工場のユーティリティコストとは|電気・蒸気・水・圧縮空気の内訳と原価での扱い、水の費用の下げ方

工場のユーティリティコストとは|電気・蒸気・水・圧縮空気の内訳と原価での扱い、水の費用の下げ方

ユーティリティコストとは、工場の生産を支える電気・蒸気・水・圧縮空気・ガスなどの用役をまかなう費用のことです。

原料のように製品に残るものではありませんが、止まれば生産も止まり、値上がりすれば製品の原価を押し上げます。この記事では、工場で設備や総務を担当する方に向けて、ユーティリティの種類とつくる設備、原価計算での扱い、内訳の見方、費用が上がった理由、下げ方を、国の統計と公的な資料から整理します。後半では、工場の水の費用がどこで効いているかを、使い道・水源・単価に分けて見ます。

この記事でわかること

  • ユーティリティは工程を支える用役:電気、蒸気、冷却水、純水、圧縮空気、窒素などで、外から買うものと、工場の設備でつくるものがあります。
  • 原価では「経費」に入る:原価計算基準は、電力料などの消費量を計量できる経費を実際の消費量で計算し、動力部などの補助部門の費用を製造部門へ配るよう定めています。
  • 値上がりが続いている:産業用の電気料金の平均単価は、2010年度の14.33円から2023年度は24.89円になりました(資源エネルギー庁の資料、1kWhあたり)。工業用水道と水道の料金改定も続いています。
  • 工場の水は冷却が中心で、4分の1は井戸水:回して使う水も含めた使用量の78.2%が冷却・温調用(2014年)、新しく取る淡水の23.2%が井戸水です(2024年、従業者30人以上)。
  • 下げ方は種類ごとに違う:まず設備ごとに使う量を測り、圧縮空気や蒸気の漏れを止め、水は水源と契約を見直します。
目次

ユーティリティコストとは|工場の電気・蒸気・水・空気をまかなう費用

ユーティリティコストは、製品をつくる工程を動かすための電気・燃料・水と、それを工場で変えた蒸気や圧縮空気の費用です。

「ユーティリティ」には法令やJISの定義は見当たらず、工場で働く人のあいだの呼び方です。ユーティリティ費、用役費とも呼ばれます。この記事では、工場の生産設備に共通して供給するエネルギーと流体をユーティリティと呼び、その購入とつくる設備の運転・維持にかかる費用をユーティリティコストと呼びます。

「ユーティリティ」は工程を支える用役のこと

工場のユーティリティは、製品の材料にはならず、工程の機械や作業に共通して供給される働きのことです。

原価計算基準は、動力部や修繕部のように製品の生産に直接かかわらず、「自己の製品又は用役を製造部門に提供する」部門を補助経営部門と呼んでいます。工場で電気や蒸気を送る部署が「用役」の担当と呼ばれるのはこの意味です。なお、辞書の「用役」は「社会に役立つ働き」の意味で(デジタル大辞泉)、工場の使い方とは少し違います。

主なユーティリティと、つくる設備

工場の主なユーティリティは、電気・蒸気・冷却水・純水・圧縮空気・ガスの6つで、それぞれに専用の設備があります。

ユーティリティ主な使い道つくる・受ける設備費用のもと
電気機械・照明・空調・ポンプ・コンプレッサ受変電設備、自家発電電気料金(基本料金と電力量料金)
蒸気加熱・殺菌・乾燥・空調ボイラ燃料代、ボイラに入れる水と処理の費用
冷却水・冷水機械や製品の冷却、温度の調整冷却塔、冷凍機・チラー補給する水の代金、ポンプと冷凍機の電気代
純水・工程の水洗浄、原料、ボイラの水純水装置、ろ過・軟水の設備水の代金、薬品・膜などの消耗品
圧縮空気空気で動く機械、吹き付け、搬送コンプレッサ、ドライヤコンプレッサの電気代
ガス燃焼、加熱、不活性の雰囲気ガスの受け入れ設備、窒素の発生装置都市ガス・LPガス・窒素の代金

表1 工場の主なユーティリティと、つくる設備。費用のもとは当社の整理

これらの設備は、まとめてユーティリティ設備と呼ばれます。

ユーティリティ設備は「買う」と「つくる」に分かれる

ユーティリティの費用は、外から買う電気・燃料・水と、それを工場の設備で蒸気や圧縮空気に変える段階の2つに分かれます。

工場のユーティリティの流れ買うつくる(補助部門)使う電気電力会社燃料ガス・重油水水道・工水・井戸受変電設備電気を配るボイラ蒸気コンプレッサ圧縮空気冷却塔・冷凍機冷却水・冷水純水装置純水・工程の水製造部門の工程機械・加熱・冷却・洗浄電気・蒸気・空気・水つくる段階の費用(電気・燃料・修繕・減価償却)は、動力部などの補助部門に集めて製造部門へ配る(原価計算基準 一六・一八)

原価計算基準と、工場の主なユーティリティ設備をもとに当社で作成

つくる段階では、設備を動かす電気と燃料、点検と修理、減価償却がかかります。蒸気1トンや圧縮空気1立方メートルの値段は請求書に出ないので、買った量とつくった量の両方を測って出します。

製品の価格改定の理由にも挙がる

ユーティリティコストの上昇は、企業が製品の値上げを告げる発表の中で、理由として挙げられることがあります。

グンゼは2022年3月29日の発表で、「エネルギーコスト、物流費、用役費、副資材費などユーティリティコストが上昇しており」として、プラスチックフィルムなどの価格を4月15日出荷分から改定しました。カネカも2023年3月7日に「ユーティリティコストなどの諸費用が大幅に上昇」として、樹脂改質剤の価格を4月1日出荷分から改定しています。

ユーティリティコストは原価のどこに入るか|製造経費と補助部門

ユーティリティコストは、製造原価の材料費・労務費・経費のうち、経費に入り、補助部門を通して製品に配られます。

製造原価の計算の基本は、1962年に大蔵省企業会計審議会が公表した原価計算基準です。条文はウィキブックスの転載と日本公認会計士協会の解説で確かめました。

製造原価のうち「経費」に入る

原価計算基準の分け方では、電力料や水の購入費は製造原価の材料費・労務費・経費のうち「経費」に入ります。

原価計算基準の八は、経費を「材料費、労務費以外の原価要素」とし、減価償却費、賃借料、修繕料、電力料、旅費交通費などに細分するとしています。ボイラやコンプレッサの減価償却費と修繕費も経費です。燃料は材料費(燃料費)として扱う会社もあるので、自社の勘定科目の決まりを先に確かめます。

電力料・ガス代・水道料は使った量で計算する

電力料やガス代、水道料のように、メーターで量を測れる経費は、その月に実際に使った量で計算します。

原価計算基準の十三は、経費を原則としてその期間の実際の発生額で計算し、減価償却費や賃借料などは月割りで、「消費量を計量できる経費については、その実際消費量に基づいて計算する」と定めています。会計の教科書はこれを「測定経費」と呼ぶことがありますが、基準の条文にこの言葉は出てきません。

動力部などの補助部門に集めて製造部門へ配る

ボイラやコンプレッサを持つ工場では、その費用を動力部などの補助部門に集め、使った割合で製造部門へ配ります。

原価計算基準の一六は、補助経営部門の例として動力部・修繕部・運搬部・工具製作部・検査部を挙げています。一八は、補助部門の費用を直接配賦法、階梯式配賦法、相互配賦法などで、適当な配賦基準によって製造部門へ配ると定めています。蒸気や圧縮空気は、つくった量を製造部門ごとに測れれば、その量で配るのが基本です。

配り方で改善の効果が見えるかが決まる

ユーティリティコストを床面積や生産量で一律に配ると、どの工程がどれだけ使っているかが見えず、削っても効果が数字に出ません。

製造部門ごとにメーターを付けて使った量で配れば、漏れを止めた工程の費用が下がったことが原価に出ます。削減の前に、配り方を「使った量」に近づけておきます。

工場ユーティリティの内訳|電気と燃料が大きく、水は分かれて見えにくい

工場ユーティリティの費用の内訳は業種と設備で大きく違い、公的な平均の内訳は見当たらないため、工場ごとに測って出します。

エネルギー白書2024によると、産業と業務をあわせた企業・事業所他部門は最終エネルギー消費の61.3%(2022年度)を占め、その中で製造業がもっとも大きい部門です。製造業のエネルギー消費は1973年度と比べて約0.8倍に減り、その間に生産は約1.5倍に増えました。

電気は設備ごとに使い方が違う

工場の電気代は生産機械・空調・ポンプ・コンプレッサなど設備ごとに中身が違い、請求の総額では減らす先が分かりません。

中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、エアーコンプレッサーの消費電力が工場の全消費電力量の10〜30%を占めると説明しています。空気で動く機械や吹き付けの多い工場では、圧縮空気が電気代の大きな部分を占めることになります。

蒸気は燃料と水の両方の費用がかかる

蒸気の費用には、ボイラで燃やす燃料のほか、ボイラに入れる水の代金と、その水を軟水にする処理の費用もかかります。

蒸気は使ったあと冷えて水(ドレン)に戻ります。このドレンをボイラに戻せば、水の補給と温め直しの燃料が少なくて済みます。戻さずに捨てる工場では、その分の水と燃料を毎回払っていることになります。

水の費用は取る・使う・捨てるの3か所に分かれる

工場の水の費用は、水を取るとき、工場の中で使うとき、捨てるときの3か所に分かれてかかるため、水道の請求書だけでは全体が見えません。

工場の水の費用がかかる3か所取る工業用水道・上水道の料金井戸の揚水の電気代・処理費使う冷却塔・純水装置・ポンプの電気代と薬品代捨てる下水道使用料自社の排水処理の費用井戸水でも、公共下水道に流す分は下水道使用料がかかる水1立方メートルあたりの本当の費用は、3か所の費用を足して出す。水道の請求書だけでは全体が見えない

工業用水道・上水道の料金の仕組みと、神戸市・静岡市の下水道使用料の算定方法をもとに当社で作成

水の費用は電気・薬品・下水道の勘定に散らばるので、水1立方メートルあたりの本当の費用は、3か所を足さないと分かりません。

内訳は工場ごとに測るしかない

工場のユーティリティコストの内訳は、業種・設備・水源で大きく変わるので、他社の平均ではなく自社のメーターで出します。

手順は、電気・燃料・水の請求額を1年分そろえ、ボイラ・コンプレッサ・冷凍機・ポンプなど大きな設備の使用量を測って割り振ることです。

工場の水はどこに使われるか|冷却が8割、4分の1は井戸水

工場の水は回して使う分を含め8割近くが冷却用で(2014年)、新しく取る淡水の約4分の1は井戸水です(2024年)。

工場の水の統計には、新しく取る淡水(回収水を除く)の量と、回して使う水も含めた使用量の2つがあり、母集団が違います。用途別は使用量、水源別は新しく取る淡水で数えています。工業用水の定義や工業用水道の料金表は、工業用水とは|上水道との違い、料金の仕組み、飲めない理由までで詳しく説明しています。

用途の8割近くは冷却・温調

経済産業省の工業統計(2014年、従業者30人以上)では、回して使う水も含めた使用量の78.2%が冷却用水・温調用水でした。

区分項目割合
用途別(回して使う水も含めた使用量・2014年)冷却用水・温調用水78.2%
同上製品処理用水・洗じょう用水16.3%
同上ボイラ用水1.3%
同上原料用水0.6%
同上その他(飲み水・雑用水を含む)3.5%
水源別(新しく取る淡水・2024年)工業用水道42.7%
同上井戸水23.2%
同上上水道8.6%
同上その他の淡水(川の水など)25.5%

表2 工場の水の用途と水源(従業者30人以上の事業所)。用途別は経済産業省「工業統計調査 用地・用水編」(2014年)、水源別は経済産業省「経済構造実態調査」(2024年)から作成。用途別の調査は2014年が最新

用途別は2014年より後の全国の値が見当たらないため、今の割合として言い換えることはできません。ただ、用途の中心が冷却であることは、2012年の集計(工業用水の記事で紹介)とも変わっていません。

水源は工業用水道が4割、井戸水が4分の1

2024年の経済構造実態調査では、製造業が新しく取った淡水の42.7%が工業用水道、23.2%が井戸水でした。

淡水の量は1日あたり約2,305万立方メートルです。

経済産業省は2023年実績の淡水を1日あたり23.9百万立方メートルとしており、規模は同じです。上水道は8.6%と小さくても単価が高いので、費用では無視できません(次の章)。

2015年は使った水の8割近くを回して使っていた

工場は冷却に使った水を冷却塔で冷やして何度も使い、使用量のうち回して使った水の割合(回収率)は2015年に77.9%でした。

国土交通省「令和6年版 日本の水資源の現況」によると、回収率は化学工業と鉄鋼業で80〜90%ほど、パルプ・紙は近年40%ほどです。同書によると、回収水の統計は2016年以降、5年に1度の経済センサスでの集計に移りました。調査の仕組みが変わったので、2015年の値を今の割合として読むことはできません。工場ごとに見れば、回収率を上げると新しく取る水が減り、水の購入費と排水の費用の両方が下がります。

業種で使い方と水源が違う

水を多く取る業種はパルプ・紙、化学、鉄鋼で、食料品や飲料の工場は井戸水に頼る割合が半分を超えます。

経済産業省は、淡水の水源別用水量の多い業種をパルプ・紙(24%)、化学(21%)、鉄鋼(15%)としています(2023年実績)。2024年の調査で業種ごとの井戸水の割合を見ると、食料品は50%、飲料・たばこ・飼料は65%で、鉄鋼の3%、化学の15%とは大きく違います。食料品では原料・製品処理・洗浄の水が多く(2014年の使用量で冷却・温調42%、製品処理・洗じょう39%)、水の質が製品の質に直結します。

水の費用の決まり方|水源ごとに単価と仕組みが違う

工場の水の費用は、工業用水道・上水道・井戸水のどれから取るかで、1立方メートルの単価も料金の仕組みも大きく変わります。

水源単価の目安料金の仕組み注意すること
工業用水道全国平均23.00円/m³(2023年度・基本料金の加重平均)約8割の事業が責任水量制。契約した水量の分を、使わなくても払う飲み水には使えない。契約を超えた分は割高。引ける地域が限られる
上水道供給単価の全国平均173.68円/m³(令和5年度・法適用の事業)口径で決まる基本料金と、使うほど単価が上がる従量料金が多い単価が高い。値上げが各地で続く
井戸水揚水の電気代と処理の費用(工場の条件で変わる)水道局への支払いは無い。井戸と設備は自分で持つか借りるくみ上げの規制がある地域がある。飲み水にするなら水質の管理と届出
排水(共通)下水道使用料か、自社の排水処理の費用下水道使用料は、使った水の量をもとに自治体の料金表で計算井戸水でも公共下水道に流す分はかかる

表3 水源ごとの単価と料金の仕組み。国土交通省「日本の水資源の現況」、経済産業省の工業用水道の説明資料、総務省の地方公営企業の決算、神戸市・静岡市・小山市の公式ページから作成

工業用水道の23.00円は基本料金の平均で、上水道の173.68円は使った量あたりの平均なので、計算の仕方が違い、そのまま割り算で比べることはできません。それでも、上水道の水は工業用水道の水より1桁高い単価だと分かります。

工業用水道は単価が安いが、契約の水量を払う

工業用水道は全国平均23.00円/m³(2023年度)と単価が安い一方、約8割の事業が責任水量制をとっています。

23.00円は国土交通省の集計です。

責任水量制は、実際に使った量にかかわらず、契約した水量から料金を計算する仕組みです(経済産業省の説明資料)。生産を減らしても料金は下がらず、契約を超えて使った分には基本料金より高い単価がかかります。

上水道は単価が高く、使うほど単価が上がる

上水道の供給単価は全国平均173.68円/m³で、工場が飲み水や食品の工程に使う上水道は、工業用水道より単価が高くなります。

173.68円は総務省の令和5年度の決算(法適用の事業)で、料金の収入を料金の対象になった水量で割った平均です。工場が実際に払う単価は、その地域の水道局の料金表で決まります。

東京都23区の料金表は、口径で決まる基本料金に、使う量が増えるほど1立方メートルの単価が上がる従量料金を足す形です(表示は平成17年1月1日から適用)。このような料金表では、使う量の多い工場ほど高い段階の単価で払う量が増えます。水道料金の値上げの理由と各地の改定例は、水道料金の値上げ|理由と自治体の改定例、いつから上がるか、施設の水道代の抑え方にまとめています。

井戸水は電気代と処理費がかかり、規制もある

井戸水は水道局への支払いが無い代わりに、くみ上げるポンプの電気代と、水質に合わせた処理の費用、井戸と設備の維持費がかかります。

地盤沈下が起きた地域では、工業用水法や自治体の条例で地下水のくみ上げが制限されています。工程の水だけでなく社員の飲み水にも使うなら、水道法の水質基準を満たす処理と検査が要り、規模によっては専用水道の手続きがかかります。井戸水の性質と工場での使い方は、井水とは|井戸水との違いと、施設の井水設備・処理・水質検査までを参照してください。

排水には下水道使用料か処理費がかかる

工場の排水は、公共下水道に流せば下水道使用料が、川や海に流すなら自社の排水処理設備の費用がかかり、どちらも水の費用の一部です。

下水道使用料は、使った水の量を下水道に流した量とみなして計算する自治体が多く、井戸水の分も対象です。神戸市や静岡市は、事業所に井戸水の量を測るメーターを付けてもらい、水道水と合わせた量で計算しています。

ユーティリティコストが上がっている理由

ユーティリティコストが上がっているのは、電気料金が大きく上がり、工業用水道と水道の料金も各地で改定されたためです。

項目変化出典
産業用の電気料金の平均単価(大手10社)2010年度14.33円→2020年度17.76円→2022年度27.55円→2023年度24.89円(1kWhあたり)資源エネルギー庁の資料(2024年12月)
工業用水道(埼玉県)32年ぶりの改定で、基本料金の単価を22.53円から30.48円へ(35.3%)埼玉県企業局
水道(名古屋市)水道10.0%・下水道11.5%の改定(令和7年10月分から)名古屋市上下水道局
水道(千葉県営水道)平均18.6%の改定(令和8年4月1日以降の使用分から)千葉県企業局

表4 ユーティリティの料金の上昇。各機関の公式資料から作成(2026年10月30日確認)。電気料金は消費税と再エネ賦課金を含み、2022・2023年度は国の激変緩和対策を含む

産業用の電気料金は2010年度の約1.7倍

産業用の電気料金の平均単価は、2010年度の14.33円から2023年度は24.89円になりました(資源エネルギー庁)。

2022年度は27.55円まで上がり、2023年度は国の激変緩和対策もあって下がりましたが、2010年度の約1.7倍です。数字は大手電力10社の産業用の平均で、高圧・特別高圧ごとの値ではありません。電気はコンプレッサや冷凍機、ポンプを通して水や圧縮空気の費用も押し上げます。

工業用水道と水道の改定が続いている

工業用水道と水道は、施設の老朽化と電気・物価の上昇を理由に、各地で料金を上げています。

埼玉県は工業用水道の料金を32年ぶりに35.3%上げ、令和7年5月検針分から適用しました。県は「施設の老朽化や電気料金及び物価高騰の影響により、維持管理費が大きく増加」したと説明しています。水道でも、名古屋市が令和7年10月分から、千葉県営水道が令和8年4月から料金を改定しました。上水道の改定は、工場の飲み水や食品の工程の水の費用に直接響きます。

企業は製品価格に転嫁し始めている

ユーティリティコストの上昇は社内の努力で吸収しきれず、製品の価格改定の理由として公表する企業が出ています。

カネカは2023年3月の発表で、ユーティリティコストなどの上昇が「企業努力で吸収できる範囲を大きく超えており」と書いています。取引先に値上げを説明するときも、どのユーティリティがどれだけ上がったかを自社の数字で示せることが土台になります。

ユーティリティコストの下げ方|測る・漏れを止める・設備・契約

ユーティリティコストは、使う量を設備ごとに測ってから、漏れを止め、設備を見直し、最後に料金の契約と水源を見直す順で下げます。

下げ方対象効く費用先に確かめること
設備ごとに測る(見える化)すべて削る先が分かる。配り方が正しくなるメーターの有無、測れていない設備
漏れを止める圧縮空気、蒸気、水電気代、燃料代、水の代金休日に止めたときの圧力の下がり方、トラップの点検
圧力と温度を下げる圧縮空気、蒸気、冷水電気代、燃料代工程が必要とする最低の圧力・温度
回して使う冷却水、ドレン、洗浄の水水の代金、排水の費用、燃料代水質の悪化、配管の改造の範囲
契約と単価を見直す電気、工業用水道、上水道基本料金、契約水量、単価の段階実際の使用量と契約の差
水源を見直す上水道の分上水道の従量料金井戸の規制、水質、使用量

表5 ユーティリティコストの下げ方の比較。中小企業基盤整備機構・省エネルギーセンターの資料と当社の整理

まず使う量を設備ごとに測る

ユーティリティコストを下げる最初の手は、請求書の総額ではなく、ボイラやコンプレッサなど設備ごとの使用量を測ることです。

どこでどれだけ使っているかが分からないまま設備を替えると、効果の小さい所にお金をかけることになります。測った量は補助部門の費用の配り方にも使え、削った効果が工程の原価に出ます。

圧縮空気と蒸気の漏れを止める

圧縮空気と蒸気は配管や継ぎ目から漏れやすく、漏れた分も電気代と燃料代を払ってつくっているので、止めるだけで費用が下がります。

J-Net21は、一般の工場では圧縮空気の漏れが20%程度あると言われていると説明し、コンプレッサの吐出圧を0.1MPa下げると理論上約8%の動力を減らせるとしています。省エネルギーセンターの講座資料は、漏れている蒸気トラップを1個交換すると年2万円の削減になる例を示しています(2015年の資料)。休日にコンプレッサを動かしたまま圧力の下がり方を見れば、漏れの量の見当がつきます。

冷却水と洗浄の水を回して使う

冷却水を冷却塔で回して使い、洗浄のすすぎ水を前の工程に戻せば、新しく取る水と捨てる水の両方が減ります。

ただし、回すほど水の中の塩分や汚れが濃くなるので、薬品の注入や一部の入れ替え(ブロー)が要ります。冷却塔や冷凍機のまわりは、ポンプの流量や冷却水の温度の設定でも電気代が変わります。

料金の契約と単価を見直す

電気の契約電力、工業用水道の契約水量、上水道の口径が使用量と合わないと、使わない分の基本料金を払い続けます。

工業用水道の責任水量制では、生産が減ったのに契約水量を据え置くと、使わない水の分を払います。契約水量を減らせるかは事業者ごとの給水規程で決まるので、事業者に確かめます。上水道は、使う量に比べて口径が大きすぎると基本料金が高くなります。

省エネ法の届出の対象か確かめる

エネルギーの使用量が事業者全体で原油換算年1,500キロリットル以上なら、省エネ法の届出と定期報告が要ります。

この事業者を省エネ法では特定事業者と呼びます。

対象かどうかと手続きは、資源エネルギー庁の「特定事業者向け情報」で確かめます。設備ごとに測る仕組みがあれば、毎年の報告にも使えます。

この工場の水の費用は、地下水でどこまで下げられるか

当社は、過去1年の検針票の使用量と従量単価から、工場の上水道の水を地下水に置き換えられる割合と、1年あたりに下がる額の見当をお出しします。当てはまらない工場には、その旨をはっきりお伝えします。

導入できるか診断する

ご相談の段階で費用は発生しません。

水の費用を下げる方法と、当社の地下水飲料化

工場の水の費用は、工業用水道なら契約水量、上水道なら水源、井戸水なら設備の効率と、水源ごとに下げる場所が違います。

工業用水道は契約水量、井戸水は揚水と処理の効率を見直します。単価がもっとも高い上水道の分は、使う量を減らすか、別の水源に置き換えると下がります。

上水道の分を敷地の地下水に置き換える

当社は、工場の敷地の地下水をくみ上げて浄水し、社員の飲み水や生活用水、上水道でまかなっている工程の水として給水します。

置き換えるのは上水道の分で、工業用水道の分ではありません。飲み水と雑用水で配管が分かれている工場では、雑用水の側だけを地下水にする設計もできます。どこまで置き換えられるかは、給水の配管の系統と使用量から判断します。井戸を掘る調査から浄水設備、維持管理まで、費用は当社が負担し、工場の初期費用は0円です。仕組みは工場向けのご案内にまとめています。

置き換えた分の単価は約1割安く、基本料金は残る

地下水に置き換えた分の水の単価は、水道局の従量単価より約1割安く設定しており、置き換えなかった分の水道料金と基本料金は残ります。

当社の給水は水道局の水と併用する形(二元給水)なので、水道局の基本料金はそのまま払います。下がるのは置き換えた分の単価の差で、総額がどれだけ下がるかは、置き換えられる割合で決まります。当社の工場向けの案内では、導入後に受水槽に入る水のうち井戸水が占める割合を、施設の使用量と配管の系統によって50〜90%としています(当社の設計の目安で、施設ごとに試算します)。料金の仕組みは水道コストの削減で説明しています。

下水道使用料と排水の費用は残る

地下水に置き換えても、公共下水道に流す水の下水道使用料は下がりません。

神戸市や静岡市のように、井戸水の量をメーターで測って、水道水と合わせた量で下水道使用料を計算する自治体があります。水の費用のうち排水の分は、取る水を替えても残るので、試算では上水道の従量料金の分だけを比べます。

断水の日にも水源が残る

当社の給水は、水道局の配水管とは別の敷地の地下水を水源にするので、地震や事故で断水した日にも工場に水を送れます。

当社の浄水設備を非常用発電機につないでおけば、停電の間も給水を続けられます。平時は水の費用を下げ、非常時には生産を止めない水源になります。

この工場に、地下水を水源として足せるか

当社は、工場の水の使用量と従量単価、給水の配管と敷地の条件から、地下水を足せるかと、1年あたりに下がる額の見当を判定します。下がらない工場には、その旨をはっきりお伝えします。

導入できるか診断する

ご相談の段階で費用は発生しません。

ユーティリティコストについてのよくある質問

Q. ユーティリティコストと光熱費は同じですか

A. 重なりますが同じではありません。光熱費は電気・ガス・水道の支払いを指す呼び方で、工場のユーティリティコストは、それを蒸気・圧縮空気・冷却水などに変えて工程に送る設備の運転と維持の費用まで含めて言うことが多いです(当社の整理)。

Q. 用役費とユーティリティ費は違いますか

A. 工場では同じ意味で使われています。グンゼの価格改定の発表は、エネルギーコストや物流費と並べて用役費をユーティリティコストの1つに挙げています。辞書の「用役」は「社会に役立つ働き」という広い意味です。

Q. ユーティリティコストは変動費ですか、固定費ですか

A. 両方の部分があります。使った量に比例して増える電力量料金や従量料金は変動費に近く、電気の基本料金、上水道の基本料金、工業用水道の責任水量制で払う契約水量の分、設備の減価償却費は、生産量が減っても下がらない固定費に近い部分です。

Q. 工場で井戸水を使うのに、届出や許可は要りますか

A. 地域と使い方で変わります。地下水のくみ上げを工業用水法や条例で制限している地域では、許可や届出が要ります。井戸水を社員の飲み水にするなら、水道法の水質基準を満たす管理が要り、規模によっては専用水道の手続きがかかります。判定の仕方は専用水道とは|対象の判定、確認申請と届出、水質検査・管理の義務までで説明しています。

Q. 地下水に切り替えると、下水道使用料も下がりますか

A. 下がりません。井戸水でも、公共下水道に流す分は下水道使用料の対象です。神戸市や静岡市は事業所に井戸水のメーターを付けてもらい、水道水と合わせた量で計算しています。

参考情報

国と自治体、企業の資料は2026年10月30日に確認しました(工業用水道の料金・水道料金の改定・下水道使用料は、当社の既存記事のために2026年10月19日と29日に確認したもの)。

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