地下水とは、地面の下で砂や礫の層のすき間を満たしている水で、日本では水道の水源の約2割を占めています。
この記事では、地下水のある場所と種類、そのまま飲めるかどうか、飲料水にするときにかかる決まり、水質検査の頻度、浄水処理の組み方、くみ上げの規制を、法令と国・自治体の資料で整理します。最後に、施設で地下水を飲料水に使うときの当社の仕組みを書きます。
この記事でわかること
- 地下水は、水道の取水量の22.2%:日本水道協会の集計では、2022年度の上水道と用水供給の取水量のうち、井戸水が18.9%、伏流水が3.3%でした。
- 飲めるかどうかは、水道の水質基準52項目で決まる:2026年4月にPFOS及びPFOAが加わり、51項目から52項目になりました。
- 深い井戸でも、そのまま飲めるとは限らない:環境省の令和6年度の調査では、調べた井戸の5.6%が環境基準を超えていました。
- 人数と水量で、かかる決まりが変わる:100人を超える人に配るか、1日20m³を超えると水道法の専用水道になり、検査と管理者の選任が義務になります。
- くみ上げる量にも決まりがある:国の2つの法律の指定地域と、自治体の条例・要綱400件近くが、地下水の採取を制限しています。
地下水とは|地面の下で、地層のすき間を満たしている水
地下水は、雨や川の水が地面にしみ込み、砂や礫の層のすき間にたまって、ゆっくり流れている水です。
デジタル大辞泉は地下水を「地中の土砂や岩石の隙間・割れ目にある水」とし、日本大百科全書は「地下水面より下にあり、地層の間隙を満たして存在する水」と説明しています。
法律に定義は無く、水循環基本法が「水循環」の一部として扱う
日本の法律に地下水そのものの定義は無く、水循環基本法が地表水と並ぶ水の循環の一部として扱っています。
内閣官房の水循環政策本部は、法律に地下水の定義が無いと説明しています。水循環基本法2条は「水循環」を、水が「地表水又は地下水として河川の流域を中心に循環すること」と定めています。2021年の改正で16条の2が加わり、国と地方公共団体に、地下水の観測、協議の場の設置、採取の制限などの措置を講じる努力義務が置かれました。6条は事業者にも、水を適正に使い、国や自治体の施策に協力する責務を定めています。
帯水層と、不圧地下水・被圧地下水
地下水がたまる砂や礫の層を帯水層といい、上に水を通しにくい層があるかどうかで不圧地下水と被圧地下水に分かれます。
東京都環境局は、水の通りがよい地層を「帯水層」、粘土層のように水を通しにくい地層を「難透水層」と呼んでいます。上に難透水層が無い帯水層の水が不圧地下水、上下を難透水層に挟まれ、大気圧以上の圧力を受けている水が被圧地下水です。
| 項目 | 不圧地下水(自由地下水) | 被圧地下水 |
|---|---|---|
| ある場所 | 上に難透水層が無い、地表に近い帯水層 | 上下を難透水層に挟まれた帯水層 |
| 圧力 | 大気圧だけを受ける | 大気圧以上の圧力を受け、井戸を掘ると自噴することがある |
| 水位の動き | 雨のしみ込みやくみ上げで変わりやすい | 不圧地下水より変わりにくい |
| 地表からの汚れ | しみ込みやすい | 難透水層でさえぎられやすい |
| くみ上げる井戸 | 浅井戸が多い | 深井戸が多い |
東京都環境局「東京の地下水」、デジタル大辞泉・最新地学事典(コトバンク)、香川県環境保健研究センター所報(2022年)をもとに作成
浅井戸と深井戸は、深さの数字では決まらない
浅井戸と深井戸の違いは、決まった深さの線ではなく、不圧地下水と被圧地下水のどちらからくむかで分けるのが基本です。
最新地学事典は、深井戸を被圧地下水をねらって難透水層を貫いた井戸とし、深さは地域や事業体で異なり、便宜上30m以深とする例もあると説明しています。全国で統一した深さの基準はありません。香川県環境保健研究センターの所報も、浅井戸は不圧帯水層から採り、上に不透水層が無いため地表から汚れがしみ込みやすいと書いています。
東京都環境局「東京の地下水」と最新地学事典の説明をもとに作成した模式図
伏流水・湧き水・井戸水との違い
伏流水と湧き水も地下水の一種で、井戸水は井戸からくみ上げた地下水を指す呼び名です。
伏流水は川の底やその周りの砂礫の中を流れる水で、百科事典マイペディアは水質がおおむね良好で水道や灌漑に使われると説明しています。湧き水は地下水が自然に地表へ出てきたものです。
地下水はどれだけ使われているか|年に約97億m³
日本では年に約97億m³の地下水が使われ、生活用水・工業用水・農業用水がそれぞれ約3割を占めています。
国土交通省の「令和7年版 日本の水資源の現況」の推計で、生活用水と工業用水は2022年の値ですが、農業用水は2008年度の調査など、用途によって推計の年が違います。2022年の都市用水と農業用水だけで見ると、地下水は約84億m³で、全使用量約770億m³の約11%にあたります。
用途別の内訳
地下水の使い道は、生活用水が28.0億m³、工業用水が27.5億m³、農業用水が28.7億m³です。
| 用途 | 地下水の使用量(億m³/年) | その用途の水に占める地下水の割合 |
|---|---|---|
| 生活用水 | 28.0 | 19.4% |
| 工業用水 | 27.5 | 28.0% |
| 農業用水 | 28.7 | 5.4% |
| 養魚用水 | 9.2 | ― |
| 消・流雪用水 | 2.2 | ― |
| 建築物用等 | 1.6 | ― |
| 合計 | 97.1 | ― |
国土交通省「令和7年版 日本の水資源の現況」参考3-1-17をもとに作成。生活用水・工業用水は2022年、農業用水は農林水産省の2008年度調査、建築物用等は19都道府県の2021年度の報告による推計で、年が揃っていない
工業用水は、使う水のおよそ3割を地下水に頼っています。国土交通省は同じ資料で、ミネラルウォーターの工場や半導体の工場の進出で、企業の地下水の利用が進みつつあると書いています。
水道の水源の約2割が地下水
水道の取水量のうち地下水は22.2%で、そのうち井戸水が18.9%、伏流水が3.3%です。
日本水道協会が水道統計をもとにまとめた2022年度の数字で、上水道と用水供給を合わせた年間取水量約152億m³が分母です。残りはダムが48.6%、川からの自流水が25.0%でした。全国の浅井戸と深井戸の内訳は、公開の資料では確かめられませんでした。
地域によって、頼る度合いが大きく違う
都市用水に占める地下水の割合は全国で22.9%ですが、北陸では49.0%、南九州では43.7%にのぼります。
国土交通省の河川データブック2025による2022年の数字です。関東内陸は41.1%、東海は36.7%で、沖縄は6.9%、北海道は9.0%でした。分母は各地域の都市用水の取水量で、上で書いた水道の取水量とは範囲が違います。
地下水はそのまま飲めるか|決めるのは水質基準の52項目
地下水がそのまま飲めるかは、くんだ水が水道の水質基準52項目を満たすかを検査するまで分かりません。
水道法4条は、水道水の要件として、病原生物に汚染されていないこと、有害な物質を含まないこと、異常な味や臭いが無いこと、外観が無色透明に近いことなどを挙げ、細かい基準を環境省令に委ねています。きれいに見える井戸水でも、検査をしなければ飲めるかどうかは分かりません。また専用水道などでは、基準を満たす水でも塩素消毒が求められます。
水質基準は2026年4月から52項目
水質基準に関する省令は、2026年4月1日の改正でPFOS及びPFOAを加え、52項目になりました。
環境省は2025年6月30日に省令の改正を公布し、PFOSとPFOAの合計で0.00005mg/L(50ng/L)以下を基準にしました。それまでは水質管理目標設定項目の暫定目標値でした。ほかに一般細菌は1mLで集落数100以下、大腸菌は検出されないこと、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素は10mg/L以下、ヒ素は0.01mg/L以下と決まっています。項目ごとの意味は水質検査の記事で詳しく扱っています。
汚れの原因は、微生物・自然由来・人の活動の3つ
地下水を汚すものは、細菌などの微生物、地層から溶け出す成分、人の活動から入る物質の3つに分けられます。
微生物は一般細菌・大腸菌のほか、塩素では死なない原虫のクリプトスポリジウムがあります。地層から溶け出すものは鉄・マンガン・ヒ素・ふっ素などです。人の活動からは、硝酸性窒素、トリクロロエチレンなどの有機溶剤、PFOS・PFOAが入ります。
全国の井戸の5.6%が環境基準を超えている
環境省の令和6年度の調査では、地域の全体の状況を見るために調べた井戸2,721本のうち153本、5.6%が環境基準を超えました。
項目別の超過率は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が2.5%、砒素が2.0%、ふっ素が1.1%の順でした。汚染が分かって見張りを続けている井戸では、3,642本のうち1,535本が基準を超えています。これは環境基準(28項目)での判定で、水道の水質基準とは項目と目的が違いますが、地下水がもとから汚れていない保証は無いことを示しています。
浅い井戸ほど、飲用の基準に合わない割合が高い
香川県の調べでは、県内の飲用井戸の水のうち、浅井戸の検体の58.1%、深井戸の検体の27.0%が水質基準に合いませんでした。
香川県環境保健研究センター所報(2022年)が、平成30〜令和3年度の4年間に検査した浅井戸478検体と深井戸176検体をまとめたものです。どちらも合わない理由で最も多かったのは一般細菌で、次は浅井戸が色度、深井戸が鉄でした。1つの県の検体の数字ですが、深井戸の水でも4検体に1検体以上は基準に合わなかったことになります。
PFOS・PFOAは、地下水2,320地点のうち496地点で50ng/Lを超えた
環境省の令和6年度の調査では、地下水を測った2,320地点のうち496地点で、PFOSとPFOAの合計が50ng/Lを超えました。
この数字は全国の地下水の平均ではなく、測った地点の中での数です。地下水のPFOS・PFOAは環境基準の項目ではなく、環境省は2025年6月に「指針値(暫定)」を「指針値」に改め、合計50ng/Lとしています。東京都は、都内の地下水の調査で指針値を超えた地点の飲用井戸の持ち主に、飲用に使わないよう助言しています。
飲料水にできる条件①|使う人数と量で、かかる決まりが変わる
地下水を飲料水にするときにかかる決まりは、配る相手の人数と1日の水量、建物の用途で決まります。
井戸水を使う施設は、水道法の専用水道、国の要領と自治体の要綱、建築物衛生法のどれかの対象になります。区分の判定は水道法の記事でも詳しく扱っています。
| 区分 | 当たる場合 | 根拠 | 主な義務 |
|---|---|---|---|
| 専用水道 | 100人を超える人に居住に必要な水を配る、または飲用などに使う1日最大給水量が20m³を超える | 水道法3条6項・施行令1条 | 着工前の知事の確認、水道技術管理者、定期と臨時の水質検査、健康診断、残留塩素の保持 |
| 業務用飲用井戸 | 専用水道などに当たらない、事業所に飲み水を配る井戸 | 飲用井戸等衛生対策要領・自治体の要綱 | 給水開始前の検査、毎年1回以上の定期検査、異常時の給水停止 |
| 特定建築物で地下水を使う | 延べ3,000m²以上の事務所・店舗など(学校は8,000m²以上)で、地下水を水源の全部か一部にする | 建築物衛生法施行規則4条 | 給水開始前の全項目、6月以内ごと・3年以内ごとの検査、残留塩素の検査7日以内ごと |
| 簡易専用水道 | 水道水だけが水源で、水槽の有効容量の合計が10m³を超える | 水道法3条7項・施行令2条 | 井戸水を入れると当たらなくなる |
水道法・同施行令・同施行規則、建築物衛生法施行令・同施行規則、飲用井戸等衛生対策要領(環境省掲載)をもとに作成。専用水道と特定建築物の両方に当たる施設もある
井戸水を入れると、簡易専用水道には当たらない
簡易専用水道は水道水だけを水源とするものなので、井戸水を一部でも使う施設は当たりません。
水道法3条7項は、簡易専用水道を「水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするもの」と定めています。受水槽に井戸水を加えると、水道水だけという条件から外れます。
100人超か1日20m³超なら、専用水道になる
自家用の水道で、100人を超える人の居住用に水を配るか、飲用などに1日20m³を超えて使うと専用水道です。
水道法3条6項は、専用水道を寄宿舎、社宅、療養所などの自家用の水道としています。専用水道の設置者は、工事の前に都道府県知事の確認を受け(32条)、水道技術管理者を1人置きます(19条を34条で準用)。定期と臨時の水質検査を行って記録を5年残し(20条)、浄水の仕事に就く人の健康診断も必要です(21条)。蛇口の水は、遊離残留塩素を0.1mg/L以上に保つよう塩素消毒します(施行規則17条)。
専用水道に当たらない事業所の井戸は、国の要領と自治体の要綱
専用水道の規模に届かない事業所の井戸は、国の飲用井戸等衛生対策要領で「業務用飲用井戸」として扱われます。
環境省が掲載する要領は、官公庁・学校・病院・店舗・工場などに飲み水を配る井戸を業務用飲用井戸とし、給水を始める前に水道法に準じた水質検査を求めています。運用は都道府県の要綱で決まり、東京都は「飲用に供する井戸等の衛生管理指導要綱」で定期検査を1年以内ごとに1回としています。
特定建築物で地下水を使うと、検査が増える
延べ面積3,000m²以上の事務所や店舗などが地下水を水源にすると、建築物衛生法の検査が水道水だけの場合より増えます。
建築物衛生法施行規則4条1項4号は、地下水を水源の全部か一部にするとき、給水を始める前に水質基準の全項目を検査し、その後も項目ごとに6月以内ごと、3年以内ごとの検査をするよう定めています。周りの井戸の水質が変わったときは、必要な項目を追加で検査します。
飲料水にできる条件②|水質検査の項目と頻度
専用水道は、給水の前に全項目を調べ、その後は毎日・毎月・3か月ごとと項目に応じて検査を続けます。
下の表は、専用水道(水道法施行規則)、業務用飲用井戸(国の要領)、特定建築物(建築物衛生法施行規則)の区分ごとに、検査の頻度を並べたものです。要領の頻度は法律の義務ではなく、国が求める衛生管理の目安で、運用は都道府県の要綱で決まります。検査は、国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた検査機関などに頼むことができます。
| 検査 | 専用水道(水道法施行規則15条) | 業務用飲用井戸(要領) | 特定建築物で地下水(建築物衛生法施行規則4条) |
|---|---|---|---|
| 給水開始前 | 水質基準の全項目 | 水道法に準じた検査 | 水質基準の全項目 |
| 毎日 | 色・濁り・消毒の残留効果(1日1回以上) | 定めなし(東京都は色・濁り・におい・味の毎日の確認を案内) | ― |
| 7日以内ごと | ― | ― | 遊離残留塩素 |
| おおむね1か月ごと | 一般細菌・大腸菌・塩化物イオン・有機物・pH・味・臭気・色度・濁度 | ― | ― |
| おおむね3か月ごと | その他の多くの項目(PFOS及びPFOAを含む) | ― | ― |
| 6月以内ごと | ― | ― | 一般細菌・大腸菌・硝酸態窒素等・塩化物イオン・pH・濁度など |
| 毎年1回以上 | ― | 一般細菌・大腸菌・硝酸態窒素等・有機溶剤・PFOS及びPFOAなど | 消毒副生成物(測定期間中に1回) |
| 3年以内ごと | 条件を満たした項目は、おおむね3年に1回まで減らせる | ― | 地下水を使う場合だけの一部の項目 |
水道法施行規則15条、建築物衛生法施行規則4条、飲用井戸等衛生対策要領(環境省掲載)、東京都多摩小平保健所の案内、環境省報道発表(2025年6月30日)をもとに作成
給水を始める前は、全項目を調べる
専用水道と特定建築物は給水の前に全項目を検査し、業務用飲用井戸も国の要領で水道法に準じた検査を求められます。
建築物衛生法施行規則は「給水を開始する前に、水質基準省令の表の上欄に掲げるすべての事項」を検査するよう定め、要領も給水開始前に水道法に準じた検査を求めています。原水の結果は、あとで書く浄水処理の組み方を決める材料にもなります。
毎日の検査は、色・濁り・消毒の残留効果
専用水道では、色と濁り、消毒の残留効果(残留塩素)を1日1回以上、蛇口の水で確かめます。
水道法施行規則15条は、採水の場所を給水栓とするのが原則と定めています。残留塩素の測り方と、下がる原因は残留塩素の記事で詳しく扱っています。
月1回と3か月に1回の項目
一般細菌や大腸菌など9項目はおおむね1か月に1回以上、その他の多くの項目はおおむね3か月に1回以上検査します。
月1回の項目は、一般細菌・大腸菌・塩化物イオン・有機物(全有機炭素)・pH・味・臭気・色度・濁度です。環境省は、新しく加わったPFOS及びPFOAの検査を、おおむね3か月に1回以上を基本とするとしています。
結果しだいで、回数を減らせる項目がある
過去3年の検査結果が基準値の5分の1以下なら1年に1回、10分の1以下なら3年に1回まで、一部の項目の回数を減らせます。
水道法施行規則15条の定めです。地下水を水源とする場合は、減らしてよいかの判断に、近くの地域の地下水の状況も加えます。
業務用の井戸は、毎年1回以上
専用水道に当たらない事業所の井戸は、要領で毎年1回以上の定期の水質検査が求められています。
項目は、一般細菌、大腸菌、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素、塩化物イオン、有機物、pH、味、臭気、色度、濁度、有機溶剤、PFOS及びPFOAなどです。供給する水が健康を害するおそれを知ったときは、直ちに給水を止め、利用者に知らせて保健所などの指示を受けます。
飲料水にできる条件③|原因に合わせた浄水処理
地下水の浄水処理は、原水の検査で見つかった汚れの原因ごとに、効く処理を組み合わせて決めます。
消毒だけで済む井戸もあれば、鉄やマンガンを取る処理、においを取る処理、膜でこす処理が要る井戸もあります。どの処理が要るかは、くんだ水を調べるまで決められません。
| 汚れの原因 | 主な項目 | 効く処理 |
|---|---|---|
| 細菌・ウイルス | 一般細菌・大腸菌 | 塩素消毒(蛇口で遊離残留塩素0.1mg/L以上) |
| 塩素が効かない原虫 | クリプトスポリジウム | 膜ろ過(MF膜・UF膜・RO膜) |
| 地層から溶け出す金属 | 鉄・マンガン | 除鉄・除マンガンのろ過 |
| におい・有機物 | 臭気・有機物 | 活性炭ろ過 |
| 水の硬さ | 硬度 | 軟水器 |
水道法施行規則17条、当社の地下水飲料化のページ(2026年10月21日に確認)をもとに作成。処理の組み合わせは原水の検査結果で決まる
消毒|蛇口で残留塩素を保つ
専用水道と特定建築物では、蛇口の水で遊離残留塩素を0.1mg/L以上に保つよう塩素消毒します。
水道法施行規則17条が専用水道に、建築物衛生法施行規則4条が特定建築物に求める措置です。汚染のおそれがあるときは0.2mg/L以上に上げます。厚生労働省は2025年10月17日、湧き水を水源とする旅館で、塩素の薬剤タンクが空のまま給水し、88名(速報値)の食中毒が起きたと推定される事例を通知で示しました。消毒の設備は、動いているかを毎日確かめる必要があります。
鉄・マンガンとにおいの処理
鉄とマンガンは専用のろ過で取り除き、においや有機物は活性炭で吸着します。
香川県の調べでは、深井戸の水が基準に合わない理由の2番目が鉄でした。
膜ろ過|地下水ろ過で病原体を取る処理
膜ろ過は、小さな穴の膜で水をこし、塩素で死なないクリプトスポリジウムや細菌を物理的に取り除く処理です。
クリプトスポリジウムは約5マイクロメートルの原虫で、塩素消毒では死なず、集団での下痢を起こすおそれがあります。膜の穴の大きさでMF膜・UF膜・RO膜などに分かれ、当社は原水に合わせて膜の種類を選びます。
処理の組み方は、原水の検査で決める
浄水処理の組み合わせは、井戸を掘ったあとの原水の検査結果と、水を何に使うかで決めます。
当社の場合、井戸を掘ったときに原水を39項目検査し、除鉄・除マンガン、活性炭、膜ろ過、軟水器から必要なものを組み合わせます。処理した水と排水は、水道法の水質基準に沿って検査します。
くみ上げる前に確かめること|採取の規制と地盤沈下
地下水は自由にくみ上げられるとは限らず、国の法律の指定地域と自治体の条例が、井戸の構造や量を制限しています。
規制の目的は、くみ上げすぎによる地盤沈下や塩水化を防ぐことです。井戸を掘る工程と届出はさく井工事の記事で詳しく扱っています。
国の2つの法律と指定地域
工業用水法とビル用水法が、指定地域の中で一定以上の井戸から地下水をくむことを許可制にしています。
工業用水法は、工業用に地下水をくむ井戸を、ビル用水法は冷房や水洗便所に使う地下水をくむ設備を対象にし、どちらも揚水機の吐出口の断面積が6cm²を超えるものです。環境省の「令和6年度 全国の地盤沈下地域の概況」によると、工業用水法は10都府県17地域、ビル用水法は大阪府・東京都・埼玉県・千葉県の4都府県4地域が指定されています。
自治体の条例・要綱は400件近い
地下水の採取に関する条例・要綱などは、都道府県で31件、市区町村で370件あります(2025年3月時点)。
東京都の環境確保条例は、奥多摩町・檜原村・島しょを除く都内で、吐出口の断面積が6cm²以下なら揚水量、6cm²を超えればストレーナーの位置を制限し、21cm²を超える設備は禁止しています。揚水する人には年1回の揚水量の報告を求めています。規制の中身は地域ごとに違うので、井戸を掘る前に所在地の自治体で確かめます。
地盤沈下は、一度起きると戻らない
地下水をくみすぎると粘土層が縮んで地盤が沈み、一度沈んだ地盤はもとに戻りません。
環境省は「地盤沈下の多くは、地下水の過剰な採取により地下水位が低下し、粘土層が収縮するために生じている」と説明しています。2024年度に地盤沈下の測量をした地域は20都道府県の27地域で、国土交通省は臨海部で帯水層に海水が入る塩水化の被害も挙げています。
地下水を使う事業者には、協力する責務がある
水循環基本法は、地下水を使う事業者に、水を適正に使い、国や自治体の施策に協力する責務を定めています。
くみ上げる量は、揚水試験の結果を見て、井戸の周りの水位に影響が出ない範囲で決めます。
施設で地下水を飲料水にする|当社の仕組みと分担
当社は、施設の水道を残したまま敷地に深井戸を掘り、浄水した地下水を受水槽へ加えて、水源を2本にする仕組みを扱っています。
水道を解約して井戸水に切り替えるものではありません。浄水設備の点検のときや異常のときは水道水で給水を続けるため、水道局との契約はそのまま残します。
当社が扱う地下水飲料化の仕組みを単純化した模式図。処理の組み合わせは原水の検査で、区分と義務は施設の規模・用途と自治体の判断で変わる
水道を残して、水源を2本にする
当社の案内では、導入後に受水槽へ入る水は井戸水が50〜90%、水道水が50〜10%が目安で、施設の使用量と配管の系統で変わります。
当社は、この仕組みで供給する水を水道法の専用水道として扱い、設置者は導入する施設になると案内しています。専用水道に当たるかは、100人超か1日20m³超の条件で決まります。災害で水道が止まったときも、井戸と浄水設備が動いていれば給水を続けられます。災害時の井戸の使い方は防災井戸の記事にまとめています。
深井戸から受水槽まで
当社は、難透水層を2〜3層掘り下げた深さ約100mの深井戸から地下水をくみ、浄水してから受水槽へ送ります。
深さは地質で変わります。地表に近い層の汚れを受けにくい層から取水しますが、それだけで飲めるとはしていません。除鉄・除マンガン、活性炭、膜ろ過、軟水器から原水に合う処理を組み、濁度・pH・残留塩素と設備の稼働状況を24時間遠隔で監視します。異常が出たときは、給水が自動で水道側に切り替わります。
施設に残る仕事
施設には専用水道の設置者としての責任が残り、当社の案内で施設にお願いするのは届出・技術管理者の選任・毎日の検査です。
毎日の検査(色・濁り・残留塩素)は、設備の操作や薬品の扱いを含みません。井戸の掘削と浄水設備の費用、設備の維持管理、水質と水量の確保は当社が負います。くみ上げは、条例がある地域では条例を守り、条例が無い地域でも揚水試験の結果を尊重した量にします。導入できる施設の条件は導入できる条件のページ、運用の分担は導入後のサービスのページにまとめています。
地下水を飲料水に使う前に確かめる3つのこと
施設で地下水を飲料水にするかを決める前に、規制、水質、施設の体制の3つを確かめます。
1つ目は、所在地でくみ上げが許されるかです。2つ目は、原水の検査でどの処理が要るかです。3つ目は、専用水道の設置者として、水道技術管理者を置いて毎日の検査を続けられるかです。工業用水との違いを含めた水の選び方は工業用水の記事、仕組みの全体は地下水飲料化のページで説明しています。
地下水についてのよくある質問
Q. 井戸水の水質検査は、どこに頼めばよいですか
A. 国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた検査機関か、地方公共団体の機関に頼みます。水道法20条3項は専用水道の検査をこれらの機関に委託できるとし、国の飲用井戸等衛生対策要領も井戸の検査をこれらの機関に頼むよう定めています。登録機関の一覧は、都道府県の保健所の案内で確かめられます。
Q. 水質基準に合わない井戸水は、飲料水に使えませんか
A. 原水が基準に合わなくても、浄水処理をして蛇口の水が水質基準を満たし、検査で確かめ続けられれば飲料水として配れます。水道法施行規則15条は、水質検査の採水を給水栓(蛇口)で行うのを原則としています。合わない項目によって要る処理が変わるので、まず原水の全項目の結果を見ます。
Q. 災害で断水したとき、井戸水は飲めますか
A. 水質を確かめていない井戸水を、そのまま飲み水にするのは避けます。内閣官房と国土交通省が2025年3月にまとめた災害時地下水利用ガイドラインは、トイレや洗濯などの生活用水を対象にしており、飲用には水質の確認が別に要るとしています。ふだんから水質基準に合うよう検査と消毒を続けている専用水道などは、設備が動いていれば断水中も飲料水を配れます。
Q. 自宅の井戸にも水質検査の義務はありますか
A. 自宅だけに水を使う井戸は、国の要領では毎年1回以上の検査が「望ましい」とされ、義務ではありません。東京都も、個人住宅は1年以内ごとに1回の検査が望ましいと案内しています。事業所に飲み水を配る井戸は、毎年1回以上の検査が求められます。
Q. 湧き水も、井戸水と同じように扱われますか
A. 飲用に使うなら、湧き水も井戸水と同じく検査と消毒が要ります。厚生労働省は2025年10月17日、湧き水を水源とする旅館で食中毒が2件続いたことを受け、湧き水や井戸水を使う施設に年1回以上の水質検査と、殺菌装置の点検と記録を求める通知を出しました。
参考情報
この記事は、法令、国土交通省・環境省・厚生労働省・内閣官房の資料、各自治体と日本水道協会の公開資料、当社の公式ページをもとに書いています。資料は2026年10月21日に確認した時点のものです。
- 水循環基本法(e-Gov法令検索)
- 水道法(e-Gov法令検索)
- 水道法施行令(e-Gov法令検索)
- 水道法施行規則(e-Gov法令検索)
- 水質基準に関する省令(e-Gov法令検索)
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)
- 工業用水法(e-Gov法令検索)
- 建築物用地下水の採取の規制に関する法律(e-Gov法令検索)
- 内閣官房 水循環政策本部「地下水マネジメントとは」
- 国土交通省「令和7年版 日本の水資源の現況」
- 国土交通省「河川データブック2025 地下水の利用」
- 国土交通省「災害時地下水利用ガイドライン」
- 環境省 報道発表「水質基準に関する省令の一部を改正する省令等の公布について」(2025年6月30日)
- 環境省「令和6年度地下水質測定結果」
- 環境省 報道発表「令和6年度公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果について」
- 環境省「地下水の水質汚濁に係る環境基準」
- 環境省「飲用井戸等衛生対策要領」
- 環境省「令和6年度 全国の地盤沈下地域の概況」
- 厚生労働省「湧き水又は井戸水等を飲用に適する水として使用する施設における食中毒予防の徹底について」(2025年10月17日)
- 日本水道協会「数値で見る水道」
- 日本水道協会「水道の水源とは?」
- 東京都環境局「東京の地下水」
- 東京都環境局「令和6年 都内の地下水揚水の実態」
- 東京都保健医療局「PFOS・PFOAについて」
- 東京都多摩小平保健所「飲用井戸等の衛生管理」
- 香川県環境保健研究センター所報 第21号(2022年)
- コトバンク「地下水」
- コトバンク「深井戸」
- 株式会社 豊「地下水飲料化とは」
