクに入れた水道水 | 農林水産省は、食品や食器を洗う水は3Lとは別に要るとしている |
| 掃除・洗濯 | 入れ替えで出た古い汲み置きの水 | 期間を過ぎた汲み置きの水の使い道として水道局が案内している |
表3 生活用水の使い道と備え方(当社の整理)。首相官邸「災害に対するご家庭での備え」、内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」、農林水産省、東京都水道局・鹿児島市水道局の案内をもとに作成
風呂の水を張っておき、ポリタンクにも水道水を入れておく
生活用水の備えは、浴槽に水を張っておくことと、ポリタンクに水道水を入れておくことの2つが基本です。
首相官邸の案内は、日ごろから水道水を入れたポリタンクを用意する、お風呂の水をいつも張っておく、といった備えを挙げています。浴槽の水はトイレや掃除に、ポリタンクの水は手洗いや洗い物に、と使い道を分けておくと、断水したときに迷いません。小さな子どもがいる家では、浴槽に水を張ったままにするときに転落に気をつけます。
トイレは1人1日5回分、携帯トイレをまず3日分
トイレの備えは、1人1日5回を目安に、携帯トイレをまず3日分そろえます。
内閣府の避難所のトイレのガイドラインは、排泄の回数は1日5回が平均的だとし、携帯トイレはまず3日分を目標に備えるとしています。4人家族なら、4人×5回×3日で60回分です。地震のあとは下水の配管が壊れていることがあり、水を流すと逆流したり、下の階であふれたりするおそれがあります。配管の無事が分かるまでは、水を流さず携帯トイレを使います。
給水の目標は日がたつほど増え、飲む水以外の水が要ることを示している
水道事業者が応急給水の目標を決めるための国の設定例は、発災から3日までは1人1日3Lで、その後は増えていきます。
厚生労働省が平成27年6月に示した「水道の耐震化計画等策定指針」(いまは国土交通省のサイトに掲載)の設定例では、発災から3日までは1人1日3L、7日目には20〜30L(30Lは水洗トイレを含む)、14日目には被災前の量(約250L)と増えていきます。これは水道事業者が配る水の目標で、家庭が備える量ではありませんが、断水が長引くほど飲む水以外の水が要ることが分かります。給水の受け取り方は応急給水の解説で書いています。
断水したらどうするか|最初の3日と給水の受け取り
断水したら、まず備蓄の水で最初の3日をしのぎ、そのあとは給水所で水を受け取ります。
図2 断水したときの流れ(当社の整理・一般の例)。首相官邸、東京都水道局、内閣府のトイレのガイドライン、災害時地下水利用ガイドラインをもとに作成
まず、備蓄の水でしのぐ
断水がわかったら、備蓄の水を飲む水に、浴槽や汲み置きの水を生活用水に分けて使い始めます。
給水の場所と時期は、自治体や水道局の発表で確かめます。それまでの間、飲む水は1人1日3Lを目安に配分し、トイレには携帯トイレを使って、生活用水を節約します。水が出る間に断水の予報が出たときは、清潔な容器やポリタンク、浴槽に水道水をためておきます。
給水所へは、容器を持って行く
給水所では容器を持って行くのが基本で、ポリタンクや給水袋、ふた付きのペットボトルを使います。
東京都水道局は、震災などで断水したとき、災害時給水ステーション(給水拠点)で水を配るとしています。給水所は自治体ごとに場所と開き方が違うため、家と職場の近くの給水所を、平時に水道局の一覧や地図で確かめておきます。探し方は応急給水の解説、受け取る容器の種類と容量は給水車と給水袋の解説で書いています。
断水は、長引くことがある
大きな地震では、断水が1か月以上続いた例があり、3日分の備蓄だけでは足りないことがあります。
国の災害時地下水利用ガイドラインは、令和6年能登半島地震では、停電の復旧に比べて断水の解消まで相当な期間を要したとしています。国土交通省の資料では、この地震で6県の最大約13.6万戸が断水し、建物の倒壊した地域などを除いても解消まで約5か月かかりました。原因ごとの断水の日数は断水はいつまで続くのかで書いています。
汲み置きの水は、コップに注いで飲む
汲み置きの水を飲むときは、容器に直接口をつけず、コップなどに注いでから飲みます。
東京都水道局は、汲み置きした水に雑菌が入らないよう、直接口をつけずにコップなどに注いでから飲むよう案内しています。給水所で受け取った水も、清潔な容器に移し、早めに使い切ります。
職場・施設の水の備え|従業員1人9L、来客の分10%
職場の水の備えは、事業所内で勤務する全従業員について1人あたり3日分で9Lを目安にし、来客の分として10%程度を足します。
災害が平日の昼に起きると、従業員は職場にとどまることになります。家庭の備えと同じ1人1日3Lを、職場では人数分そろえる必要があります。
| 項目 | 家庭 | 職場(事業者) |
|---|---|---|
| 1人あたりの量 | 1人1日3L(飲用と調理) | 1人1日3L、3日分で計9L |
| 日数 | 最低3日分、大規模災害は1週間分 | 3日分(一斉帰宅を抑えて施設内で待機する期間) |
| 対象 | 家族全員 | 雇用の形態を問わず、事業所内で勤務する全従業員。来客などの分として10%程度を余分に |
| 決まりの強さ | 国の案内 | 東京都の条例は「努めなければならない」(努力義務) |
| 実際の進み具合 | - | 飲料水3日分以上の備蓄は、回答した企業のうち大企業66.1%、中堅企業43.0%(内閣府 令和7年度の調査。調査対象5,052社・回答率34.8%、備蓄の設問は1,759社の集計) |
表4 家庭と職場の水の備えの目安(並べ方は当社の整理、値は各資料のもの)。首相官邸・農林水産省の案内、内閣府「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」(令和8年1月)、東京都帰宅困難者対策ハンドブック、内閣府「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」をもとに作成
国と東京都の目安は、全従業員に3日分
国のガイドラインと東京都の目安は、雇用の形態を問わず事業所内で勤務する全従業員に、3日分の水9Lを備えるとしています。
内閣府の帰宅困難者等対策のガイドライン(令和8年1月)は、3日分の備蓄の目安を水1人1日3L・計9Lとし、来客など外部の帰宅困難者のために10%程度を余分に備えることも挙げています。東京都の帰宅困難者対策条例第7条は、事業者に3日分の飲料水や食糧などを備蓄するよう「努めなければならない」と定めていて、罰則のある義務ではなく努力義務です。法令と条例の全体は企業の災害対策の解説で書いています。
飲料水3日分以上の備蓄は、中堅企業で43.0%
内閣府の令和7年度の調査では、飲料水を3日分以上備えている企業は、大企業で66.1%、中堅企業で43.0%でした。
この調査は5,052社を対象に行われ、回答率は34.8%で、備蓄の設問は回答した1,759社の集計です。中堅企業で3日分以上を備えている企業は、半分に届いていません。職場の水の量を見直すときは、人数×9Lに来客の10%を足した量と、いま置いている量を比べます。
病院・福祉施設・工場は、飲む水のほかに業務の水が要る
病院・福祉施設・工場などでは、飲む水とトイレの水のほかに、医療・介護・製造に使う業務の水が要り、量の桁が変わります。
業務の水は施設の種類と規模で大きく違うため、1人あたりの目安では決まりません。BCPの中での水の量の見積もり方はBCPの策定手順と水の項目、介護施設の義務と水の計画は介護施設のBCPで書いています。
施設の水を備蓄だけに頼らない|井戸と当社の地下水飲料化
人数が多い施設や水を多く使う施設は、備蓄に加えて、受水槽・応急給水・自前の水源を組み合わせて水を確保します。
備蓄は最初の数日をしのぐ量で、断水が長引けば別の出どころが要ります。次の表は、施設が使える水の出どころを並べたものです。
| 水の出どころ | 役割 | 弱点 |
|---|---|---|
| 備蓄(ペットボトル) | 最初の3日分の飲む水 | 量に限りがある。入れ替えが要る |
| 受水槽 | 断水した直後の水 | タンク1杯分だけ。地震で壊れることがある |
| 応急給水(給水所・給水車) | 断水が続くときの飲む水 | 来る時期と量は決まっていない |
| 災害用井戸 | 主にトイレや洗い物の生活用水 | 電動ポンプは停電すると汲めない。災害後に濁ることがある |
| 地下水飲料化(深井戸+浄水設備) | 施設の飲み水と生活用水 | 非常用電源との接続が要る。導入できるかは敷地と規制で決まる |
表5 施設が使える水の出どころ(当社の整理)。内閣官房水循環政策本部事務局・国土交通省「災害時地下水利用ガイドライン」(令和7年3月)、当社サイトの「災害時の水源確保」「事業者とシステム」のページをもとに作成
災害用井戸は、主に生活用水の水源
国のガイドラインは、災害用井戸の使い道を主に生活用水とし、条件がそろえば飲用も差し支えないとしています。
災害時地下水利用ガイドライン(令和7年3月)は、電動ポンプは停電すると発電機がないと汲めないこと、災害のあとに濁りや水質の変化が起きることも挙げています。地域に井戸を開く登録と協定は防災井戸の解説で書いています。
停電中に水を出すには、非常用電源につないでおく
井戸のポンプと浄水設備は電気で動くため、停電と断水が重なっても水を出すには非常用発電機につないでおく必要があります。
当社サイトの災害時の水源確保のページでは、東日本大震災のときにこの設備を導入していたある病院が、非常用電源で井戸と浄水処理プラントを動かし、数日間、病院の飲用水と医療用水を井戸の浄化処理水でまかなった例を紹介しています。導入の段階で非常用電源との接続まで決めておくことが条件です。
当社の地下水飲料化は、供給事業者のシステムを置く仕組み
当社(株式会社豊)は井戸を掘る業者ではなく、上場企業である供給事業者が運営する地下水飲料化システムの代理店です。
当社サイトの事業者とシステムのページの表記では、2025年4月現在、供給事業者のシステムが全国66地点で稼働しています。供給事業者が井戸業者やプラントメーカーと契約して、深さ約100mの深井戸と浄水設備を整え、当社は相談から運用中の連絡までの窓口を受け持ちます。水道の契約はそのまま残し、浄水設備に異常があれば水道水に切り替わります。
災害時の水についてのよくある質問
災害時の水の備えについて、よく聞かれる質問に答えます。
Q. 防災用の水は、500mlと2Lのどちらがよいですか
A. 当社の整理では、家に置く分は2L、持ち出す分は500mlと分けます。2Lは少ない本数で量をそろえられ、500mlはリュックに入れやすく、開けてから飲み切りやすい大きさです。どちらにするかの公的な決まりはありません。
Q. 空いたペットボトルに、水道水を汲み置いてもよいですか
A. 使えます。鹿児島市水道局は、水道水をペットボトルに入れて冷蔵庫で保存し、飲み水や料理に使いながら、空いたら補充する「ぐるぐる汲み置き」を紹介しています。ただし、においの強い飲み物が入っていた容器は、水ににおいが移りやすいため勧めないとしています。
Q. 賞味期限が書かれていないミネラルウォーターがあるのはなぜですか
A. 表示を省略できる容器があるためです。農林水産省は、食品表示基準では、ガラス瓶入り(紙栓を付けたものを除く)やポリエチレン容器入りのミネラルウォーターは、賞味期限や保存方法の表示を省略できると答えています。備蓄に回すときは、買った日を容器に書いておくと入れ替えの目安になります。
Q. ミネラルウォーターが長く保存できるのはなぜですか
A. 原水をろ過したあと殺菌して、容器に詰めているためです。農林水産省は、殺菌の方法には加熱殺菌(中心部85℃・30分間かそれと同等以上)、ろ過除菌、紫外線殺菌、オゾン殺菌などがあり、国産の多くは加熱殺菌などが行われていて品質が落ちにくいと答えています。
Q. ウォーターサーバーの水は、備蓄になりますか
A. なります。農林水産省は、備蓄する水として市販のペットボトル入りの水とともにウォーターサーバーの水を挙げています。ボトルの保存できる期間は製品の表示で確かめ、ふだん飲みながら予備のボトルを切らさないようにします。
参考情報
省庁と自治体の資料は2026年11月6日に確認しました。
- 農林水産省「大事な水、どうやって備えますか?」
- 農林水産省 消費者の部屋「防災備蓄用の水は賞味期限が切れたら使用できなくなりますか。」
- 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」
- 首相官邸「災害に対するご家庭での備え」
- 東京都水道局 豊島営業所「くみ置きした水道水で災害に備えましょう」(2023年9月)
- 東京都水道局「災害時給水ステーション」
- 鹿児島市「水道水の保存期間はどれくらいですか。」
- 鹿児島市水道局「災害への備え」
- 内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」
- 厚生労働省「水道の耐震化計画等策定指針」(平成27年6月)
- 内閣府「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」(令和8年1月)
- 東京都「東京都帰宅困難者対策ハンドブック」
- 内閣府「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査(概要)」
- 内閣官房水循環政策本部事務局・国土交通省「災害時地下水利用ガイドライン」(令和7年3月)
- 国土交通省「令和6年能登半島地震を踏まえた上下水道の強靱化について」(令和6年6月)ほか、能登半島地震の水道の被害と復旧の資料
