揚水試験とは|4つの試験の手順と時間、限界揚水量・適正揚水量の決め方まで

揚水試験とは|4つの試験の手順と時間、限界揚水量・適正揚水量の決め方まで

揚水試験(ようすいしけん)とは、井戸から水をくみ上げ、くんだ量と地下水位の下がり方を測って、井戸の能力と地層の性質を確かめる試験です。

この記事では、4つの試験の手順と時間、限界揚水量と適正揚水量の決め方、透水係数などの求め方、地下水揚水の規制との関係、施設の井戸での結果の使い方を、国の仕様書と業界団体・学会の資料をもとに書きます。

この記事でわかること

  • 揚水試験は4つの試験の組み合わせ:国の標準仕様書は、予備揚水試験、段階揚水試験、連続揚水試験、水位回復試験の順に行うと定めています。
  • 段階揚水試験で限界揚水量を読む:両対数のグラフで、傾きが45度を超えて急に水位が下がる点を限界揚水量とみます。
  • 適正揚水量は限界揚水量の7〜8割が目安:水道技術研究センターは通常70〜80%程度とし、簡易水道の基準は渇水期の限界揚水量の50%を標準としています。
  • 時間は資料で違う:国の標準仕様書は、制約がなければ連続揚水試験を24時間以上、水位回復試験を1時間以上としています。
  • 結果は届出と井戸の管理に使う:町田市は届出に揚水試験報告書を求め、さく井協会の指針は比湧出量が完成時の80%以下で洗浄を勧めています。
目次

揚水試験とは|井戸から水をくみ上げ、水量と水位の下がり方を測る試験

揚水試験とは、井戸から地下水をくみ上げて水位の変化を測り、くめる水量と地層の性質を確かめる試験です。

井戸は、掘っただけではどれだけの水をくめるかが分かりません。揚水試験は、「くむ量」と「水位の下がり方」の関係を測り、井戸を無理なく使える量を決めるための試験です。

目的は、井戸の能力と帯水層の性質を知ること

揚水試験の目的は、井戸がどれだけ水を出せるか(湧出能力)と、水を含む地層(帯水層)の性質(水理定数)を知ることです。

全国さく井協会の「さく井工事施工指針(2021年版)」は、揚水試験は井戸の性能(湧出能力)と帯水層の特性(水理定数)を求める目的で行うとしています。前者はポンプの大きさや毎日くむ量を決める材料に、後者は透水係数や貯留係数といった値で、地下水の流れを計算する材料になります(福島大学の講義資料)。

揚水井でくみ上げ、観測井で水位の下がり方を見る

内閣官房の説明では、揚水試験は、水をくむ揚水井と、そのまわりで水位を測る観測井を使って行います。

内閣官房の「地下水の基礎」は、揚水試験(多孔式現場透水試験)を、揚水井からくみ上げながら周辺の観測井で地下水位の低下を観測し、揚水量と地下水位の関係から地層の水の通りやすさを評価する方法と説明しています。国の標準仕様書の段階揚水試験は、くみ上げている井戸の中で測った水位(井内測定水位)で、次の段階に移るかを判断するとしています。

さく井工事では、仕上げのあと、ポンプを据える前に行う

揚水試験は、井戸を掘って洗浄(仕上げ)を終えたあと、ポンプなどの揚水設備を据える前に行います。

さく井協会の施工指針は、工事の範囲を、掘さく、検層、ケーシング、砂利充填、遮水、仕上げ、洗浄揚水、揚水試験(水質分析)、揚水設備の設置の順に並べています。揚水試験の結果を見てからポンプを選ぶので、この順番になります。井戸を掘る工程の全体と期間はさく井工事の工程と期間で書いています。

揚水試験の種類と順番|予備・段階・連続・水位回復の4つ

揚水試験は、予備揚水試験、段階揚水試験、連続揚水試験、水位回復試験の4つを、この順番で続けて行います。

国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版」は、さく井設備工事の揚水試験として、この4つを行うと定め、揚水量の測り方は JIS B 8302「ポンプ吐出し量測定方法」によるとしています。次の表にまとめます。

試験目的やり方時間(標準仕様書)
予備揚水試験井戸から出せる最大の量をつかむ泥水を十分に出したうえで、最大揚水量を求める定めなし
段階揚水試験限界揚水量と適正揚水量を求める最大揚水量の1/5程度から始め、同じ量ずつ増やしていく。各段階で揚砂量も測る各段階は水位が安定するまで。制約があるときは最大90分
連続揚水試験水位が安定するか、地層の水の通しやすさを確かめる適正揚水量で、くむ量を変えずにくみ続ける制約がなければ24時間以上
水位回復試験止めたあとの水位の戻り方を測る連続揚水試験を止めたあと、水位の上がり方を測る1時間以上

表1 揚水試験の4つの試験(国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版」第7編さく井設備工事 2.2.1 をもとに作成。並べ方は当社の整理。目的の欄の一部は全国さく井協会「さく井工事施工指針(2021年版)」2-2-2による)

揚水試験の4つの試験の流れ1 予備揚水試験最大揚水量をつかむ泥水を出しきる最大の量と水位を見る2 段階揚水試験限界・適正揚水量量を段階的に増やす制約時は各段階最長90分3 連続揚水試験水位の安定・水理定数適正揚水量でくみ続ける制約なしなら24時間以上4 水位回復試験止めたあとの戻りくむのを止める1時間以上測る

図1 揚水試験の4つの試験の流れ(当社の整理)。時間は国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版」の値

予備揚水試験:泥水を出しきり、最大でどれだけくめるかをつかむ

予備揚水試験は、掘ったあとの泥水を出しきり、その井戸から最大でどれだけの水をくめるかをつかむ試験です。

標準仕様書は、予備揚水試験は泥水を十分に排出したうえで行い、最大揚水量を求めるとしています。さく井協会の施工指針は、井戸の水を澄んだ水にする目的と、段階揚水試験で使う最大揚水量とそのときの水位(運転水位)を把握する目的の2つを挙げています。

段階揚水試験:くむ量を段階的に増やし、限界と適正な揚水量を求める

段階揚水試験は、くむ量を段階的に増やして水位の下がり方を測り、限界揚水量と適正揚水量を求める試験です。

標準仕様書は、最初の段階を最大揚水量の1/5程度とし、次の段階からは同じ量ずつ足していくとしています。各段階は水位が安定するまで続けるのが原則で、時間に制約があるときは、10分ごとの水位の変化が10mm以下になるまで、最長90分としています。施工指針は5段階程度に分けるとしています。

連続揚水試験:適正揚水量でくみ続ける(制約がなければ24時間以上)

連続揚水試験は、段階揚水試験で決めた適正揚水量で、くむ量を変えずに長い時間くみ続け、水位が落ち着くかを確かめる試験です。

標準仕様書は、揚水時間に制約がない場合は24時間以上続けて測り、水位の安定性や帯水層の透水性などを確かめるとしています。さく井協会の施工指針は、連続揚水試験で水理定数を求めるとともに、水位の安定性と、近くにある既存の井戸への影響(干渉)を測るとしています。

水位回復試験(回復試験):止めたあと、水位の戻り方を1時間以上測る

水位回復試験は、連続揚水試験でくむのを止めたあと、下がっていた水位が元に戻っていく様子を測る試験で、「回復試験」とも呼ばれます。

標準仕様書は、連続揚水試験の終了後に行い、測る時間は1時間以上としています。さく井協会の施工指針は、揚水を止めたあとの水位の戻りやすさと水理定数を求めるとしています。東京ソイルリサーチの技術資料は、揚水を止めたあとの経過時間と水位を測り、くむ前の水位(平衡水位)まで戻った時点で終えるとしています。

段階揚水試験の読み方|Q-s曲線と限界揚水量

段階揚水試験の結果は、揚水量と水位降下量を両対数で描いた「Q-s曲線」の、傾きが変わる点から限界揚水量を読みます。

水道技術研究センターの「井戸の適正揚水量の考え方」(水道技術ジャーナル2013年4月)は、各段階の揚水量と水位降下量を両対数グラフに描き、得られた段階揚水曲線(Q-s曲線)から限界揚水量を求めるとしています。次の図は、その読み方の模式図です。

Q-s曲線の読み方(模式図・数値なし)揚水量 Q(対数の目盛り)水位降下量 s(対数の目盛り)実線=傾き45度(比例している範囲)変曲点(傾きが45度を超える)=この揚水量が限界揚水量限界より少ない量に適正揚水量をとる(通常は限界の7〜8割程度)変曲点の先は、少し増やすと水位が大きく下がる

図2 Q-s曲線の読み方(当社の作図・模式図)。地下水学会誌「段階揚水試験および影響圏半径」(2021年)と水道技術研究センター「井戸の適正揚水量の考え方」の説明をもとに作成。点の位置は説明のためのもので、実測値ではない

揚水量と水位の下がり方を、両対数のグラフに並べる

Q-s曲線は、横軸に揚水量、縦軸に水位降下量をとり、どちらの目盛りも対数にしたグラフに、段階ごとの結果を点で打って描きます。

地下水学会誌の解説「段階揚水試験および影響圏半径」(第63巻第3号、2021年)は、Q-s曲線は両対数グラフで整理するのが慣例で、点の並びの直線性で試験の妥当性を見たり、傾きや変曲点から井戸の能力を読んだりするとしています。両対数にすると、くむ量と水位の下がり方が比例している範囲は、傾き45度の直線になります。

傾きが45度を超えて急に下がり始める点が、限界揚水量

くむ量を増やしていき、グラフの傾きが45度を超えて水位が急に下がり始める点(変曲点)の揚水量を、限界揚水量と呼びます。

同じ解説は、井戸のまわりの地下水の流れが穏やかな(層流の)うちは傾きが45度になり、ある限界を超えると流れが乱れて(乱流になって)水位の下がり方が極端に大きくなるとし、この変曲点の揚水流量を一般に限界揚水流量と呼ぶとしています。限界揚水量を超えると、少し量を増やしただけで水位が大きく下がります。

変曲点がはっきりしないときの扱い

変曲点は、いつも1つだけはっきり出るとは限らず、出なかったり、いくつも出たりします。

地下水学会誌の解説は、判定の留意点として次を挙げています。変曲点がいくつもあるときは、最初の変曲点を限界揚水流量とします。変曲点がないときは、試験に使ったポンプの最大揚水流量を限界揚水流量としますが、本来の限界はもっと大きい可能性があります。傾きが最初から45度より急なときは、本来の限界がもっと小さい可能性があり、少ない揚水量でやり直す必要があるとしています。

砂が上がってきたら、その量を限界とみる

くんだ水に砂が混じり始めたら、グラフの傾きにかかわらず、その揚水量を限界揚水量とみます。

地下水学会誌の解説は、両対数の傾きにかかわらず、揚砂が見られた時点の揚水流量を限界揚水流量とするとしています。さく井協会の施工指針は、地層によってはどんな対策をしても砂を止めにくい場合があり、そのときはQ-s曲線で求めた適正揚水量に揚砂量の結果も合わせて、くむ量を決めるとしています。

適正揚水量の決め方|限界揚水量の7〜8割が目安

適正揚水量は、限界揚水量に余裕を持たせてくみ続ける量で、水道技術研究センターは通常70〜80%程度としています。

何割にするかは資料と水の使い道で違い、法律で一律に決まった値はありません。

資料適正揚水量の決め方条件・補足
水道技術研究センター「井戸の適正揚水量の考え方」通常、限界揚水量の70〜80%程度各地域の周辺環境を考えて決めるのが望ましい
水道施設設計指針(日本水道協会)※上の資料による紹介限界揚水量の70%以下これ以上増やすと急に水位が下がり、井戸に障害を起こす量を限界揚水量とする
工業用水道施設設計指針・解説(日本工業用水協会)※同上限界揚水量の80%を目安段階揚水試験で求めた限界揚水量に対する割合
簡易水道施設基準解説(全国簡易水道協議会)※同上渇水期の限界揚水量の50%を標準小規模な水源が多いことなどから、安全率を2倍とる
東京ソイルリサーチ 技術資料(揚水試験)定流量揚水試験の揚水量を、限界揚水量の70〜80%程度に決める土木の掘削工事の排水計画で使う揚水試験の例

表2 適正揚水量の決め方(並べ方は当社の整理、値は各資料のもの)。水道技術研究センター「井戸の適正揚水量の考え方」(出典:水道技術ジャーナル2013年4月)、東京ソイルリサーチ 技術カタログ G-04「揚水試験」をもとに作成(2026年11月7日に確認)

通常は、限界揚水量の70〜80%程度

水道技術研究センターの資料は、井戸の適正揚水量を、通常は限界揚水量の70〜80%程度としています。

水道技術研究センターは、通常は限界揚水量の70〜80%程度とし、地域の周辺環境を考えて決めるのが望ましいとしています。当社の整理では、余裕をとるのは、渇水期に水位が下がることや、井戸が目詰まりして能力が年々下がること(このあとの章)を見込むためです。

水道の設計指針は70%以下、工業用水道は80%、簡易水道は渇水期の50%

水道施設設計指針は限界揚水量の70%以下、工業用水道の指針は80%、簡易水道の基準は渇水期の50%としています。

水道技術研究センターの同じ資料によると、水道施設設計指針(日本水道協会)は、井戸に障害を起こす量を限界揚水量とし、その70%以下を適正揚水量としています。工業用水道施設設計指針・解説(日本工業用水協会)は限界揚水量の80%を目安とし、簡易水道施設基準解説(全国簡易水道協議会)は、計画した取水量をいつでもくめるように渇水期の限界揚水量の50%を標準とし、小規模な水源が多く精度の高い揚水試験を行えない場合が多いことなどから、安全率を2倍にとったと説明しています。

井戸1本で守っても、地域の地下水が足りるとは限らない

適正揚水量は井戸1本ごとの値で、守っていても、その地域の地下水全体の収支が釣り合っているとは限りません。

水道技術研究センターは、井戸1本ごとの適正揚水量を守っても、地下水域(地下水盆)の水収支が適正とは限らず、地下水域の水収支を考えた安全揚水量という考え方も必要になるとしています。地域ごとの揚水の規制は、地下水を守り、地盤沈下を防ぐために設けられています(立川市の案内)。規制との関係は、このあとの章で書きます。

比湧出量で、井戸の能力を比べる

比湧出量とは、水位が1m下がるあたりにくめる水の量で、地下水学会誌の解説は井戸の能力のもっとも分かりやすい指標としています。

地下水学会誌の解説は、比湧出量を単位水位降下量あたりの揚水量とし、段階揚水試験の段階ごとに揚水量を水位降下量で割って出すとしています。単位は L/min/m や m³/日/m がよく使われます。井戸どうしや、同じ井戸の完成時と今を比べるときは、同じ揚水量・同じ揚水時間の条件で比べるのが望ましいとしています。

施設で使う水の量を、井戸でまかなえるか確かめる

当社は、施設の水道の使用量と受水槽の状況から、深井戸の地下水を浄水して施設の水源に加えられるかを判定します。導入できない施設には、その旨をはっきりお伝えします。

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連続揚水試験と回復試験で分かること|透水係数・貯留係数などの水理定数

連続揚水試験と水位回復試験の結果からは、透水係数・貯留係数など、地層の水の通しやすさを表す値が求まります。

水道技術研究センターは、連続揚水試験と水位回復試験の測定結果をもとに、タイス(C.V.Theis)、ヤコブ(Jacob)の解析法で、透水量係数、透水係数、貯留係数などを求めるとしています。

水理定数は、地下水の流れを計算するための値

水理定数は、帯水層の水の通しやすさや蓄えやすさを表す値で、地下水の流れを計算するときに使います。

内閣官房の「地下水の基礎」は、地層の水の通りやすさを透水係数として評価すると説明しています。さく井協会の施工指針は、揚水試験の解析項目として、限界揚水量・適正揚水量・透水係数・貯留係数などの水理定数を求め、あわせて水位の安定性(長い目で見た予測)と既存の井戸への干渉をつかむとしています。

タイス法は曲線を重ね、ヤコブ法は直線で読む

水理定数を求める代表的な読み方は、標準の曲線に測った結果を重ねるタイス法と、直線の傾きから読むヤコブ法の2つです。

東京ソイルリサーチの技術資料は、代表的な整理のしかたとして、曲線一致法(タイスの方法)と直線勾配法(ヤコブやティームの方法)を挙げ、水位が時間で変わっていく状態(非定常)か、落ち着いた状態(定常)かで使い分けるとしています。曲線一致法は、測った水位の下がり方を標準の曲線に重ね、最もよく合う位置から透水量係数と貯留係数を読み取ります。

水位が「安定した」と判断する目安

連続揚水試験で水位が完全に止まるのを待つのは難しいため、測った水位の下がり方が理論の曲線に合ってきたかを見て、終える目安にします。

日本地下水学会の疑問・質問コーナーは、連続揚水試験では水位の安定を見極めるのが難しい場合が多いとし、帯水層の型ごとに終える目安を挙げています。上下を水を通しにくい層で挟まれた帯水層では、時間と水位の下がり方の曲線が理論の曲線に一致したと判断できたとき、としています。回答者個人の見解と断ったうえでの目安です。

測る間隔は、くみ始めほど細かく

連続揚水試験と水位回復試験では、水位が大きく動くくみ始めと止めた直後ほど細かく、時間がたつほど間隔を広げて水位を測ります。

くみ始め(止めてから)の時間測る間隔
0分〜10分2分ごと
10分〜60分5分ごと
60分〜120分10分ごと
120分〜300分30分ごと
300分以降60分ごと

表3 連続揚水試験・水位回復試験で水位を測る間隔(全国さく井協会「さく井工事施工指針(2021年版)」表-7 をもとに作成)

さく井協会の施工指針は、揚水試験で水位・水量・水温・電気伝導度などを測る間隔を、この表によるとしています。

揚水試験にかかる時間と、試験中に確かめること

揚水試験は、国の標準仕様書どおりなら試験だけで1日を超え、資料で目安が違うので、時間は仕様書で確かめます。

標準仕様書の値で数えると、試験だけで1日を超える

当社の計算では、制約がない場合の標準仕様書の値で数えると、連続揚水試験と水位回復試験だけで25時間以上かかります。

標準仕様書は、揚水時間に制約がない場合の連続揚水試験を24時間以上、水位回復試験を1時間以上としており、足すと25時間以上です。ここに予備揚水試験と段階揚水試験の時間が加わります。段階揚水試験は、時間に制約がある場合でも各段階最長90分なので、5段階で行うと最長7時間半になります(当社の計算)。

資料によって、時間の目安は違う

各段階や連続揚水試験の時間は、資料によって目安が違い、どれか1つが全国一律の決まりというわけではありません。

水道技術研究センターの資料は、段階揚水試験の各段階を原則1時間、連続揚水試験を8〜12時間連続としています。日本地下水学会の回答は、段階揚水試験の各段階を1〜2時間程度とするのが一般的としています。民間の工事では、何時間測るかを契約の前に仕様書で確かめます。

水位と量のほかに、砂・水温・電気伝導度も測る

揚水試験では、水位とくむ量のほかに、くんだ水に混じる砂の量(揚砂量)、水温、電気伝導度も測ります。

標準仕様書は、段階揚水試験の各段階で揚砂量を測ると定めています。さく井協会の施工指針は、揚水試験の測定項目として、自然水位・揚水水位・揚水量・水温・電気伝導度・揚砂量を挙げています。飲み水に使う井戸の水質は、揚水試験とは別に水質試験で確かめます。

近くの井戸への影響(干渉)も見る

連続揚水試験では、自分の井戸の水位だけでなく、近くにある既存の井戸の水位への影響(干渉)も確かめます。

さく井協会の施工指針は、連続揚水試験で水位の安定性と既存の井戸との干渉を測るとしています。地下水学会誌の解説も、地下水を使う井戸では、単独の井戸で続けられる適正揚水流量の検討とあわせて、揚水が周りの帯水層に及ぼす影響を評価することが必要だとしています。

揚水試験と地下水揚水の規制|届出に結果を付ける自治体もある

地下水の揚水は、地域によって法律と条例で規制されていて、自治体によっては井戸の届出に揚水試験の報告書を付けるよう求めています。

地下水の採取の規制には全国一律の法律がなく、地域ごとに決まりが違います。届出と規制の全体はさく井工事の届出と規制と地下水の採取の規制で書いています。ここでは、揚水試験の結果や揚水量が規制の中でどう使われるかを、東京都の例で書きます。

決まり対象の地域対象の井戸揚水試験・揚水量との関係
工業用水法板橋区・足立区・北区・江戸川区・葛飾区・江東区・墨田区・荒川区製造業・電気供給業・ガス供給業・熱供給業に使う、揚水機の吐出口断面積6cm²超の井戸揚水量の報告が要る
ビル用水法23区冷暖房設備・水洗便所・洗車設備・公衆浴場(浴室150m²超)に使う、吐出口断面積6cm²超の井戸揚水量の報告が要る
東京都環境確保条例島しょ・奥多摩町・檜原村を除く都内全域動力を使う全ての揚水施設(家庭用は300W超のものだけ)揚水量の報告が要る。町田市は設置の届出に揚水試験報告書(さく井後に提出)を求める

表4 東京都の地下水揚水の規制と、揚水試験・揚水量との関係(東京都環境局「地下水揚水規制のあらまし」(2026年3月25日更新)、町田市「揚水施設(井戸)の届出」をもとに作成。2026年11月7日に確認)

地下水の揚水は、地域ごとに法律と条例で規制されている

地下水揚水とは井戸で地下水をくみ上げることで、地盤沈下を防ぐため、地域ごとに法律と条例で規制されています。

東京都環境局は、奥多摩町・檜原村・島しょを除く都内全域で、工業用水法、ビル用水法、東京都環境確保条例によって地下水の揚水が規制され、揚水する際には揚水量を記録して自治体へ報告しなければならないとしています。熊本県の条例のように、一定の規模を超える揚水設備に許可の申請や届出を求める地域もあります(菊池市の案内)。

町田市は、井戸の届出に揚水試験報告書を付ける

東京都町田市は、井戸(揚水施設)の設置の届出の添付書類として、揚水試験報告書を井戸を掘ったあとに出すよう求めています。

町田市の案内は、地下水揚水施設の設置(変更)届出書を工事着工日の30日前までに出し、添付書類として、地質柱状図・電気検層図と揚水試験報告書を、さく井後に提出するとしています。工場に当たる場合は60日前まで、指定作業場に当たる場合は30日前までに、認可申請などの手続きも要ります。栃木県の指導要綱も、揚水施設の設置工事を始める30日前までの届出を求めています。届出の時期と書類は自治体ごとに違います。

揚水量を毎年報告する地域もある

規制の対象になる井戸は、掘ったあとも、くんだ水の量を記録して毎年報告する地域があります。

東京都立川市は、環境確保条例の対象の井戸について、毎年1月から12月までの各月の揚水量と水位などを記録し、翌年の1〜2月に報告書を出すよう求めています。

揚水試験の結果を施設の井戸でどう使うか|ポンプ・報告書・洗浄の目安

揚水試験の結果は、ポンプの大きさと毎日くむ量を決め、届出に付け、何年かたったあとに井戸の状態を比べるための記録として使います。

どの場面で使われるかを知っておくと、業者から受け取る書類と、あとで比べるべき値が分かります。

使う場面使う値資料
ポンプを選ぶ揚水試験の結果と、計画揚水量さく井協会の施工指針
毎日くむ量の上限を決める適正揚水量標準仕様書・水道技術研究センター
届出・報告揚水試験報告書、揚水量の記録町田市・東京都・立川市
井戸の洗浄(改修)を判断する比湧出量(完成時との比較)さく井協会の施工指針
当社の地下水飲料化で本契約へ進むか決めるくみ上げられる水量と、原水の水質当社サイト

表5 揚水試験の結果の使い道(当社の整理)。全国さく井協会「さく井工事施工指針(2021年版)」、国土交通省の標準仕様書、水道技術研究センター、町田市・東京都・立川市の案内、当社サイトの「よくある質問」をもとに作成

ポンプの大きさと、計画揚水量を決める

井戸に据えるポンプは、揚水試験の結果と、施設で必要な水の量(計画揚水量)をもとに選びます。

さく井協会の施工指針は、ポンプを、揚水試験の結果と計画揚水量、揚水管の長さ、地上の揚程などから選ぶとしています。当社の整理では、使いたい量が適正揚水量を超えるときは、ポンプを大きくせず、井戸を増やせるか、水道と組み合わせるかを検討します。水が足りないときの考え方は井戸掘削とは、ポンプの点検は給水ポンプの点検と交換の目安で書いています。

報告書を受け取り、なくさずに保管する

揚水試験の結果は報告書(揚水試験成績書)として受け取り、井戸を使っている間はなくさずに保管します。

標準仕様書は、さく井工事の報告書に、総合柱状図、施工地点の位置図、水質試験成績書とともに揚水試験成績書を含めるとしています。さく井協会の施工指針は、報告書に揚水試験の測定記録と解析結果(限界揚水量・適正揚水量・透水係数・貯留係数など)を載せ、完成時の資料をなくさないよう保管するとしています。水道技術研究センターも、完成時の試験は将来の改修のときの重要なデータになるとしています。

比湧出量が完成時の8割を下回ったら、洗浄を考える

井戸は目詰まりで能力が下がるため、完成時と同じ条件で比湧出量を測り、80%以下なら洗浄を考えます。

さく井協会の施工指針は、適正揚水量における比湧出量が完成時の80%以下になったときに、洗浄作業を行うことが望ましいとしています。地下水学会誌の解説は、限界・適正揚水量や比湧出量は同じ井戸でも一定ではなく、目詰まりなどで年々下がっていくのがふつうで、洗浄で一時的に戻せても、効果は年々小さくなることが多いとしています。洗浄の工法と費用は井戸工事の種類と費用の目安で書いています。

当社の地下水飲料化では、揚水試験の結果を見てから本契約に進む

当社が代理店を務める地下水飲料化では、揚水試験と原水の水質検査で水量と水質を確かめてから本契約に進みます。

当社サイトのよくある質問の表記では、仮契約(水源調査承諾書と契約案の確認書)にもとづいて、井戸の掘削と揚水試験、原水の水質検査を行います。掘削は、上場企業である供給事業者が契約する井戸業者が行います。規制の条例が無い地域でも、揚水試験の結果を尊重して適正にくみ上げます。飲み水として配るときの専用水道の届出は、導入する施設が設置者になります。流れは導入の流れ、仕組みは事業者とシステムで説明しています。

施設の水を、井戸の地下水でどこまでまかなえるか確かめる

当社は、水道の使用量と受水槽の状況から、供給事業者のシステム(2025年4月現在、全国66地点で稼働)を施設に置けるかを判定します。当てはまらない施設には、その旨をはっきりお伝えします。

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揚水試験についてのよくある質問

揚水試験について、よく聞かれる質問に答えます。

Q. 揚水試験と現場透水試験は、どう違いますか

A. 使う井戸の本数と、分かる範囲が違います。内閣官房の「地下水の基礎」は、1本のボーリングで行う単孔式現場透水試験は、ボーリングの近くの局所的な透水係数しか得られず、水を通しやすい砂礫層や礫層には本来適用できないと説明しています。揚水試験は、試験した区間の帯水層の平均的な透水性を評価でき、砂礫層や礫層にも使えます。

Q. 揚水試験のやり方は、規格で決まっていますか

A. 決まっています。地盤工学会は「揚水試験方法(JGS 1315)」を基準として定めています。公共の建物の工事では、国土交通省の公共建築工事標準仕様書が4つの試験の手順と時間を定め、揚水量の測り方は JIS B 8302「ポンプ吐出し量測定方法」によるとしています。民間の工事では、どの基準によるかを仕様書で確かめます。

Q. 建設工事の揚水試験と、井戸の揚水試験は同じですか

A. 試験のやり方は同じですが、結果の使い方が違います。東京ソイルリサーチの技術資料は、地下を掘る工事で地下水を抜く計画(水替え計画)を立てるために、揚水試験で透水量係数や貯留係数を求めるとしています。地下水学会誌の解説は、水位を下げる井戸と地下水を使う井戸とで、検討することが違うとしています。

Q. 古い井戸でも、揚水試験をしたほうがよいですか

A. 改修の前と後に行うのが勧められています。さく井協会の施工指針は、改修工事の前にまず段階揚水試験を行って完成時や前回の改修時のデータと比べ、改修のあとにも段階揚水試験を行って、井戸の損失や比湧出量を数字で評価するとしています。

Q. 揚水試験でくみ上げた水は、どこへ流しますか

A. 関係する法令に従って処理します。国の標準仕様書は、掘っているときの泥水や、仕上げ・揚水試験のときの排水は、関係法令に従い適切に処理するとしています。さく井協会の施工指針は、掘る前の調査で、水質汚濁防止法にもとづく排水計画と排水先の同意を、関係官庁と協議するとしています。

参考情報

省庁・自治体・団体の資料は2026年11月7日に確認しました。

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