水道法とは、水道の布設と管理のルールを定め、清浄で豊富低廉な水を届けることを目的にした法律です。
自分の施設の水道が「専用水道」や「簡易専用水道」に当たると、設置者に水質検査や清掃、検査の受検といった義務がかかります。この記事では、水道法の目的と区分、施設の区分を判定する手順、区分ごとの義務、罰則、2019年から2026年4月までの改正を、国と自治体の一次資料をもとに整理します。水質検査の項目の詳しい中身は水質検査の記事で扱っています。
この記事でわかること
- 水道法は水道を4つの形態に分ける:水道事業・水道用水供給事業・専用水道・簡易専用水道で、施設の設置者に関わるのは主に専用水道と簡易専用水道です。
- 判定は「井戸水が混じるか」から始める:水道法3条6項では、井戸水を水源に含む施設は、居住者100人超か、生活用の水が1日20m³超なら専用水道です。
- 水道水だけなら、まず受水槽の容量を見る:水道法施行令2条により、受水槽の有効容量の合計が10m³を超えると簡易専用水道で、年1回の清掃と検査がかかります。導管1,500m・水槽100m³を超える規模なら専用水道です。
- 罰則は2025年6月から「拘禁刑」:給水の緊急停止を怠ると3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
- 2026年4月にPFOS・PFOAが水質基準に入った:法律本体ではなく省令の改正で、専用水道も検査と基準の遵守が義務になりました。
水道法とは|水道の布設と管理のルールを決めた法律
水道法は、水道をつくり管理するときのルールを定め、清浄で豊富低廉な水の供給を図る法律です。
昭和32年法律第177号として制定され、明治23年から続いた「水道条例」に代わりました(日本大百科全書)。水道法3条1項は、「水道」を導管などの工作物で水を人の飲用に適する水として供給する施設の総体と定め、臨時に設けたものを除いています。病院や工場の自前の給水設備も、当たれば対象です。
目的は「清浄にして豊富低廉な水」
水道法1条は、水道の布設と管理を適正にし、基盤を強化して清浄で豊富低廉な水を供給することを目的にしています。
条文の文言は「水道の布設及び管理を適正かつ合理的ならしめるとともに、水道の基盤を強化することによつて、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り」です。2019年10月に施行された平成30年の改正より前は、「水道を計画的に整備し、及び水道事業を保護育成することによつて」となっていました。
水質基準は、水道のすべての水にかかる
水道法4条の水質基準は、水道事業の水だけでなく、専用水道を含む「水道により供給される水」すべてにかかります。
具体的な項目と基準値は「水質基準に関する省令」の表で決まっています。2026年4月にPFOS・PFOAが加わり、表は52項目になりました。項目ごとの意味と検査の頻度は水質検査の記事にまとめています。
所管は2024年4月から国土交通省と環境省
水道法の所管は2024年4月1日に厚生労働省から移り、施設は国土交通省、水質と衛生は環境省が受け持っています。
現行の条文では、水道事業の認可や施設の基準、簡易専用水道の管理基準が国土交通省令、水質検査・健康診断・衛生上の措置が環境省令の担当です。古い資料にある「厚生労働大臣の登録」は、今の制度では「国土交通大臣及び環境大臣の登録」です。
水道法の区分|水道事業・専用水道・簡易専用水道
水道法は水道を、水道事業・水道用水供給事業・専用水道・簡易専用水道の4つの形態に分けています。
区分は、誰に何人分の水を送るか、どの水を水源にするかで決まります。
| 区分 | 定義(条文) | 数値の基準 | 全国の数 |
|---|---|---|---|
| 水道事業(上水道) | 一般の需要に応じて水を供給する事業(法3条2項) | 給水人口100人超。5,000人以下は簡易水道事業(法3条3項) | 上水道1,290(1億1,963万人)、簡易水道2,222(152万人) |
| 水道用水供給事業 | 水道事業者に用水を供給する事業(法3条4項) | ― | 87 |
| 専用水道 | 寄宿舎・社宅・療養所などの自家用の水道(法3条6項) | 居住者100人超、または生活用の1日最大給水量20m³超(令1条2項) | 8,059(給水人口36万人) |
| 簡易専用水道 | 水道事業の水だけを水源とする受水槽の水道(法3条7項) | 受水槽の有効容量の合計10m³超(令2条) | 検査の対象208,208 |
| (水道法の外)小規模貯水槽水道 | 受水槽が10m³以下の水道 | ― | 744,761 |
水道法、水道法施行令、国土交通省の水道の現況(令和7年3月31日現在)、環境省の委託報告書(令和6年度の簡易専用水道の検査の集計)をもとに作成。基準日がそろわないため比較には使わない
水道事業と水道用水供給事業
水道事業は一般の家庭などへ水を売る事業で、水道用水供給事業は水道事業者へ水を卸す事業です。
給水人口100人以下の水道による事業は水道事業から除かれ、5,000人以下は「簡易水道事業」です(3条2項・3項)。国土交通省の集計では、令和7年3月31日現在で上水道事業が1,290、簡易水道事業が2,222、水道用水供給事業が87あり、水道の普及率は98.3%です。
専用水道:100人超の居住者か、生活用水が1日20m³超
専用水道は、居住者100人超に水を送るか、生活用の1日最大給水量が20m³を超える自家用の水道です。
水道法3条6項は、寄宿舎、社宅、療養所などの自家用の水道で「百人を超える者にその居住に必要な水を供給するもの」、または1日最大給水量が政令の基準を超えるものを専用水道としています。その基準が水道法施行令1条2項の20m³で、数えるのは「人の飲用その他の国土交通省令で定める目的」に使う水量です。国土交通省の集計では、令和7年3月31日現在の専用水道は8,059です。給水人口は36万人ですが、これは居住者の数で、病院の外来者や工場の従業員は入っていません。
簡易専用水道:受水槽の容量が10m³超
簡易専用水道は、水道事業の水だけを受水槽にためて送る水道のうち、受水槽の容量が10m³を超えるものです。
水道法3条7項は「水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするもの」を簡易専用水道とし、水道法施行令2条が受水槽の有効容量の合計10m³以下のものを除いています。井戸水が混じる場合は、水道事業の水「のみ」を水源とする条件から外れるため簡易専用水道には当たらず、居住者100人超か生活用水20m³超かで専用水道かどうかを判定します。
水道法の外:小規模貯水槽水道と飲用井戸
受水槽が10m³以下の水道や、専用水道に当たらない飲用井戸は水道法の外で、国の要領と自治体の条例が管理を求めます。
国の「飲用井戸等衛生対策要領」は、水道法とビル管理法(建築物衛生法)の適用を受けない井戸や受水槽が対象です。官公庁・学校・病院・店舗・工場などの事業所に飲み水を送る井戸は「業務用飲用井戸」、受水槽が10m³以下の水道は「小規模貯水槽水道」と呼ばれます。要領は国から自治体への通知なので、条例や要綱がある自治体ではそちらに従います。令和6年度の小規模貯水槽水道744,761施設のうち、検査を受けたのは3.7%でした(環境省の委託報告書)。
自分の施設がどの区分に当たるかの判定
区分の判定は、まず水源に井戸水が入るかを見て、次に人数と生活用水の量、最後に受水槽の容量の順に確かめます。
堺市の専用水道の判定フローも、人数・水量の次に「使用する水源は上水等の水道のみである」かを問い、導管と水槽、受水槽の容量へ進みます。
水道法、同法施行令、堺市の専用水道の判定フロー、千葉県「専用水道のてびき」をもとに作成。最終的な判断は所管の保健所などが行う
最初に見るのは、井戸水が混じるかどうか
最初に見るのは水源で、井戸水が少しでも混じる施設は、水道水だけの施設に使える除外の基準が使えません。
水道法3条6項のただし書は、「他の水道から供給を受ける水のみを水源とし」、かつ施設の規模が政令の基準以下の水道を専用水道から除いています。井戸水を混ぜる施設はこの「のみ」に当たらないため、居住者100人超か生活用水20m³超のどちらかを満たせば、規模に関係なく専用水道です。千葉県の「専用水道のてびき」も、「自己水源(井戸水) 又は浄水混合」で100人超・20m³超の施設を専用水道とし、該当例に寄宿舎・社宅・療養所・老人ホーム・学校・レジャー施設などを挙げています。
20m³は、生活に使う水の量で数える
20m³は施設が使う水の総量ではなく、飲用・炊事用・浴用などの生活に使う水の1日最大の量で数えます。
水道法施行規則1条は、数える目的を「人の飲用、炊事用、浴用その他人の生活の用に供すること」と定めています。条文から読める範囲では、工場の製造工程や冷却にだけ使う水は生活の用に当たらず、20m³に入れないことになります。ただし、どこまでを生活用とみるかは施設ごとに違うため、個別の判断は所管の保健所に確かめます。
水道水だけでも、導管1,500m・水槽100m³を超えると専用水道
水道水だけを水源にしていても、施設の規模が大きければ、100人超・20m³超の施設は専用水道に当たります。
除外の基準は水道法施行令1条1項で、口径25mm以上の導管の全長が1,500m、水槽の有効容量の合計が100m³です。堺市の判定フローは、導管の長さに「受水槽に入るまでの導管の長さは含みません」と注記しています。
病院・工場・商業施設・ホテルは、どこに当たりやすいか
入院患者や寮の居住者がいる施設は人数で、そうでない施設は生活用水の量と受水槽の容量で区分が決まりやすくなります。
病院は入院患者、工場は社員寮の居住者を数えます。外来者や通勤の従業員は「居住」に当たらないため、居住者が100人に届かない施設は、生活用水が1日20m³を超えるかで判定します。商業施設やホテル、オフィスビルで井戸水を使わない場合は、受水槽10m³超かどうかで簡易専用水道の判定になります。
延べ面積3,000m²以上の店舗・事務所・旅館などは、ビル管理法の「特定建築物」にも当たり、水道法と別に水質検査や貯水槽の清掃が求められます。地下水を水源に含む特定建築物は、給水を始める前に水質基準のすべての項目を検査します(建築物衛生法施行規則4条)。東京都は、特定建築物に当たる簡易専用水道について、建築物衛生法の案内もあわせて見るよう示しています。なお、ビル管理法の特定建築物の用途に病院と工場は入っていません。
最終判断は保健所。計画の段階で相談する
区分の最終的な判断は、施設の所在地を受け持つ保健所などの行政がするので、井戸や受水槽を計画する段階で相談します。
東京都保健医療局は、専用水道に当たるかどうかを「事前(計画時)に、保健所までご相談ください。」と案内し、確認の申請は「工事着手予定日の30日前まで」としています。千葉県の手引きは、工事なしで100人や20m³を超えた場合も「専用水道届出書」の提出を求めています。国の基準への上乗せもあり、千葉県は県の独自の運用として給水人口50人以上の「小規模専用水道」を条例で規制しています。
区分ごとの義務|専用水道と簡易専用水道で何が違うか
専用水道は水道事業とほぼ同じ水質管理が求められ、簡易専用水道は受水槽の清掃と年1回の検査が中心です。
下の表は、区分ごとの主な義務を並べたものです。
| 義務 | 専用水道 | 簡易専用水道 | 小規模貯水槽水道・業務用飲用井戸 |
|---|---|---|---|
| 工事の前 | 着工前に都道府県知事などの確認(32条) | なし | なし(条例による) |
| 水道技術管理者 | 1人置く(19条の準用) | なし | なし |
| 毎日の検査 | 1日1回以上、色・濁り・残留塩素(規則15条) | なし | なし |
| 定期の水質検査 | 月1回・3か月に1回など(20条の準用) | 異常時に行う(管理基準) | 毎年1回以上(国の要領) |
| 健康診断 | 従事者におおむね1年ごと(21条の準用) | なし | なし |
| 水槽の清掃 | 衛生上必要な措置をとる(22条の準用) | 毎年1回以上(規則55条) | 簡易専用水道の管理基準に準じる(国の要領) |
| 外部の検査 | なし(水質検査は登録機関へ委託できる) | 毎年1回以上、地方公共団体の機関か登録機関の検査(34条の2) | 条例による |
| 記録 | 水質検査の記録を5年保存(20条の準用) | 管理の記録を保管 | 条例による |
| 違反したとき | 改善指示・給水停止命令・罰則 | 措置指示・給水停止命令・罰則 | 条例による |
水道法、同法施行規則、飲用井戸等衛生対策要領、東京都保健医療局の案内をもとに作成。自治体の条例で上乗せがある場合はそちらに従う
専用水道:着工前の確認と、水道事業と同じ水質管理
専用水道の設置者は、着工前に確認を受け、水道技術管理者を置いて、水道事業者と同じ水質検査と衛生管理をします。
水道法32条は、専用水道の布設工事に「着手する前に」都道府県知事の確認を受けることを求めています。34条1項は、13条(給水開始前の水質検査と施設検査)、19条(水道技術管理者)、20条から22条の2(水質検査・健康診断・衛生上の措置・施設の維持と修繕)、23条(給水の緊急停止)、24条の3(業務の委託)を専用水道の設置者に準用します。一方、水道施設台帳(22条の3)と計画的な更新(22条の4)は準用の範囲に入っていません。
水道技術管理者には資格の要件がありますが、1日最大給水量が1,000m³以下で、消毒のほかに浄水の処理が要らず、自然流下だけで給水できる専用水道には、その要件(19条3項)が準用されません(34条2項)。
簡易専用水道:年1回の清掃と、年1回の検査
簡易専用水道の設置者は、受水槽を毎年1回以上掃除し、毎年1回以上、行政か登録機関の検査を受けます。
管理の基準は水道法施行規則55条で、水槽の掃除を毎年1回以上定期に行うこと、汚染を防ぐ点検、水に異常があるときの水質検査、健康被害のおそれがあるときの給水停止を定めています。検査は34条の2第2項で、「地方公共団体の機関又は国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者」から受けます。東京都の案内では、検査で清掃の実施、衛生状態、図面と管理記録の保管などを確かめます。
飲用井戸と小規模貯水槽は、国の要領と条例
水道法の外にある業務用飲用井戸と小規模貯水槽水道には、国の要領が毎年1回以上の水質検査を求めています。
飲用井戸等衛生対策要領は、業務用飲用井戸と小規模貯水槽水道について、水質検査を「毎年1回以上行うものとする」とし、小規模貯水槽水道は「簡易専用水道の管理基準に準じて管理すること」としています。2026年4月からは、井戸の検査項目にPFOS・PFOAが加わりました。条例や要綱で義務にしている自治体もあります。
水道法の検査は2種類|水質検査と、簡易専用水道の検査
水道法で「検査」と呼ばれるものは、20条の水質検査と、34条の2の簡易専用水道の検査の2種類があります。
20条は水道事業者と専用水道の設置者が水質基準を満たすかを確かめる検査、34条の2は簡易専用水道の受水槽の管理を外部の機関が見る検査で、対象も中身も違います。
水質検査(20条):毎日・月1回・3か月に1回
水質検査は、毎日の色・濁り・残留塩素の検査と、月1回以上の9項目、3か月に1回以上のその他の項目に分かれます。
水道法施行規則15条は、1日1回以上「色及び濁り並びに消毒の残留効果に関する検査」を行い、採水は「給水栓を原則」とすると定めています。定期の検査は、一般細菌・大腸菌・塩化物イオン・有機物(TOC)・pH・味・臭気・色度・濁度の9項目がおおむね1か月に1回以上、そのほかの項目がおおむね3か月に1回以上です。検査の記録は5年間保存し、国土交通大臣と環境大臣の登録を受けた検査機関に委託することもできます(20条)。残留塩素の測り方は残留塩素の記事、項目ごとの内容は水質検査の記事で解説しています。
簡易専用水道の検査(34条の2):年1回、受検率は76.2%
簡易専用水道の検査は毎年1回以上受けるもので、令和6年度に検査を受けた施設は、対象の76.2%でした。
環境省の委託報告書によると、令和6年度は検査の対象とされた208,208施設のうち、158,622施設が受検しました。集計の5年間で、受検率は78.4%から76.2%の間で推移しています。受検した施設のうち35,018施設(22.1%)で何らかの指摘がありました。登録検査機関の一覧は、国土交通省のサイトで「簡易専用水道検査機関登録簿」として公開されています。
2026年4月から、PFOS・PFOAの検査が加わった
2026年4月1日から、PFOSとPFOAが水質基準の項目になり、水道事業者と専用水道の設置者に検査の義務がかかりました。
環境省は「令和8年4月から、水道事業者等に対して、PFOS及びPFOAに関する水質検査の実施及び基準を遵守する義務が新たに課されます」と発表しています。基準値はPFOSとPFOAの合計で0.00005mg/L(50ng/L)以下です。検査の回数はおおむね3か月に1回以上が基本で、国の通知は、専用水道も過去3年の結果がすべて基準の5分の1以下なら回数を減らせるとしています。これまで検査していない専用水道は、令和8年度はおおむね3か月に1回以上検査します。
水道法に違反したときの罰則
水道法の罰則は違反の中身で重さが違い、最も重い給水の緊急停止を怠った場合は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
下の表は、専用水道と簡易専用水道の設置者に関わる主な罰則です。
| 違反の中身 | 罰則 | 条文 |
|---|---|---|
| 健康を害するおそれを知りながら給水を止めない(専用水道を含む) | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 | 52条2号 |
| 水道技術管理者を置かない(専用水道を含む) | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 53条5号 |
| 知事などの給水停止命令に従わない | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 53条10号 |
| 水質検査・健康診断・衛生上の措置をしない(専用水道を含む) | 100万円以下の罰金 | 54条3〜5号 |
| 確認を受けずに専用水道の工事に着手する | 100万円以下の罰金 | 54条7号 |
| 簡易専用水道の検査を受けない | 100万円以下の罰金 | 54条8号 |
| 報告をしない・立入検査を拒む | 30万円以下の罰金 | 55条3号 |
水道法(2026年9月29日時点の現行条文)をもとに作成。法人の違反は、行為者のほか法人にも罰金が科される(56条)
検査を受けない・確認なしで着工:100万円以下の罰金
簡易専用水道の検査を受けない場合や、確認を受けずに専用水道の工事に着手した場合は、100万円以下の罰金です。
水道法54条は、7号で「第三十二条の規定による確認を受けないで専用水道の布設工事に着手した者」、8号で簡易専用水道の検査の義務(34条の2第2項)に違反した者を罰金の対象にしています。法人の従業員が違反したときは、56条により法人にも罰金が科されます。
給水を止めない:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
水が人の健康を害するおそれを知りながら給水を止めなかった設置者は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
水道法23条1項は、水が人の健康を害するおそれがあると知ったときは「直ちに給水を停止し」、関係者に知らせることを求めています。52条2号は、この義務の違反を、専用水道で準用される場合も含めて罰しています。刑の名前は、刑法の改正に合わせた令和4年法律第68号により、2025年6月1日から「懲役」が「拘禁刑」に置き換わりました。
罰則の前に、知事の指示と給水停止命令がある
罰則に至る前に、都道府県知事などが報告を求め、立入検査をし、改善の指示や給水停止の命令を出す流れがあります。
水道法36条は、専用水道には改善を指示でき、簡易専用水道には「清掃その他の必要な措置を採るべき旨を指示することができる」と定めています。指示に従わず健康を害するおそれがあるときは、37条で給水の停止を命じることができます。簡易専用水道の管理基準(清掃など)の違反そのものを罰する号は無く、罰則は検査を受けない場合と、給水停止命令に従わない場合にかかります。令和6年度の簡易専用水道への立入検査は4,433件、口頭指導963件、文書指導889件、改善命令20件でした。罰則が実際に適用された例は、今回調べた公表資料には見当たりませんでした。
水道法の改正|平成30年改正から2026年のPFOS・PFOAまで
水道法は2019年の基盤強化、2024年の所管移管、2025年の拘禁刑と災害時の規定、2026年の省令改正と変わりました。
PFOS・PFOAの水質基準入りと健康診断の頻度の見直しは、法律本体ではなく省令の改正です。
e-Gov法令検索の水道法の改正履歴、国土交通省・環境省の資料をもとに作成。日付は施行日
平成30年改正(2019年10月施行):水道の基盤強化
平成30年の改正は、人口減少や老朽化、人材不足に備えて水道の基盤を強化するもので、2019年10月1日に施行されました。
平成30年法律第92号は2018年12月12日に公布されました。国土交通省の資料は、改正の柱を、関係者の責務の明確化、広域連携の推進、適切な資産管理(施設の維持修繕、水道施設台帳の作成、計画的な更新、収支の見通し)、官民連携(運営権の設定)、指定給水装置工事事業者の指定の5年更新制としています。当時の国の資料は、全国の水道管路のうち法定耐用年数(40年)を超えた延長の割合が平成28年度に14.8%、基幹管路の耐震適合率は4割未満と示していました。運営権の設定は水道事業者の経営の話で、施設の設置者の手続きには関わりません。
2024年4月:所管が国土交通省と環境省へ
2024年4月1日に、水道の整備と管理の行政が厚生労働省から国土交通省と環境省へ移りました。
根拠は令和5年法律第36号で、国土交通省の資料は「令和6年4月に厚生労働省の所管する水道整備・管理行政が国土交通省・環境省へ移管されました」と書いています。検査を頼む機関も、国土交通大臣と環境大臣の登録を受けた機関になりました。
2025年:拘禁刑への置き換えと、災害時の規定
2025年6月1日に罰則の「懲役」が「拘禁刑」になり、7月1日に災害時の水道の復旧に関する規定が加わりました。
後者は能登半島地震を受けた令和7年法律第51号「災害対策基本法等の一部を改正する法律」(2025年6月4日公布)で、水道法には、下水道事業団が被災した水道施設の工事を行えるようにする規定(39条の3)と、災害時に水道事業者の職員が利用者の土地に立ち入って給水装置を操作できる規定(40条の2)が新設されました。改正の前後の条文を比べると、専用水道と簡易専用水道の設置者の義務は変わっていません。
2026年4月:PFOS・PFOAが水質基準に、健康診断は1年ごとに
2026年4月1日、省令の改正でPFOS・PFOAが水質基準に加わり、従事者の定期の健康診断はおおむね1年ごとになりました。
PFOS・PFOAの改正は2025年6月30日に公布されました。国は令和2年から、PFOSとPFOAの合計50ng/Lを暫定の目標値にしていて、今回、同じ値が守らなければならない基準になりました。健康診断は、令和8年環境省令第7号により、定期の頻度が「おおむね6箇月」から「おおむね1年」に改められています。対象は、取水場・浄水場・配水池で業務に従事する人などです。
地下水を飲み水にする施設が、水道法で押さえること
井戸水を飲み水に使う施設は、居住者100人超か生活用水1日20m³超なら専用水道になり、水道事業と同じ水質管理が求められます。
確認、水道技術管理者、毎日の検査、定期の水質検査、PFOS・PFOAの検査までが設置者の義務です。
地下水でも、水道法の義務は同じ
水源が地下水でも公共の水道水でも、専用水道の設置者が守る義務は同じで、水質基準も同じものが適用されます。
国土交通省と環境省が2025年12月25日に公表した調査では、令和2年度から令和7年8月末までにPFOS・PFOAの暫定目標値を超えた専用水道は59(前年の調査では42)でした。検査したことがある専用水道は、設置者8,056のうち4,353です。超えた59のうち35は、上水道への切り替えや井戸の取水停止で対策を済ませ、20は飲用の制限などの応急の対応をとっていました。
事故は、設備の不具合と施設内の混入から起きている
国に報告された専用水道の事故には、塩素の注入設備の不具合や、施設の中での汚水の混入によるものがあります。
環境省の資料には、令和6年に千葉県の病院の専用水道(深井戸、塩素消毒のみ)で、塩素注入設備の不具合により、給水栓の水で残留塩素が不検出になった例が載っています。国土交通省の水質事故の一覧には、群馬県の病院の専用水道(地下水)で亜硝酸態窒素が検出され、患者10人が出た例があり、原因は地下水ではなく給水施設での汚水の混入とされています。
水道と併用するなら、水道事業者への届出も確かめる
水道水と地下水を併用する施設には、水道法とは別に、地域の水道事業者が届出を求めている場合があります。
大阪市水道局は、「平成20年4月1日から地下水等利用専用水道の設置者に対して指導等を実施しています」とし、条例で設置の届出を求めています。浜松市も「地下水等併用届出」の制度を設け、地下水の設備が止まって水道水に切り替えるときの計画(「バックアップ使用時の計画を明らかにする書類」)の提出を求めています。併用を考えるときは、保健所への相談と合わせて、地域の水道事業者の決まりも確かめます。
当社のサービスで、施設側が担うこと
当社の地下水の飲料水化サービスでは、施設側にお願いするのは水道技術管理者の選任と、毎日の色・濁り・残留塩素の確認です。
設備は当社が24時間監視し、水質に異常があれば水道水へ自動で切り替えます。仕組みはシステムのページ、保守の体制はサポートのページ、地下水の性質は地下水の記事で紹介しています。
水道法についてのよくある質問
Q. 井戸水を自分の施設の中だけで使うなら、水道法はかかりませんか
A. 施設の中だけでも、居住者100人超か生活用水が1日20m³超なら専用水道として水道法がかかります。専用水道は、寄宿舎・社宅・療養所などの自家用の水道を想定した区分です。どちらも下回れば水道法の外ですが、事業所の飲用井戸には国の要領が毎年1回以上の水質検査を求めています。
Q. 工場で製造に使う地下水も、20m³に数えますか
A. 条文から読める範囲では、製造だけに使う水は数えません。水道法施行規則1条は、数える目的を飲用・炊事用・浴用その他の生活の用としています。どこまでを生活用とみるかは施設ごとに違うため、個別の判断は所管の保健所に確かめます。
Q. 受水槽が10m³以下なら、何もしなくてよいですか
A. 水道法の義務はかかりませんが、国の要領は小規模貯水槽水道にも管理を求めています。飲用井戸等衛生対策要領は、簡易専用水道の管理基準に準じて管理し、毎年1回以上の水質検査を行うこととしています。条例で届出や検査を義務にしている自治体もあります。
Q. 簡易専用水道の検査は、どこに頼めばよいですか
A. 地方公共団体の機関か、国土交通大臣と環境大臣の登録を受けた検査機関に頼みます。登録を受けた機関の一覧は、国土交通省のサイトの「簡易専用水道検査機関登録簿」で確かめられます。
Q. 2026年4月の改正で、専用水道がすぐに確かめることは何ですか
A. PFOS・PFOAの検査の計画と、健康診断の頻度です。PFOS・PFOAの検査はおおむね3か月に1回以上が基本で、これまで検査していない専用水道は令和8年度はこの頻度で検査します。従事者の定期の健康診断は、おおむね1年ごとに改められました。
参考情報
- 水道法、同法施行令・施行規則、水質基準に関する省令(e-Gov法令検索、2026年9月29日時点)
- 国土交通省 平成30年改正の概要、水道の現況(令和7年3月31日現在)、移管の資料、令和7年法律第51号の通知
- 環境省 PFOS・PFOAの水質基準の報道発表、国土交通省 検査頻度の通知、国土交通省・環境省 フォローアップ調査の結果(2025年12月25日)
- 飲用井戸等衛生対策要領、簡易専用水道検査機関登録簿、環境省 簡易専用水道等の検査の委託報告書(令和6年度)
- 環境省 水道における微生物問題検討会の資料、国土交通省 健康被害が出た水質事故の一覧
- 建築物衛生法施行令・施行規則、令和8年環境省令第7号の通知
- 堺市 専用水道の判定フロー、千葉県「専用水道のてびき」、東京都保健医療局 専用水道・簡易専用水道の案内
- 大阪市水道局 地下水等利用専用水道の案内、浜松市上下水道部 地下水等併用届出制度
- 日本大百科全書「水道法」(コトバンク)
