残留塩素とは、塩素消毒のあと水の中に残っている消毒の効き目のことで、水道法施行規則は蛇口で遊離残留塩素0.1mg/L以上を求めています。
水道と専用水道の設置者は、1日1回以上、蛇口の水の残留塩素を確かめなければなりません。この記事では、残留塩素の基準と国が認める測定方法を一次資料で整理したうえで、毎日測る義務がどの施設にかかるのか、なぜ末端の蛇口で測るのか、残留塩素が下がる原因と0.1mg/Lを割ったときの対応を、国に報告された事故の資料をもとにまとめます。水質検査の全体は水質検査の記事で扱っているので、ここでは残留塩素に関わる部分だけにとどめます。
この記事でわかること
- 下限は水道法の0.1mg/L:水道法施行規則17条は、蛇口で遊離残留塩素0.1mg/L以上(結合残留塩素なら0.4mg/L以上)を求めています。
- 上限は法令になく、目標値が1mg/L以下:国の水質管理目標設定項目の値で、「超えると違法」という基準ではありません。
- 国が認める測定方法は6つ:告示はDPD法や携帯型残留塩素計などの手順を定め、携帯型は0.1mg/L以下まで測れる性能が要件です。
- 毎日測る義務は専用水道と水道事業者にかかる:ビル(特定建築物)は7日以内ごと、受水槽の建物は年1回の検査が法令の頻度です。
- 下がる原因は注入設備・薬液・滞留・水温:環境省の資料には、薬液タンクが空だった例や、末端で測っていなかった例が並んでいます。
残留塩素とは|蛇口まで残す消毒の効き目
残留塩素は、塩素で消毒したあとも水の中に残り、酸化力を持ち続けている塩素のことです。
環境省の水質管理目標設定項目の解説資料は、残留塩素を「塩素処理の結果、水中に残留した有効塩素」と定義しています。入れた塩素のうち、汚れなどと反応して消費された残りが蛇口まで届きます。
遊離残留塩素と結合残留塩素
残留塩素は、次亜塩素酸などの「遊離残留塩素」と、クロラミンのような「結合残留塩素」の2種類に分かれます。
同じ解説資料は、どちらも酸化力を持つとしています。ただし消毒の力は同じではなく、水道法施行規則17条は、蛇口で保つべき量を遊離残留塩素なら0.1mg/L以上、結合残留塩素なら0.4mg/L以上と、結合のほうに4倍の量を求めています。
蛇口まで残すのは、途中の汚れに備えるため
蛇口まで塩素を残すのは、浄水場や井戸を出たあとの配管や受水槽で入り込む汚れに備えるためです。
WHO(世界保健機関)の化学物質の資料は、配水の途中で水を守る保存剤として、1リットルあたり十分の数ミリグラムの残留塩素を持たせて給水するのが通常だとしています。WHOの飲料水水質ガイドライン(第4版)の付属資料は、pH8未満で30分以上接触させたあとに遊離残留塩素0.5mg/L以上、給水する地点で最低0.2mg/Lを目安に挙げています。
残留塩素の基準|下限は0.1mg/L、上限は目標で1mg/L
残留塩素の基準は、水道法施行規則の下限が蛇口で遊離0.1mg/L以上、上限は法令になく目標値1mg/L以下です。
プールや浴場は、水道とは別の衛生基準で0.4mg/L前後を目安にしています。下の表は、数字ごとの規定をまとめたものです。
| 対象 | 残留塩素の値 | 決めている規定 |
|---|---|---|
| 水道の蛇口(下限) | 遊離0.1mg/L以上(結合0.4mg/L以上) | 水道法施行規則17条1項3号 |
| 水道の蛇口(汚染のおそれがある場合) | 遊離0.2mg/L以上(結合1.5mg/L以上) | 水道法施行規則17条1項3号ただし書 |
| ビル(特定建築物)の飲料水 | 遊離0.1ppm(0.1mg/L)以上 | 建築物衛生法施行規則4条1項1号 |
| 水道水の目標値(上限側) | 1mg/L以下 | 水質管理目標設定項目(令和8年4月1日適用) |
| 東京都水道局のおいしさの目標 | 0.1〜0.4mg/L | 東京都水道局「おいしさに関する水質目標」 |
| 遊泳用プール | 遊離0.4mg/L以上、1.0mg/L以下が望ましい | 遊泳用プールの衛生基準(平成19年5月28日 健発第0528003号) |
| 公衆浴場の浴槽水 | 遊離0.4mg/L程度、最大1mg/Lを超えないよう努める | 公衆浴場における衛生等管理要領 |
| WHOの飲料水ガイドライン値 | 5mg/L | WHO 飲料水水質ガイドライン(第4版) |
水道法施行規則、建築物衛生法施行規則、環境省・厚生労働省・東京都水道局の資料、WHOの化学物質の資料をもとに作成
水道法の下限:遊離0.1mg/L以上
水道法施行規則17条は、蛇口の水が遊離残留塩素0.1mg/L以上を保つように塩素消毒することを求めています。
同じ条文のただし書は、病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合や、病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物・物質を多量に含むおそれがある場合に、下限を遊離0.2mg/L(結合1.5mg/L)以上に引き上げています。水道法4条の水質基準も「異常な臭味がないこと」を求めつつ、「消毒による臭味を除く」と書いており、塩素のにおいは基準違反にならない前提になっています。
上限は法令になく、目標値が1mg/L以下
残留塩素の上限は水道法の水質基準にはなく、水質管理目標設定項目の目標値として1mg/L以下が示されているだけです。
環境省の解説資料は、1mg/L程度という目標を「おいしい水の観点から」置いた値としています。同じ資料に載っている「おいしい水の水質要件」は0.4mg/Lです。WHOの飲料水ガイドライン値は5mg/Lで、WHOはこの濃度なら大半の人が塩素の味に気づくとしています。1mg/Lは法令の上限ではないため、超えたことだけで違法にはなりません。
プールと浴場は0.4mg/Lが目安
遊泳用プールと公衆浴場の浴槽水は、どちらも遊離残留塩素0.4mg/L前後を保つよう国の基準や要領が定めています。
遊泳用プールの衛生基準は、遊離残留塩素を0.4mg/L以上、1.0mg/L以下が望ましいとし、毎日午前中1回以上と午後2回以上の測定を求めています。0.4mg/Lを下回ったときは、遊泳を一時中止して塩素を補うよう定めています。公衆浴場の衛生等管理要領は、浴槽水を通常0.4mg/L程度に保ち、最大1mg/Lを超えないよう努めることとしています。
実際の水道水の残留塩素はどのくらいか
日本水道協会の水質分布表(令和5年度)では、給水栓水の年平均値9,151件の76.2%が0.2〜0.4mg/Lの区分です。
0.2〜0.4mg/Lの区分は計6,974件です。下の図は、この記事に出てくる残留塩素の数字を、低いほうから並べたものです。
水道法施行規則、環境省の水質管理目標設定項目と解説資料、厚生労働省のプール・浴場の基準、WHOの資料、日本水道協会 水質分布表(令和5年度)をもとに作成
全国の集計では、7割超が0.2〜0.4mg/Lの区分
水質分布表は給水栓水の年平均値を濃度の区分ごとに数えた集計で、0.2〜0.4mg/Lの区分に7割超が入ります。
区分ごとの件数は、0.2の区分が2,123件、0.3の区分が2,877件、0.4の区分が1,974件です。下限の0.1mg/Lを下回る区分は17件でした。水源が地下水の給水栓4,621件に絞ると、0.2〜0.4mg/Lの区分は計3,795件(82.1%)、0.1mg/L未満は9件です。なお、この表には区分の境目の扱いと、1件が地点を数えたものか系統を数えたものかが書かれていないため、「全国の蛇口の7割」とは読めません。
東京都と大阪市は、0.4mg/L以下に絞っている
東京都水道局は0.1〜0.4mg/Lを目標にし、大阪市水道局は日平均0.2〜0.4mg/Lに入る日の割合を測っています。
東京都水道局は、給水区域の131か所に自動水質計器を置いて残留塩素を監視しています。同局が公表する給水栓の値の目標達成率は、令和6年度が86.6%で、前年度から2.6ポイント下がりました。一部の給水所で追加塩素注入設備の更新工事や故障があり、その間は浄水場出口の濃度を高くしたため、浄水場に近い地域で高く推移したことを理由に挙げています。大阪市水道局の令和5年度の年報では、日平均が0.2〜0.4mg/Lに入った日の割合が全系統で84.6%で、夏(8月)にこの割合が大きく下がる局が多く見られます。
カルキ臭とトリハロメタン
残留塩素が濃いと、カルキ臭が強くなり、金属の腐食やトリハロメタンなどの副生成物が増えます。
環境省の解説資料は、濃度の高い残留塩素は水の味をまずくし、特に緑茶の味を悪くするとしています。また、多すぎると金属などの腐食性を増し、水中のフミン質などと反応してトリハロメタン等を生成するとしています。総トリハロメタンには水質基準があり、0.1mg/L以下です。一方で同じ資料は、水道水程度の残留塩素を含む水を飲んでも、健康上の影響は生じないと考えられているとしています。下限を割らず、入れすぎもしない幅で管理するのが残留塩素の基本です。
残留塩素の測定方法|国が認める方法は6つ
水道法の検査で使える残留塩素の測定方法は、国の告示が定める6つの方法です。
水道法施行規則17条2項は、遊離残留塩素と結合残留塩素の検査方法を「環境大臣が定める」としています。これを受けた告示(平成15年厚生労働省告示第318号。2024年4月から水道の水質は環境省の所管)が、次の6つを定めています。
| 告示の別表 | 方法 | 遊離残留塩素 | 結合残留塩素 | 告示の主な要件 |
|---|---|---|---|---|
| 別表第1 | ジエチル-p-フェニレンジアミン法(DPD法) | 測れる | 測れる | 試料はガラス瓶に採ってすぐ試験。標準比色列は0.05〜2.0mg/L |
| 別表第2 | 電流法 | 測れる | 測れる | 告示の手順どおりに測る |
| 別表第3 | 吸光光度法 | 測れる | 測れる | 告示の手順どおりに測る |
| 別表第4 | 連続自動測定機器による吸光光度法 | 測れる | 対象外 | 定量下限0.05mg/L以下(変動係数10%) |
| 別表第5 | ポーラログラフ法 | 測れる | 対象外 | 告示の手順どおりに測る |
| 別表第6 | 携帯型残留塩素計測定法 | 測れる | 測れる | 定量下限0.1mg/L以下(変動係数20%)、小数点以下2位まで表示 |
水道法施行規則第17条第2項に基づく検査方法の告示(平成15年厚生労働省告示第318号、環境省掲載版)をもとに作成。結合残留塩素は別表第1〜第3・第6のいずれかで測る
DPD法:試薬の色を比色板と比べる
DPD法は、試薬を加えた水の色を標準の色と比べて、遊離残留塩素と結合残留塩素を読み取る方法です。
告示の手順では、リン酸緩衝液とDPD試薬を入れた比色管に検水を加えて50mLにし、混ぜてすぐの色を標準比色列と比べて遊離残留塩素を読みます。続けてヨウ化カリウム約0.5gを加えて溶かし、約2分おいた色で残留塩素の全体を読み、全体から遊離を引いた差を結合残留塩素とします。試料は精製水で洗ったガラス瓶に採り、直ちに試験することとされています。
携帯型残留塩素計:0.1mg/L以下まで測れるもの
携帯型残留塩素計測定法は、発色させた水の色を光で読む測定器を使う方法で、2022年4月に告示に加わりました。
告示は、使える機器を、光電光度計または分光光度計による携帯型残留塩素計で、定量下限値が0.1mg/L以下(変動係数20%)の性能を持ち、小数点以下2位まで表示できるもの、としています。取扱説明書に従って定期的に洗浄し、点検整備することも求めています。要件を満たさない機器で測った値は、告示の方法による値になりません。
連続自動測定機器で、常に見張る
連続自動測定機器による吸光光度法は、配管に取り付けた機器が自動で水を採って測り続ける方法です。
告示は、定量下限値が0.05mg/L以下(変動係数10%)の性能を持つことを求めています。東京都水道局が給水区域の131か所に置いている自動水質計器のように、配水の途中で残留塩素の動きを見張るのに使われます。ただし、機器を置いた地点の値は、その先の末端の蛇口の値と同じではありません。
残留塩素を測る手順|末端の蛇口で、流してから測る
残留塩素は、給水区域でいちばん遠い末端の蛇口で、しばらく水を流してから測ります。
水道法施行規則15条は、水質検査の試料を採る場所を給水栓(蛇口)を原則としています。文部科学省の学校環境衛生管理マニュアルは、日常点検の手順例として、末端の給水栓で2〜3分水を流してから採り、DPD試薬を加えてすぐ比色する流れを示しています。下の図は、この手順と、検出されなかったときの進め方をまとめたものです。
水道法施行規則、国の事務連絡(2025年5月14日)、文部科学省「学校環境衛生管理マニュアル」の手順例、飲用井戸等衛生対策要領をもとに作成
測る場所は、いちばん遠い蛇口
いちばん遠い蛇口で測るのは、配管や受水槽を通るあいだに塩素が消費され、末端で下限を割ることがあるためです。
国は2025年5月14日の事務連絡で、毎日検査は原則として末端給水栓で行うべきだとし、末端で測っていなかったことが異常の早期発見を妨げた原因の1つだと指摘しています。
検出されないときは、溜まり水を捨てて測り直す
蛇口で遊離残留塩素が検出されないときは、5〜10分ほど水を流して配管の溜まり水を捨ててから、もう一度測ります。
文部科学省のマニュアルはこの手順を示しています。配管の中で長く止まっていた水は、塩素が消費されて検出されないことがあるためです。流したあとも0.1mg/Lに届かなければ、溜まり水ではなく消毒そのものの問題と考え、注入設備の確認に進みます。
記録は5年残す
水道法の水質検査の記録は、検査を行った日から5年間保存しなければなりません。
水道法20条2項が定める保存期間で、専用水道の設置者にも準用されます。毎日の残留塩素の値は、日付・時刻・測った蛇口・値・測った人を残しておくと、値が少しずつ下がっていく傾向に早く気づけます。
残留塩素を毎日測る義務は、どの施設にかかるか
残留塩素を1日1回以上測る法律上の義務がかかるのは、水道事業者と専用水道の設置者です。
ビル(特定建築物)や受水槽の建物、事業所の井戸は、下の表のとおり頻度が違います。
| 施設の区分 | 当てはまる施設 | 残留塩素の確認 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 専用水道 | 自家用の水道で、100人を超える人に居住用の水を供給するもの、または飲用などの水量が1日20m³を超えるもの | 1日1回以上(蛇口で遊離0.1mg/L以上) | 水道法3条6項・34条、同法施行規則15条・17条 |
| ビル(特定建築物) | 延べ面積3,000m²以上の建物(学校は8,000m²以上) | 7日以内ごとに1回(蛇口で遊離0.1mg/L以上) | 建築物衛生法施行規則4条 |
| 簡易専用水道 | 水道水だけを水源とし、受水槽の有効容量が10m³を超える建物 | 法令は年1回以上の検査。東京都は週1回以上の残留塩素の検査を指導 | 水道法3条7項、同法施行規則56条、東京都の案内 |
| 業務用飲用井戸 | 水道法・ビル管理法の対象外で、事業所に飲み水を供給する井戸 | 要領の定期検査は1年以内ごとに1回。項目に残留塩素は無い | 飲用井戸等衛生対策要領 |
水道法、同法施行令・施行規則、建築物衛生法施行規則、厚生労働省「飲用井戸等衛生対策要領」、東京都保健医療局の案内をもとに作成
専用水道:1日1回以上
専用水道の設置者は、水道事業者と同じく、1日1回以上、色・濁りと消毒の残留効果を検査しなければなりません。
水道法34条が水道事業者の水質検査の規定(20条〜22条の2)を専用水道に準用しているためで、蛇口で遊離0.1mg/L以上を保つ規定もかかります。専用水道は、100人を超える人に居住用の水を供給する自家用の水道か、飲用などに使う水量が1日20m³を超えるものです。国土交通省の集計では、専用水道は令和7年3月31日時点で全国8,059か所あります。地下水を飲み水にする病院や工場も、人数か水量がこの線を超えれば専用水道に当たります。
ビル(特定建築物):7日以内ごとに1回
大きなビル(特定建築物)の飲料水は、建築物衛生法施行規則で、遊離残留塩素を7日以内ごとに1回検査します。
対象は延べ面積3,000m²以上(学校は8,000m²以上)の建物です。蛇口で保つ濃さは水道法と同じ遊離0.1ppm(0.1mg/L)以上で、貯水槽の清掃は1年以内ごとに1回です。地下水を水源の全部または一部にする場合は、給水を始める前に水質基準の全項目を検査し、その後も6か月以内ごとなどの定期検査が加わります。
受水槽の建物と、事業所の井戸
水道水をためる受水槽の建物(簡易専用水道)と、法律の対象外の事業所の井戸には、残留塩素を毎日測る法律上の義務はありません。
簡易専用水道は、水道水だけを水源とし、受水槽の有効容量が10m³を超えるものです。法令が求めるのは年1回以上の管理と検査ですが、東京都は残留塩素を週1回以上検査する項目に挙げて指導しています。業務用飲用井戸は、厚生労働省の飲用井戸等衛生対策要領が官公庁・学校・病院・店舗・工場などに飲み水を供給する井戸を指す呼び名で、定期の水質検査は1年以内ごとに1回です。要領の検査項目に残留塩素はありませんが、塩素で消毒して飲み水にしているなら、効き目が切れていないかを確かめられるのは残留塩素だけです。
残留塩素が下がる原因と、0.1mg/Lを割ったときの対応
残留塩素が下がる主な原因は、塩素の注入設備の不具合、薬液の切れや劣化、受水槽や配管での水の滞留、水温の上昇です。
環境省の資料には、令和5年から令和7年12月までに国に報告された、遊離残留塩素が0.1mg/Lを下回るなどの塩素消毒の事故が載っています。対象は上水道から簡易水道・専用水道・受水槽の施設までで、表に並ぶ事故は16件です(件数は当方が表の行数を数えた値で、報告されたものに限られます)。
下がる原因は、注入設備・薬液・滞留・水温
環境省の事故一覧で多い原因は塩素注入設備の不具合で、薬液タンクが空、貯水槽の滞留の例もあります。
配管の誤接続の例も並んでいます。薬液そのものも劣化します。国土交通省と環境省が令和7年10月17日に出した通知は、消毒に使う次亜塩素酸ナトリウムは長く貯めると時間とともに分解して消毒の効果が落ち、水質基準項目の塩素酸が増えることがあり、特に高温でこれが目立つとしています。通知の別紙には、夏場の気温・水温の上昇で塩素濃度が下がり大腸菌が検出された簡易水道の例や、薬品注入設備のホースの詰まりで深井戸の水道が基準値未満になった例が載っています。
測っていないと、気づくのが遅れる
国の事務連絡は、末端で毎日測っていなかったことを、異常を早く見つけられなかった原因の1つとしています。
2025年4月、群馬県の簡易水道では、本来は末端の給水栓で行う毎日検査を、上流の浄水場の自動測定だけで見ていました。有症者は14人で、県が改善を指示し、末端の蛇口で0.1mg/L以上を確かめてから給水を再開しています。2025年8月、秋田県の宿泊施設では、湧き水を消毒する塩素滅菌器の薬剤タンクが空で、営業を始めてから使用水の遊離残留塩素を確かめていませんでした。患者は88人です。2026年4〜5月には、残留塩素が0.1mg/Lを下回っていたのに予備機がなく、保健所が把握したのは定期提出された検査結果を見た約1か月後だった簡易水道の例も報告されています。
割ったときは、測り直し・注入の確認・給水停止の判断
0.1mg/Lを割ったら、流して測り直し、注入設備と薬液を確かめ、健康を害するおそれがあれば給水を止めます。
給水の停止は法令と要領に書かれた対応です。簡易専用水道と特定建築物は、供給する水が人の健康を害するおそれがあると知ったときは直ちに給水を停止し、その水を使うことが危険である旨を関係者に周知するよう、それぞれの施行規則が定めています。飲用井戸等衛生対策要領も、直ちに給水を停止し、利用者に周知するとともに保健所等へ連絡して指示を受けるよう求めています。水道の施設基準は消毒剤の注入設備に予備設備を設けることを求め、千葉県の専用水道のてびきは、事故に備えて必ず予備の消毒薬を用意するよう書いています。
地下水を飲み水にする施設の残留塩素管理
地下水を飲み水にする施設でも塩素消毒は必要で、専用水道に当たれば毎日の残留塩素の確認が義務になります。
水道法には、地下水だからといって塩素消毒をしなくてよいという規定はありません。また、塩素を保っていても防げない病原生物があるため、残留塩素は安全の条件の1つであって、それだけで安全とは言えません。地下水そのものの特徴は地下水のページにまとめています。
地下水でも、塩素が切れれば事故になる
地下水を水源にする施設でも、塩素が切れて集団感染が起きた例が、環境省の資料に載っています。
令和7年、富山県で塩素消毒だけをしていた飲用井戸の水から腸管凝集付着性大腸菌が検出され、患者は60人でした。資料は原因を残留塩素不足としています。国の通知の別紙にも、深井戸を水源にする水道で薬品注入ホースの詰まりから基準値を下回った例があります。全国の集計でも、地下水の給水栓で0.1mg/L未満の区分が9件あります。
塩素では防げない病原生物がある
クリプトスポリジウムとジアルジアは塩素に強い病原生物で、地下水でも混入のおそれがあれば、ろ過か紫外線処理が必要になります。
水道施設の技術的基準を定める省令は、この2つを「耐塩素性病原生物」と呼び、原水に混入するおそれがある場合には、ろ過などの設備か紫外線処理の設備を設けるよう求めています。残留塩素が0.1mg/L以上あっても、これらの病原生物には効きません。地下水を飲み水にするときは、水源の調査で混入のおそれを確かめ、必要な浄水処理を選んだうえで、塩素消毒と毎日の残留塩素の確認を組み合わせます。
当社のサービスで、施設側が担う毎日の確認
当社のサービスで施設側にお願いするのは、水道技術管理者の選任と、毎日の色・濁り・残留塩素の確認です。
浄水設備は24時間監視していて、異常があれば水道水へ自動で切り替わります。そのうえで、蛇口で塩素の効き目が残っているかを毎日確かめるのは、水を使う施設の側でしかできない確認です。導入後の運用の支援は運用支援のページで紹介しています。水質検査の全体の流れは水質検査の記事をご覧ください。
残留塩素についてのよくある質問
Q. 残留塩素は体に悪くありませんか
A. 水道水程度の濃さなら、健康への影響は生じないと考えられています。環境省の解説資料は、水道水程度の残留塩素を含む水を飲んでも中和されるので健康上の影響は生じないとしています。WHOの飲料水ガイドライン値は5mg/Lで、国内の水道の目標値1mg/L以下はそれより低く、においと味の観点から置かれた値です。
Q. 残留塩素を取り除くことはできますか
A. 活性炭で取り除けます。環境省の解説資料も、残留塩素は活性炭により除去できるとしています。ただし、取り除いた水には消毒の効き目が残っていないので、ためておくと細菌が増えるおそれがあります。取り除くなら、飲む直前にして、ためおきはしないようにします。
Q. 市販の測定キットの値は、法定の毎日検査に使えますか
A. 告示の6つの方法のどれかに当たれば使えます。デジタルの携帯型なら、光電光度計または分光光度計による機器で、定量下限値0.1mg/L以下(変動係数20%)の性能を持ち、小数点以下2位まで表示できることが要件です。目で色を比べるキットは、DPD法の手順(試薬・比色列・すぐ試験)に沿っているかを確かめます。迷うときは所管の保健所に確認するのが確実です。
Q. 結合残留塩素で管理してもよいですか
A. 法令上は認められていて、蛇口で結合残留塩素0.4mg/L以上(汚染のおそれがある場合は1.5mg/L以上)を保てば基準を満たします。遊離残留塩素の0.1mg/Lより4倍高い値です。測るときは、DPD法で遊離残留塩素を読んだあとヨウ化カリウムを加えて全体を読み、その差を結合残留塩素とします。
Q. 夏に残留塩素が下がりやすいのはなぜですか
A. 消毒に使う次亜塩素酸ナトリウムが高温で分解しやすく、水温の上昇で塩素濃度が下がった例も国に報告されているためです。国土交通省と環境省の令和7年10月の通知は、薬液が高温で分解して効果が落ちることを注意し、別紙に夏場の塩素濃度の低下で大腸菌が検出された例を載せています。夏は薬液の在庫を短い周期で入れ替え、注入量を見直すことが対策になります。
参考情報
- 水道法、同法施行令・施行規則、水質基準に関する省令、水道施設の技術的基準を定める省令
- 水道法施行規則第17条第2項に基づく遊離残留塩素及び結合残留塩素の検査方法(平成15年厚生労働省告示第318号、環境省掲載版)
- 環境省 水質基準項目と基準値・水質管理目標設定項目と目標値、同 水質管理目標設定項目「残留塩素」の解説資料
- 環境省 塩素消毒に関する事故事例の資料、同 毎日検査の実施についての事務連絡(2025年5月14日)
- 国土交通省・環境省 消毒設備の適切な管理についての通知(令和7年10月17日)と別紙
- 国土交通省 群馬県の簡易水道の事故の資料、同 簡易水道の残留塩素不足の事故の資料、同 専用水道の施設数の集計(令和7年3月31日現在)、同 クリプトスポリジウム等対策の資料
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令・施行規則
- 厚生労働省「飲用井戸等衛生対策要領」「遊泳用プールの衛生基準」「公衆浴場における衛生等管理要領」、食中毒事件の資料(秋田県、2025年8月)
- 文部科学省「学校環境衛生管理マニュアル」
- 日本水道協会「水道統計 水質分布表」(令和5年度)
- 東京都水道局「おいしさに関する水質目標」とよくある質問、東京都保健医療局 貯水槽水道の案内
- 大阪市水道局 水質試験所年報(令和5年度)、同 水質管理目標の達成状況
- 千葉県「専用水道のてびき」
- 国立保健医療科学院「保健医療科学」第70巻第5号
- WHO Chlorine in Drinking-water(化学物質の資料)、Guidelines for Drinking-water Quality 第4版
