簡易専用水道とは、水道水だけを受水槽にためて使う施設のうち、受水槽の有効容量の合計が10m³を超えるものです。
簡易専用水道に当たる建物の設置者には、水道法で水槽の清掃と、登録検査機関による年1回の検査が義務づけられています。この記事では、自分の施設が当たるかの判定(10m³の数え方と井戸水を使う場合)、設置者が守る管理基準、法定検査の中身と費用の例、国の集計で指摘の多い項目、自治体ごとに違う届出、義務を怠ったときの指示と罰則、特定建築物や地下水を使う施設との関係までを、法令と国・自治体の資料をもとに整理します。水道法の区分の全体は水道法の記事で扱っています。
この記事でわかること
- 対象は受水槽の有効容量の合計が10m³を超える施設:水道法3条7項と施行令2条で決まります。ちょうど10m³以下は対象外で、高置水槽の容量は数えません。井戸水を一部でも受水槽に入れる施設は、簡易専用水道に当たりません。
- 設置者の義務は管理基準と年1回の検査:水道法施行規則55条で水槽の掃除を毎年1回以上、汚染を防ぐ点検、水の異常時の検査、危険時の給水停止を守り、56条で登録検査機関などの検査を毎年1回以上受けます。自主検査や清掃業者の検査では代えられません。
- 検査の指摘で最も多いのは書類:国土交通省の令和4年度の集計で、受検率は対象施設の78.0%、指摘率は検査を受けた施設の22.4%でした。指摘を受けた施設のうち26.6%が書類の整備保存、20.8%が受水槽のマンホールの指摘です。
- 届出は水道法ではなく自治体の決まり:水道法に設置届の条文は無く、東京都は保健所長への「報告」、大阪市・横浜市・名古屋市などは「届出」と、名前も出し先も違います。
- 検査を受けないと100万円以下の罰金:管理が基準に合わないときは、知事の指示、給水停止命令へ進み、命令に違反すると1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
簡易専用水道とは|水道水だけを受水槽にためる、10m³超の施設
簡易専用水道は、水道事業者から受けた水だけを受水槽にため、建物の中へ送る施設で、受水槽の容量が10m³を超えるものです。
ビルや病院、工場、マンションには、道路の水道管の水をいったん受水槽に受け、ポンプで各階や屋上の高置水槽へ送る形の建物があります。この形の施設のうち、規模の大きいものを水道法は「簡易専用水道」と呼び、設置者に管理と検査を義務づけています。
定義は水道法3条7項と施行令2条
簡易専用水道の定義は、水道法3条7項が水源の条件を、水道法施行令2条が規模の基準を決めています。
水道法3条7項は、簡易専用水道を「水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするもの」とし、ただし書で「政令で定める基準以下のもの」を除いています。施行令2条はその基準を「水槽の有効容量の合計が十立方メートルであること」と定めています。基準「以下」が除かれるので、対象になるのは10m³を超えるもので、ちょうど10m³の施設は対象外です。
受水槽から先の設備がすべて含まれる
簡易専用水道として管理するのは受水槽だけでなく、受水槽から先の配管、ポンプ、高置水槽までの給水の設備全体です。
沖縄県は、受水槽だけでなく、受水槽から先の配管、ポンプ、高置水槽などを含めて「飲み水を供給するための施設全部が簡易専用水道」になると説明しています。東京都も、清掃の対象を「受水槽、高置水槽等すべての水槽を含む」と書いています。容量の判定には受水槽だけを使いますが、管理の範囲は受水槽より先の設備全体に及びます。
水道法3条7項、沖縄県の案内をもとに作成した模式図。受水槽から先の配管・ポンプ・高置水槽を含む給水の設備全体が、簡易専用水道として管理の対象になる
貯水槽水道のうち10m³を超えるもの
受水槽にためて使う施設は大きさに関係なく「貯水槽水道」と呼ばれ、そのうち10m³を超えるものが簡易専用水道です。
水道法14条2項5号は、水道事業者が定める供給規程に、貯水槽水道について「水道事業者及び当該貯水槽水道の設置者の責任に関する事項」を定めるよう求めています。10m³以下の貯水槽水道は「小規模貯水槽水道」と呼ばれ、水道法の管理と検査の義務はかかりませんが、自治体の条例や要綱で管理を求められます。
自分の施設が当たるかの判定|10m³の数え方
簡易専用水道に当たるかは、水源が水道水だけか、受水槽の有効容量の合計が10m³を超えるか、の2点で判定します。
最初に水源を見て、次に受水槽の容量を見ます。水道水だけを使っていても、規模が大きい施設は専用水道という別の区分になります。下の表と図は、主な区分の違いをまとめたものです。
| 区分 | 水源 | 規模の目安 | 主な決まり |
|---|---|---|---|
| 簡易専用水道 | 水道水だけ | 受水槽の有効容量の合計が10m³超 | 水道法(施行規則55条・56条) |
| 小規模貯水槽水道 | 水道水だけ | 受水槽の有効容量の合計が10m³以下 | 自治体の条例・要綱 |
| 専用水道 | 井戸水など自前の水源を含む、または水道水だけで規模が大きいもの | 居住者100人超、1日の最大給水量が政令の基準超など | 水道法(確認・水質検査など) |
| 水道法の外の自家用の水 | 井戸水など | 専用水道の規模に届かないもの | 国の要領・自治体の条例など |
水道法3条6項・7項、水道法施行令2条、沖縄県・横浜市・福岡市の案内をもとに作成。区分の最終判断は施設を管轄する保健所などが行う
水道法3条6項・7項、水道法施行令2条をもとに作成した模式図。最終的な判断は施設を管轄する保健所などが行う
数えるのは受水槽の有効容量の合計
10m³と比べるのは、水道水を受けるために設けた受水槽の有効容量の合計で、建物にある水槽の総量ではありません。
施行令2条は、基準を「水道事業の用に供する水道から水の供給を受けるために設けられる水槽の有効容量の合計」としています。有効容量は、水槽の外形の大きさではなく、実際に水をためて使える量です。受水槽が複数あれば合計で判定しますが、別の系統や別の建物に分かれている場合の数え方は、管轄の保健所に確かめるのが確実です。
高置水槽の容量は数えない
屋上の高置水槽の容量は有効容量に含めず、水道管から最初に水を受ける水槽だけを数えます。
沖縄県は「高置水槽の容量は、有効容量に含まれません」と説明しています。ただし、水が最初に入る水槽が高置水槽である建物では、その高置水槽が受水槽になると注意しています。高置水槽の清掃や点検の中身は高架水槽の記事にまとめています。
井戸水を一部でも使うと当たらない
井戸水などを一部でも受水槽に入れる施設は、水源が水道水だけではなくなるため、簡易専用水道に当たりません。
沖縄県は「地下水(井戸水)の一部または全部を受水槽に使用する場合は、簡易専用水道に該当しません」としたうえで、井戸水をためて使う場合は「専用水道」として水道法の規制を受ける場合があると書いています。簡易専用水道でなくなっても管理が軽くなるわけではなく、区分によっては水質検査の義務が増えます。
水道水だけでも規模が大きいと専用水道
水道水だけを使う施設でも、地中や地表の水道施設の規模が政令の基準を超えると、簡易専用水道ではなく専用水道になります。
水道法3条6項は、専用水道から除く施設を「他の水道から供給を受ける水のみを水源とし、かつ、その水道施設のうち地中又は地表に施設されている部分の規模が政令で定める基準以下である水道」としています。大きな団地や工場など、敷地内の配管や水槽の規模が大きい施設は、専用水道に当たらないかを保健所に確かめます。基準の数字と判定の詳しい手順は水道法の記事で扱っています。
10m³以下は小規模貯水槽水道
受水槽の有効容量の合計が10m³以下の施設は小規模貯水槽水道と呼ばれ、自治体の条例や要綱で管理を求められます。
横浜市は、有効容量が8m³を超える小規模受水槽水道とすべての地下式受水槽などに、市の条例で管理状況検査の受検を義務づけています。福岡市は、10m³以下の貯水槽も市の給水条例で簡易専用水道に準じた管理に努めることとしています。国土交通省の令和4年度の集計では、小規模貯水槽水道は全国で788,542施設あり、検査を受けた割合は3.5%でした。
設置者の義務|施行規則55条の管理基準
簡易専用水道の設置者は、水道法施行規則55条が決める4つの管理基準に従って、施設を管理しなければなりません。
水道法34条の2第1項は、設置者に「国土交通省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない」と義務づけています。その基準が施行規則55条で、清掃、点検、水質の異常への対応、給水の停止の4つです。
| 号 | 施行規則55条の原文(要旨) | 設置者がすること |
|---|---|---|
| 1号 | 水槽の掃除を毎年一回以上定期に行う | 受水槽・高置水槽を年1回以上清掃し、記録を残す |
| 2号 | 水槽の点検等、有害物や汚水で水が汚染されるのを防ぐ措置 | マンホール、通気管、オーバーフロー管、水槽の周囲を点検する |
| 3号 | 給水栓の水の色、濁り、臭い、味などに異常を認めたときは必要な項目を検査 | 異常を感じたら水質検査を行う |
| 4号 | 人の健康を害するおそれを知ったときは直ちに給水を停止し、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知 | 給水を止め、利用者に知らせる |
水道法施行規則55条をもとに作成。右の列は条文の要旨で、具体的なやり方は自治体の指導による
水槽の掃除を毎年1回以上
水槽の清掃は毎年1回以上、定期に行います。対象は受水槽だけでなく、高置水槽などすべての水槽です。
施行規則55条1号は「水槽の掃除を毎年一回以上定期に行うこと」と定めています。東京都は「1年に1回以上の、定期的な水槽(受水槽、高置水槽等すべての水槽を含む)の清掃」を求めています。清掃の手順や清掃後に確かめる水質の値は、高架水槽の記事で国の告示に沿って整理しています。
水槽の点検など、汚染を防ぐ措置
施行規則55条2号は、有害物や汚水で水が汚れないように、水槽の点検などの措置を取ることを求めています。
点検で見るのは、汚水や雨水、虫が入る経路です。マンホールのふたの閉まり具合、通気管の防虫網、オーバーフロー管の先、水槽の周りに物や汚水がないかが中心になります。後の節で見るとおり、法定検査で指摘が多いのもこの部分です。
水に異常を感じたら水質検査
蛇口の水の色、濁り、臭い、味などに異常を感じたときは、必要な項目の水質検査を行います。
施行規則55条3号は、給水栓の水に異常を認めたとき、水質基準のうち必要な項目を検査するよう定めています。毎日の確認として東京都は、色、濁り、におい、味の検査と、毎週1回以上の残留塩素の検査を指導しています。残留塩素の測り方は残留塩素の記事、水質基準の項目は水質検査の記事で説明しています。
健康を害するおそれがあれば給水停止と周知
水が人の健康を害するおそれがあると知ったときは、直ちに給水を止め、使うと危険なことを関係者に知らせます。
施行規則55条4号の義務です。東京都は、水の汚染が起きたときの対応として、保健所への通報、原因の調査、改善措置の実施、代わりの水の確保、復旧直後の水質検査の受検を挙げています。病院やホテルのように水を止めにくい施設ほど、代わりの水をどう確保するかを先に決めておく必要があります。
東京都が指導する点検と記録の保存
東京都は、月1回程度の水槽の点検と、清掃・点検・水質検査の記録を5年間保存するよう指導しています。
東京都の案内では、1か月に1回程度の水槽と周囲の点検、地震や大雨の後の点検、記録の5年間の保存、施設の図面の常時保管を求めています。これは都の指導で、水道法や施行規則に記録の保存年限は書かれていません。ただし、法定検査では図面や清掃の記録がそろっているかを見るため、記録が無いと指摘につながります。
簡易専用水道の検査(法定検査)|年1回、登録検査機関で
簡易専用水道の設置者は、毎年1回以上、自治体の機関か国の登録を受けた検査機関の検査を受けなければなりません。
水道法34条の2第2項が検査の義務を、施行規則56条が「毎年一回以上定期に行うものとする」という頻度を決めています。検査は設置者が検査機関に依頼して受けるもので、行政から日程の連絡が来るとは限りません。
自主検査や清掃業者の検査では代えられない
法定検査は、自分で行う点検や水質検査、清掃業者の検査とは別のもので、登録検査機関の検査を受ける必要があります。
東京都多摩立川保健所のよくある質問は、水質検査や受水槽の清掃をすでにしていても登録検査機関の検査を受ける必要があり、自分で検査したり貯水槽の清掃業者に依頼したりすることでは代えられない、と答えています。清掃と検査は別の義務で、片方だけでは足りません。
検査は施設・水質・書類の3区分
法定検査の中身は、施設とその管理の状態、給水栓の水質、書類の整理の3つで、平成15年厚生労働省告示262号が定めています。
| 区分 | 何を見るか | 告示などの記載 |
|---|---|---|
| 施設の外観検査 | 水槽に汚水などが入るおそれ、水槽と周囲の清潔、水槽内の沈殿物や浮遊物 | 告示262号「水槽の水を抜かずに」行う |
| 給水栓の水質検査 | 臭気、味、色、色度、濁度、残留塩素 | 沖縄県の説明。残留塩素が出ないときは原因を調べる |
| 書類の検査 | 設備の配置と系統の図面、受水槽の周りの平面図、水槽の掃除や点検、水質検査の記録 | 告示262号 別表第三 |
平成15年厚生労働省告示第262号(簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項)、沖縄県の案内をもとに作成
告示は、検査は設置者の「依頼に基づき実施すること」と定めています。大阪府によると、登録検査機関は検査のあと設置者に検査済証と検査報告書を渡し、不適合の事項があれば改善について助言します。
施設の検査は水を抜かずに行う
施設の外観検査は、水槽の水を抜かずに行います。清掃のように給水を止めて水槽を空にする作業とは違います。
告示262号は、水槽の水を抜かずに、汚水などが入るおそれの有無、水槽と周囲の清潔、水槽内の異常な物の有無を検査するとしています。清掃のように水槽を空にする作業とは違うため、当日の段取り(立ち入りの範囲や立ち会い)は依頼する検査機関に確かめます。
検査機関は国土交通大臣と環境大臣の登録
法定検査を行えるのは、地方公共団体の機関か、国土交通大臣と環境大臣の登録を受けた検査機関です。
水道行政は2024年4月に厚生労働省から国土交通省と環境省へ移り、水道法34条の2第2項も「国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者」となりました。東京都によると、それ以前に厚生労働大臣の登録を受けた検査機関は、改正水道法で国土交通大臣と環境大臣の登録を受けたとみなされます。国土交通省は、令和8年10月9日時点の簡易専用水道検査機関登録簿を公開しています。
手数料は検査機関ごとの例
検査の手数料に全国一律の公定額は無く、検査機関ごとに決まっています。現場検査で1万6千円〜2万円程度の例があります。
各検査機関の公式の料金表(2026年10月15日に確認)では、静岡県生活科学検査センターが現場検査16,000円(税抜。2027年4月の検査分から18,000円)、鳥取県保健事業団が令和7年4月から19,250円(税込)、広島県環境保健協会が19,250円(税込)です。建築物衛生法の適用がある施設の書類検査は、静岡が3,000円(税抜)、鳥取と広島が2,750円(税込)でした。税込と税抜の表示が機関で違い、改定もあるので、これは相場ではなく例として見てください。
検査で指摘が多い項目|国の令和4年度の集計
国土交通省の令和4年度の集計では、法定検査を受けた施設の22.4%が何らかの指摘を受けました。
今回確かめた国土交通省の公表資料では令和4年度の分が最新で、ここではその表の値を使います。
受検率は78.0%、指摘率は22.4%
令和4年度の簡易専用水道は全国に206,856施設あり、そのうち161,356施設が検査を受け、受検率は78.0%でした。
検査を受けた施設のうち、指摘を受けたのは36,102施設で、指摘率は22.4%です。この22.4%の分母は検査を受けた施設で、全施設に対する割合ではありません。さらに「特に衛生上問題があった」として報告された施設は1,268で、受検した施設の0.8%でした。受検率は平成30年度から令和4年度まで77.8〜78.4%で、およそ5施設に1施設が検査を受けていない状態が続いています。
指摘で最も多いのは書類の整備保存
指摘を受けた施設のうち26.6%は、図面や清掃・点検の記録といった書類の整備保存についての指摘でした。
| 区分 | 項目 | 指摘を受けた施設のうちの割合 |
|---|---|---|
| 書類 | 書類の整備保存の状況 | 26.6% |
| 施設(受水槽) | マンホールの状態 | 20.8% |
| 施設(受水槽) | 受水槽本体の状態 | 14.5% |
| 施設(高置水槽) | 通気管の状態 | 12.4% |
| 施設 | 水槽の周囲の状態 | 11.9% |
| 施設(受水槽) | 受水槽内部の状態 | 11.8% |
| 水質 | 残留塩素 | 0.6% |
国土交通省「貯水槽水道及び飲用井戸等に係る衛生管理状況について」(令和4年度)をもとに作成。分母は検査で指摘を受けた施設(36,102)で、1施設に複数の指摘がある
書類の指摘は平成30年度の29.2%から少しずつ下がっていますが、項目の中ではいちばん多いままです。
外観は受水槽のマンホールが最多
施設の外観検査で最も多い指摘は受水槽のマンホールの状態で、指摘を受けた施設の20.8%に上りました。
マンホールは、ふたの閉まり具合や立ち上がりの状態によって、雨水やほこり、虫が入る入口になります。受水槽本体の14.5%、高置水槽の通気管の12.4%、水槽の周囲の11.9%が続きます。
水質の指摘はごく少ない
給水栓の水質検査での指摘は少なく、最も多い残留塩素でも、指摘を受けた施設の0.6%でした。
濁度は0.05%、色度は0.06%で、水そのものが基準を外れて見つかることはまれです。ただし「特に衛生上問題があった」として報告された1,268施設では、受水槽内部の状態が33.1%、残留塩素が8.9%を占めていました(分母は報告された施設)。
国も課題に挙げる受検と情報共有
国土交通省は、受検の状況を自治体が十分につかめていない可能性があることを、課題として挙げています。
令和6年度の全国水道主管課長会議の資料は、簡易専用水道の事務がすべての市に移ったものの、保健所設置市を除く市の受検率は74.0%で、最新の設置情報について水道事業者と情報共有しているものは「約5割にとどまっている」と書いています(何を母数にした割合かは資料に書かれていません)。10m³以下の小規模貯水槽水道では、令和4年度の受検率は3.5%でした。
簡易専用水道の届出|水道法に条文はなく、自治体で違う
簡易専用水道の設置や変更の届出は、水道法ではなく自治体の条例・要綱・細則で決まり、名前も出し先も自治体ごとに違います。
水道法と施行令、施行規則には、簡易専用水道の設置届の条文はありません。水道法が簡易専用水道に触れているのは、定義(3条)、管理と検査(34条の2〜34条の4)、指示と命令(36条・37条)、報告と立入検査(39条)などです。届出は、自治体が設置の状況をつかむために独自に決めています。
水道法に設置届の条文は無い
水道法そのものには、簡易専用水道を設置したときに届け出る義務を定めた条文はありません。
一方で、都道府県知事などは水道法39条3項にもとづき、設置者から管理についての報告を求めたり、立入検査をしたりできます。報告をしなかったり虚偽の報告をしたりすると、55条3号で30万円以下の罰金の対象になります。届出の根拠が自治体の決まりでも、行政が施設をつかんでいることが検査の指導の前提になります。
自治体ごとの届出・報告の名前と出し先
主な自治体の公式の案内では、届出の呼び名、根拠、出し先は次のように分かれています。
| 自治体 | 呼び名 | 根拠(案内に書かれたもの) | 出し先 |
|---|---|---|---|
| 東京都(多摩地域の保健所の例) | 給水開始・変更・廃止の「報告」 | 水道法施行細則23条・24条 | 保健所長 |
| 大阪市 | 使用届・届出事項変更届・廃止届 | 大阪市簡易専用水道管理運営指導要綱 | 生活衛生監視事務所 |
| 横浜市 | 給水開始届・記載事項変更/廃止届 | 市の条例 | 区の福祉保健センター生活衛生課 |
| 名古屋市 | 設置届・変更届・廃止届 | 案内に記載なし | 保健センター環境薬務課 |
| 札幌市 | 設置計画事前協議書・使用開始届・変更届・廃止届 | 札幌市簡易専用水道指導要領 | 保健所 |
| 福岡市 | 設置届・変更届・廃止(休止)届 | 案内に記載なし | 区の衛生課 |
各自治体の公式の案内(2026年10月15日に確認)をもとに作成。東京都は水道局へ給水条例の届出をしていれば保健所への報告は不要、名古屋市は上下水道局へ使用開始届を出していれば届出不要としている
期限は「速やかに」から「30日前」まで自治体で違う
届出の期限は自治体で違い、「速やかに」とする所もあれば、宮城県のように30日前と決める所もあります。
上の6自治体の案内は期限を日数で書いておらず、「速やかに」や「開始したとき」としています。
東京都は給水開始・変更・廃止を「速やかに」保健所長へ報告するよう、横浜市も給水開始後に「速やかに」届け出るよう求めています。札幌市は、設置しようとする段階で事前協議書を出すよう求めています。宮城県は県の「簡易給水施設等の規制に関する条例」で、布設の工事に着手しようとする日の30日前までに布設届を、承継があった日から30日以内に承継届を出すよう定めています。
検査結果の報告と、不適合のとき
法定検査の結果は、自治体によって設置者から保健所へ報告し、不適合があれば改善して指導を受けます。
東京都は、検査機関に代わりの報告を頼まなかった場合、設置者が受検の内容を保健所長へ報告するよう求めています。大阪府は、検査結果の不適合事項について保健所へ報告して指導を受けるよう求め、報告は登録検査機関に頼むこともできるとしています。東京都のよくある質問は、検査結果が不適になったら改善するよう答えています。
義務を怠ったとき|指示、給水停止命令、罰則
検査を受けない設置者は罰金の対象になり、管理が基準に合わない設置者は、知事の指示と給水停止命令を受けることがあります。
水道法の罰則は、義務の種類によって段階が分かれています。清掃をしないこと自体には直接の罰則はなく、まず行政の指示が出ます。
検査を受けないと100万円以下の罰金
法定検査を受けない設置者は、水道法54条8号により100万円以下の罰金の対象になります。
54条は「第三十四条の二第二項の規定に違反した者」を100万円以下の罰金としています。東京都多摩立川保健所のよくある質問も、検査を受けなかった場合は罰則が適用される場合があると答えています。罰則が実際に適用された例は、今回の調べでは公的な資料で見つかりませんでした。
管理基準に合わないと、知事の指示から給水停止命令へ
清掃や点検が基準に合っていないときは、まず都道府県知事が期間を決めて清掃などを指示し、従わなければ給水停止を命じられます。
水道法36条3項は、知事が管理の基準に適合していないと認めるとき、期間を定めて「清掃その他の必要な措置を採るべき旨を指示することができる」としています。37条は、指示に従わず、給水を続けると利用者の利益を損なうと認めるとき、給水の停止を命じられるとしています。この命令に違反すると、53条10号で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
受水槽に汚水が入った事故の例
受水槽への汚水の混入は、国と自治体の資料に実際の事故として記録されています。
札幌市によると、2024年12月29日、市内の雑居ビルで、汚水槽などからあふれた汚水が受水槽の上部の配管の接続部のすき間やひび割れから入り、飲食店の利用者などにノロウイルスによる食中毒が出ました。市は2025年1月17日、ビルの所有者に水道法36条3項にもとづく改善の指示を出しています。国土交通省の資料には、令和2年6月、集合住宅の簡易専用水道で、貯水槽のオーバーフロー管が公共下水管に誤って接続され、下水管の詰まりで貯水槽に汚水が流れ込んだ事故も記されています。
特定建築物と、地下水を使う施設の扱い
延べ面積の大きい特定建築物や、井戸水を水源に加える施設では、簡易専用水道の扱いが変わります。
建物の用途と面積によっては建築物衛生法の対象にもなり、水源に井戸水が入ると水道法の区分そのものが変わります。
特定建築物は建築物衛生法の報告で検査に代える自治体がある
建築物衛生法の特定建築物でもある簡易専用水道は、同法の立入検査や報告書で法定検査を受けたとみなす自治体があります。
東京都は、建築物衛生法の適用がある簡易専用水道の検査は、同法にもとづく立入検査か「飲料水貯水槽等維持管理状況報告書」の提出をもって実施したとみなすとしています。石川県は、建築物衛生法の帳簿書類を添えて検査者に出すことで書類検査にできると案内しています。扱いは自治体で違うので、管轄の保健所に確かめます。特定建築物の範囲と、建築物衛生法の清掃の頻度は高架水槽の記事で整理しています。
地下水を混ぜると簡易専用水道から外れる
井戸水を受水槽に加えると、その施設は簡易専用水道ではなくなり、専用水道などほかの区分の決まりを確かめる必要があります。
水道法3条7項の「水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするもの」という条件を満たさなくなるためです。居住者が100人を超える、1日の最大給水量が基準を超えるといった条件に当たれば専用水道になり、水道事業と同じ水準の水質検査や、着工前の確認が求められます。どの区分に当たるかの判定は水道法の記事で詳しく扱っています。
当社が扱うシステムで施設側が確かめること
当社が扱う地下水の飲料化システムでは、浄水した地下水が受水槽へ入り、施設の給水系統へ送られます。
当社のシステムの説明のとおり、水道法の水質基準を満たすよう浄水した地下水を受水槽に入れます。そのため、それまで簡易専用水道として管理していた建物でも、導入後は水源に地下水が加わり、区分と義務が変わります。導入を考えるときは、どの区分に当たるか、誰がどの検査を担うかを、計画の段階で保健所と確かめておく必要があります。地下水を水源に使う考え方は地下水の記事にまとめています。
簡易専用水道についてのよくある質問
Q. 検査を受けたあと、保健所への報告は誰がどうするのですか
A. 東京都の場合、受検報告書は検査のときに検査機関から渡されるはがきで、切手を貼って郵送するか、必要事項を書いて検査機関に委託します。検査機関に代わりの報告を頼まなかったときは、設置者が保健所長へ報告します。
Q. 受水槽が2つあり、それぞれ6m³なら対象になりますか
A. 施行令2条は受水槽の有効容量の「合計」で判定すると定めているので、合計12m³なら10m³を超えて対象になります。別の系統や別の建物に分かれている場合の数え方は、管轄の保健所に確かめてください。
Q. 特定建築物でもある建物は、検査の費用も変わりますか
A. 変わることがあります。東京都は建築物衛生法の報告書の提出で検査を実施したとみなし、静岡県・鳥取県・広島県の検査機関は、建築物衛生法の適用がある施設向けに現場検査とは別の書類検査の料金(2,750〜3,000円)を設けています。扱いは保健所と検査機関に確かめてください。
Q. テナントビルでは、誰が検査を受けるのですか
A. 水道法が管理と検査を義務づけているのは簡易専用水道の「設置者」です。管理会社に清掃や検査の手配を任せることはできますが、受けているかの確認は設置者の側で行う必要があります。
Q. 検査で不適合と言われたら、どうなりますか
A. 指摘された点を改善します。大阪府は不適合事項を保健所へ報告して指導を受けるよう求めており、報告は検査機関に頼むこともできます。衛生上問題がある場合は、すぐに保健所へ連絡します。
参考情報
- 水道法、同法施行令・施行規則(e-Gov法令検索、2026年10月15日時点)
- 平成15年厚生労働省告示第262号(簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項)
- 国土交通省「貯水槽水道及び飲用井戸等に係る衛生管理状況について」(令和4年度)、令和6年度全国水道主管課長会議資料、簡易専用水道検査機関登録簿(令和8年10月9日時点)
- 東京都保健医療局(簡易専用水道の案内、多摩立川保健所のよくある質問、多摩小平保健所の案内)、大阪府、大阪市、横浜市、名古屋市、札幌市、福岡市、沖縄県、石川県の案内
- 静岡県生活科学検査センター、鳥取県保健事業団、広島県環境保健協会の検査手数料の案内
- 札幌市「ビルの受水槽への汚水の混入について」
