さく井工事とは|読み方から、井戸を掘る工程と期間、届出まで

さく井工事とは|読み方から、井戸を掘る工程と期間、届出まで

さく井工事とは、機械で地面に井戸を掘り、水をくみ上げる設備を据えるまでの工事のことです。

読み方は「さくせい」で、漢字では「鑿井」と書きます。建設業法が定める29種類の建設工事の1つで、国土交通省によると、さく井工事業の許可を持つ業者は令和8年3月末で2,216です。期間は井戸の規模と、どこまでを数えるかで変わります。浅井戸の工事は10〜14日程度が国のガイドラインの目安ですが、深井戸の工期を示す公的な数字は見つかりません。この記事では、施設で井戸を検討する設備担当の方に向けて、工法、工程、期間、届出、業者の見方を、法令と公的な資料で整理します。

この記事でわかること

  • 読み方は「さくせい」:辞書も業界団体も「さくせい」と読み、法令は「さく井工事」と書きます。
  • 工程は国の標準仕様書で決まっている:掘ったあとに、揚水試験と水質試験で水量と水質を確かめます。
  • 期間は「何の日数か」で分けて読む:浅井戸の10〜14日を、施設の深井戸に当てはめることはできません。
  • 届出は場所と使い道で決まる:地下水の採取を全国一律に規制する法律は無く、2つの法律と自治体の条例を確かめます。
目次

さく井工事とは|機械で井戸を掘り、水をくみ上げる設備まで据える工事

さく井工事は、さく井機械で地面に孔や井戸を掘り、それに伴って揚水設備を据える工事です。

国土交通省の告示(昭和47年建設省告示第350号)は、さく井工事の内容を「さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事」と定めています。井戸を掘るだけでなく、水をくみ上げるポンプなどの設置までが、さく井工事の範囲です。

読み方は「さくせい」。漢字では「鑿井」と書く

「さく井工事」の「さく井」は「さくせい」と読み、漢字では「鑿井」と書きます。

デジタル大辞泉と精選版 日本国語大辞典は、どちらも「鑿井」を「さくせい」の読みで載せています。全国さく井協会も、「さくせい」を漢字で書くと「鑿井」で、「鑿」は大工道具の「のみ」とも読む字だと説明しています。

「鑿」は常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)に無い字で、建設業法の業種名も国土交通省の告示も「さく井工事」と書いています。全国さく井協会は、平成18年に協会の名称を「さく井」の表記に改めました。

さく井とは、井戸を掘ること

さく井とは、地下水や石油、温泉などを採るために、機械で地面に井戸を掘ることです。

デジタル大辞泉は、鑿井を「石油や地下水などの採取・探査のために井戸を掘ること。ボーリング。」と説明しています。国の技能検定を実施する中央職業能力開発協会も、さく井を、石油・天然ガスや温泉・水などを採取するための井戸などを掘削することと説明しています。

建設業法の29業種の1つ「さく井工事業」

さく井工事は、建設業法が定める29種類の建設工事の1つで、業種の名前は「さく井工事業」です。

国土交通省は、建設工事が2つの一式工事と27の専門工事の計29種類に分かれ、建設業の許可はこの種類ごとに取ると説明しています。さく井工事は27の専門工事の1つです。

さく井工事に含まれる9つの工事

さく井工事に含まれるのは、井戸を掘る工事のほか、観測井、温泉の掘削、揚水設備の工事など9つです。

次の9つは、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインの例示です。

  • さく井工事
  • 観測井工事
  • 還元井工事
  • 温泉掘削工事
  • 井戸築造工事
  • さく孔工事
  • 石油掘削工事
  • 天然ガス掘削工事
  • 揚水設備工事

さく井工事で掘る井戸|浅井戸と深井戸の違い

井戸は、水を通しにくい地層より上の地下水を取る浅井戸と、下の地下水を取る深井戸に分かれます。

出典浅井戸(浅い地下水)深井戸(深い地下水)
日本地下水学会のQ&A第一難透水層より浅い帯水層の地下水(自由地下水)を取る井戸第一難透水層より深い帯水層の地下水(被圧地下水)を取る井戸
東京都水道局不透水層より上の、深さ10〜30m程度の地下水が浅井戸水不透水層より下の地下水が深井戸水
全国地下水資料台帳(内閣官房のガイドラインの説明)記載なし概ね30m以深を深井戸として扱う
内閣官房「地下水の基礎」概ね20〜30mより浅い地下水を浅層地下水と呼ぶことが多い50〜60mより深い地下水を深層地下水と呼ぶことが多い。明確な深さの定義は無い

日本地下水学会、東京都水道局、内閣官房水循環政策本部事務局の資料をもとに作成(2026年10月確認)

浅井戸と深井戸は、水を通しにくい層の上か下かで分かれる

浅井戸と深井戸の違いは深さの数字ではなく、水を通しにくい地層の上の水を取るか、下の水を取るかです。

内閣官房の「地下水の基礎」は、砂や礫のように地下水が流れやすい地層を帯水層、帯水層どうしを隔てる粘土層などを難透水層と説明しています。地表から浸み込んだ水がそのまま流れる浅い帯水層の水が不圧地下水、難透水層の下で圧力がかかった帯水層の水が被圧地下水です。

深さの目安は資料ごとに違い、決まった定義は無い

浅井戸と深井戸を分ける深さは、資料によって10〜30m、30m、50〜60mと違い、決まった定義はありません。

内閣官房の「地下水の基礎」は、深さの目安を示したうえで「明確な深さの定義があるわけではありません」と書いています。見積書に「深井戸」とあるときは、深さと、どの帯水層から水を取るのかを業者に確かめます。

防災井戸や施設の水源の例は、深さ100m前後の深井戸

自治体の防災井戸と豊の地下水飲料化の井戸は、深さ100m前後まで掘る深井戸です。

東京都練馬区は、区の防災井戸を「深さ100メートル前後の深井戸」と説明しています。千葉県船橋市の防災用井戸は地下100〜150mまで掘り、毎時4〜12トンをくみ上げます。

豊の地下水飲料化システムでは、不透水層の2〜3層下、約100mまで掘ります。深さは敷地の地質で変わります。

さく井工事の工法|4つの掘り方と、向く地層

さく井工事の工法は、パーカッション式、ロータリー式、ダウンザホールハンマ式、回転振動式の4つです。

工法掘り方泥水掘れる深さの目安向く地質
パーカッション式椀ビットを落として打撃で掘る粘土の泥水300m程度未固結堆積層・軟岩層(硬質岩盤には不適)
ロータリー式ビットを回転させて切削するベントナイトの泥水600m程度(水井戸)未固結堆積層・岩盤(玉石層にはやや不適)
ダウンザホールハンマ式高圧空気を使い、ハンマビットの打撃で掘る使わない(空気圧送)200m程度岩盤(未固結層・崩壊層には不適)
回転振動式回転と振動で切削・破砕する清水・ポリマー泥水など120m程度未固結堆積層・玉石(硬質岩盤にはやや不適)

全国さく井協会「さく井工事施工指針」の表をもとに作成

パーカッション式とロータリー式:掘さく泥水を使って掘る

パーカッション式とロータリー式は、どちらも掘さく泥水を使い、打撃か回転で地層を掘り進む工法です。

中央職業能力開発協会の説明では、パーカッション式はワイヤーロープの先端に付けたビットを自由落下させ、その衝撃で掘り進みます。ロータリー式は、ビットと呼ばれる刃先を回転させながら掘り進みます。国の技能検定「さく井」の作業は、この2つの工法に分かれています。

ダウンザホールハンマ式:空気で岩盤を打ち砕く

ダウンザホールハンマ式は、泥水を使わず、高圧空気とハンマビットの打撃で岩盤を掘る工法です。

施工指針の表では、向く地質は岩盤で、固まっていない地層や崩れやすい地層には不適とされています。掘れる深さの目安は200m程度です。

工法は地質と深さで決まる

どの工法を使うかは、掘る場所の地質と深さで決まり、公共工事では工事ごとの仕様で指定されます。

国土交通省の公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編・令和7年版)は、掘さく工法を上の4つとし、「適用は特記による」と定めています。京都府長岡京市が令和8年7月に入札公告を出した小学校の防災井戸の工事は、深さ30mをダウンザホールハンマ工法で掘る内容でした。見積りでは、工法と、それを選んだ地質上の理由を業者に確かめます。

さく井工事の工程|事前調査から揚水試験・水質試験まで

さく井工事は、事前調査、掘さく、ケーシングの挿入、砂利充塡と遮水、仕上げ、揚水試験と水質試験の順に進みます。

全国さく井協会の施工指針は、さく井工事の範囲を、設計と施工計画から、掘さく、検層、ケーシング、砂利充塡、遮水、仕上げ、揚水試験(水質分析)、完成検査を経て、揚水設備の設置、電気工事、揚水試運転までとしています。

事前調査・施工計画規制と地質を調べる掘さく予定の深さまで電気検層地層を測るケーシング・スクリーン管を降ろす砂利充塡・遮水汚水の侵入を防ぐ仕上げ泥壁を除き洗浄揚水試験水量を確かめる水質試験水質を確かめる揚水設備の設置ポンプ・電気工事試運転・完成書類を受け取る濃い色は、発注する施設が結果を確かめる工程(規制の確認、水量、水質)

全国さく井協会「さく井工事施工指針」、国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」令和7年版をもとに作成

事前調査と施工計画

掘る前に、周辺の既設の井戸、法的な規制、地質、周辺環境を調べ、施工計画を立てます。

公共建築工事標準仕様書は、事前調査として、既設井の分布、法的規制、地表探査、周辺環境の調査を挙げています。施工指針は、地下水採取規制のほか、騒音・振動、排水、埋蔵文化財などの規制を関係官庁に確認し、協議するとしています。

掘さくと電気検層

予定の深さまで掘ったあと、電気検層で地層を測り、水を取り入れる位置を決めます。

標準仕様書は、地表部の陥没を防ぐために孔口保護管を設置し、電気検層は掘さくが終わってからケーシングを降ろすまでに行うと定めています(ダウンザホールハンマ式を除く)。全国さく井協会は、予定の深度まで掘ったら電気検層などを行い、スクリーンの深度を決めると説明しています。

ケーシングとスクリーンの挿入

掘った孔には、ケーシングと呼ぶ管と、帯水層から水を取り入れるスクリーンを降ろします。

標準仕様書は、ケーシングの管材を、配管用ステンレス鋼鋼管、配管用炭素鋼鋼管の黒管、硬質ポリ塩化ビニル管から工事ごとに指定するとしています。

砂利充塡と遮水

ケーシングと孔の壁のあいだに砂利を詰め、その上をセメントや粘土でふさいで、汚れた水の侵入を防ぎます。

標準仕様書は、砂利充塡をする場合の掘さく孔径をケーシング径+150mm以上とし、汚水の侵入を防ぐため、充塡した砂利の上部にセメンチングか粘土による遮水をするよう定めています。全国さく井協会は、砂利充てんの目的を、防砂、スクリーンとケーシングの固定、孔壁の崩壊防止と説明しています。遮水は、地表の水や水質のよくない帯水層の影響を井戸に入れないための工程です。

浅い帯水層不圧地下水難透水層水を通しにくい層帯水層被圧地下水難透水層帯水層被圧地下水難透水層地表遮水セメンチングまたは粘土でふさぐケーシング孔を保つ管スクリーン帯水層から水を取り入れる水中ポンプと揚水管揚水設備充塡砂利砂を止め、管を固定する模式図。深さ、層の数、スクリーンの位置は、敷地の地質と電気検層の結果で決まる

国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」令和7年版、全国さく井協会の解説、内閣官房「地下水の基礎」をもとに作成

仕上げ(井戸の洗浄)

仕上げは、スクリーンのまわりに付いた泥の壁を取り除き、水が出やすい状態にする工程です。

全国さく井協会は、スクリーン周囲の泥壁を除去し、水がよく出るようにすることを「仕上げ」と呼ぶと説明しています。標準仕様書は、ベーリング法で井戸の中を洗浄したあと、スワビング法で泥壁を除去するとしています。

揚水試験:くみ上げられる水量を確かめる

揚水試験は、実際に水をくみ上げて、その井戸から無理なく取れる水量を確かめる試験です。

標準仕様書は、予備揚水試験、段階揚水試験、連続揚水試験、水位回復試験の4つを行うと定めています。段階揚水試験で限界揚水量と適正揚水量を求め、連続揚水試験は24時間以上続けて測定し、水位回復試験は1時間以上測定します。施設で1日に使う水量をまかなえるかどうかは、この試験の結果で判断します。

水質試験と、揚水設備の設置

水質試験で水質を確かめたあと、ポンプなどの揚水設備を据えて試運転をします。

標準仕様書は、水質試験を公立の保健所、試験所または認定の分析機関で実施し、飲料水に使う場合は水道法にもとづく「水質基準に関する省令」によると定めています。検査の項目と頻度は水質検査の項目と頻度で、ポンプの点検は給水ポンプの点検と交換の目安で解説しています。

さく井工事の期間|井戸の規模と、どこまでを数えるかで変わる

さく井工事の期間は、井戸の規模と、掘削だけか、試験・設備・手続きまで含めるかで大きく変わります。

何の日数か日数出典含まれるもの・条件
浅井戸の工事期間10〜14日間程度内閣官房「災害時地下水利用ガイドライン」浅井戸の目安。施工条件による。水質試験は別に必要
水質試験約2週間〜1か月同上工事とは別にかかる
連続揚水試験24時間以上国土交通省 公共建築工事標準仕様書4つの揚水試験のうちの1つ
深さ30mの防災井戸の工期(公共工事の例)93日間京都府長岡京市の入札公告(令和8年7月)さく井工、井戸設備、電気設備、雨水排水設備、管理施設の工事を含む
専用水道の確認申請の受理から30日以内に通知水道法33条飲料水として供給する場合の手続き
仮契約から給水開始まで(豊の地下水飲料化)最短9か月豊の導入の流れ掘削、水質検査、浄水設備の設置、専用水道の申請を含む

各資料をもとに作成(2026年10月確認)。日数は対象と範囲が違うため、足したり比べたりする数字ではない

深井戸の工期を示す公的な数字は見つからない

深井戸のさく井工事に何日かかるかを示した公的な数字は、国の仕様書にも業界団体の指針にも見つかりません。

公共建築工事標準仕様書と、全国さく井協会の施工指針・ウェブサイトを確かめましたが、工期の日数の記述はありませんでした(2026年10月確認)。内閣官房のガイドラインも、井戸の掘削深度や掘削方法に応じて、工事期間や工事費用が大きく変化するとしています。深井戸の工期は、見積りの工程表で確かめます。

浅井戸は10〜14日程度が国の目安

浅井戸の工事期間は、施工条件によるものの、10〜14日間程度が国のガイドラインの目安です。

内閣官房の「災害時地下水利用ガイドライン」(令和7年12月改訂)は、浅井戸の工事期間の目安を10〜14日間程度とし、水質試験には別に約2週間〜1か月が必要としています。これは浅井戸の目安で、施設の水源にする深井戸の日数ではありません。

報道では、2026年7月に熊本県で起きた地震のあと、家庭の井戸の掘り直しについて、朝日新聞(2026年9月)が「井戸の掘削には1週間〜10日程度かかる」と伝えています。これも家庭の井戸の例です。

公共の実例:深さ30mの防災井戸で工期93日

京都府長岡京市が令和8年7月に入札公告を出した小学校の防災井戸の工事は、深さ30mで工期93日間でした。

同市の入札公告には、さく井工(井戸径100mm・ダウンザホールハンマ工法)30mと、井戸設備、電気設備、雨水排水設備、管理施設の工事をあわせて、契約日の翌日から令和8年12月2日までの93日間と書かれています。93日は、掘削だけでなく、設備と電気の工事を含む日数です。年度初めの発注見通しでは深さ50m・工期120日とされており、公告の段階で内容が変わっています。1件の例で、標準の日数ではありません。

試験と手続きにかかる時間

掘ったあとの揚水試験と水質試験、飲料水にする場合の専用水道の確認にも、それぞれ時間がかかります。

揚水試験と水質試験にかかる時間は、上の表のとおりです。専用水道の確認は、水道法33条で、申請を受理した日から30日以内に書面で通知すると定められており、千葉県は標準処理期間を30日間と案内しています。

飲料水として使うまでは、最短で9か月(豊の場合)

豊の地下水飲料化では、仮契約から飲料水の給水開始まで、最短で9か月かかります。

井戸を掘ったあとに、原水の水質検査、浄水設備の設計と設置、専用水道の申請(1.5か月ほど)が続くためです。9か月は最短の工程で、水質、揚水試験の結果、官庁との協議によって数か月ほど延びる場合があります。11の工程は導入の流れで開示しています。

井戸を掘る前に確かめる届出と規制

井戸を掘る前には、地下水の採取の規制と、飲料水として配る場合の専用水道の手続きを確かめます。

制度対象手続き
工業用水法指定地域(10都府県17地域)で、工業用に地下水を採る井戸事前に許可
ビル用水法(建築物用地下水の採取の規制に関する法律)指定地域(4都府県4地域)で、冷房や水洗便所などに使う地下水を、動力を使う一定の規模を超える設備で採る場合設備ごとに知事(指定都市は市長)の許可
自治体の条例・要綱都道府県31件、市区町村370件(令和7年3月現在)届出、許可、採取量の報告など。自治体ごとに違う
水道法(専用水道)100人を超える人に居住に必要な水を供給する、または1日最大給水量が20m³を超える自家用の水道など工事に着手する前に、知事の確認
温泉法温泉をゆう出させる目的の掘削知事の許可

国土交通省、内閣官房、環境省、大阪府の説明、水道法、温泉法をもとに作成(2026年10月確認)。指定地域と条例の中身は、所在地の自治体で確かめる

地下水の採取:全国一律の法律は無く、2つの法律と条例で決まる

地下水の採取を全国一律に規制する法律は無く、2つの法律の指定地域と、自治体の条例で決まります。

国土交通省と内閣官房は、2026年3月の発表で「地下水については、全国一律でその採取を規制する法律がなく、地域の実情に応じて、自治体が条例により採取の届出や許可等の規制を実施」していると説明しています。法律は、工業用の地下水を対象とする工業用水法と、建築物用の地下水を対象とするビル用水法の2つで、「用水二法」と呼ばれます。

環境省の資料(令和8年3月)によると、地下水採取に関する条例・要綱は、令和7年3月現在で都道府県に31件、市区町村に370件あります。

飲料水として配るなら、専用水道の確認を受ける

井戸水を飲料水として施設に供給し、専用水道に当たる場合は、工事の前に知事の確認を受けます。

専用水道は、自家用の水道などで、100人を超える人に居住に必要な水を供給するもの、または1日最大給水量が20m³を超えるものです。水道法32条は、専用水道の布設工事をする者は、着手する前に知事の確認を受けなければならないと定めています。申請に添える工事設計書には、水源の種別と取水地点、水源の水量の概算と水質試験の結果、浄水方法などを書きます。

騒音・排水・埋蔵文化財も、掘る前に確かめる

採取の規制のほかに、工事の騒音と振動、排水、埋蔵文化財、農地などの規制も、掘る前に確かめます。

施工指針は、事前の法的規制調査の確認先として、地下水採取規制、自然公園法、農地法、騒音規制法・振動規制法、水質汚濁防止法、河川法、文化財保護法を挙げています。温泉をゆう出させる目的で掘る場合は、温泉法3条で知事の許可が要ります。届出や協議を業者と施設のどちらが行うのかは、契約の前に決めておきます。

井戸を掘れる敷地かどうかを、先に確かめる

地下水を施設の水源に加えられるかどうかは、上水道の使用量と設置スペースから判定できます。地下水を浄水処理して施設の給水に使う仕組みは地下水飲料化システムのページで紹介しています。

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さく井工事を頼む業者の見方|許可・資格・受け取る書類

さく井工事を頼む業者は、建設業の許可、技術者の資格、完成時に出す書類の3つで確かめます。

資格根拠国土交通省の資格一覧での扱い(さく井工事業)
技術士(上下水道部門「上下水道及び工業用水道」、総合技術監理部門の同じ選択科目)技術士法特定建設業の技術者(監理技術者)にもなれる
1級さく井技能士職業能力開発促進法(技能検定)一般建設業の技術者(主任技術者)になれる
登録さく井基幹技能者登録基幹技能者講習一般建設業の技術者になれる(実務経験10年以上の場合)
2級さく井技能士職業能力開発促進法(技能検定)合格後3年以上の実務経験で、一般建設業の技術者になれる

国土交通省「建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧」(2025年12月18日施行)をもとに作成。施工管理技士など、実務経験を付けて認められる資格はほかにもある

さく井工事業の許可業者は2,216。29業種で2番目に少ない

さく井工事業の許可を持つ業者は、令和8年3月末で2,216あり、29業種のなかで2番目に少ない業種です。

国土交通省の調査では、建設業の許可業者は全国で48万3,823あり、そのうちさく井工事業の許可を持つのは2,216(約0.5%)です。平成12年3月末の3,414からは35.1%減っています。

500万円以上の工事は、建設業の許可が要る

請負代金が1件500万円以上のさく井工事を請け負うには、さく井工事業の許可が要ります。

国土交通省は、建築一式工事以外の建設工事について、1件の請負代金が500万円未満(消費税込み)の工事を「軽微な建設工事」とし、これだけを請け負う場合は許可が要らないと説明しています。許可の有無と業種は、業者の許可通知書の写しか、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確かめられます。

技術者の資格:さく井技能士・登録さく井基幹技能者・技術士

さく井工事の技術者の資格には、さく井技能士、登録さく井基幹技能者、技術士があります。

さく井技能士は、職業能力開発促進法にもとづき昭和57年から続く国家資格で、パーカッション式とロータリー式の2つの作業に、それぞれ1級と2級があります。全国さく井協会の施工指針は、さく井工事の施工と管理はさく井技能士が行うとしています。見積りの段階で、現場を担当する技術者の資格を確かめます。

完成時に受け取る書類と、立ち会う場面

完成時には、総合柱状図、施工地点の位置図、揚水試験成績書、水質試験成績書を受け取ります。

公共建築工事標準仕様書は、報告書として、総合柱状図(地質柱状図・井戸構造図・電気検層図)、施工地点位置図、揚水試験成績書、水質試験成績書を挙げています。施工指針は、工事写真、ケーシング材のミルシート、揚水設備の図面などを加えた9項目を報告書に載せ、完成時の資料を紛失しないよう保管するとしています。

標準仕様書は、公共工事の揚水井で、掘さく完了後の深度確認、ケーシングとスクリーンの据付け、砂利充塡の3つの場面に、監督職員が立ち会うと定めています。民間の工事でも、同じ場面で立ち会えるか、同じ書類を受け取れるかを、契約の前に確かめます。

費用は条件で変わる:国が示す浅井戸の参考単価

さく井工事の費用は掘る径・地質・深さで大きく変わり、国が示しているのは浅井戸の参考単価だけです。

内閣官房のガイドラインは、浅井戸の掘削単価の参考として、深さ0〜30mくらいまでで1mあたり10万円前後(直接工事費)を示しています。条件は、掘削径200mm、口径125mmの塩ビ管、ロータリー式、砂質土か礫混じり土、取水深度30m程度です。掘削工事費とケーシングなどの材料費は含みますが、揚水ポンプと電気工事の費用は含みません。同じ資料は、掘削径、地質状況、作業内容などで大きく異なるとしています。

深井戸の費用の目安を示した公的な資料は見つかりません。見積りは、次の項目が揃っているかを並べて比べます。

  • 掘る深さと径、工法
  • ケーシングとスクリーンの材質
  • 揚水試験と水質試験が含まれているか
  • 揚水設備と電気工事が含まれているか
  • 水量や水質が届かなかった場合の扱い

掘ったあとの維持管理と、災害時に起きること

井戸は完成後も水量・砂・濁り・水位の点検が要り、災害のあとは掘れる業者が足りなくなることがあります。

井戸の不調のサイン:水量・砂・濁り・水位

井戸の不調は、揚水量の減少、砂の増加、水温や濁りの変化、運転中の水位の低下に表れます。

全国さく井協会は、井戸の障害を確かめるポイントとして、揚水量の減少、揚砂量の増加、水質(水温・にごり)の変化、運転水位の低下の4つを挙げています。施工指針は、適正揚水量での比湧出量が完成時の80%以下になったときに、洗浄を実施することが望ましいとしています。完成時の揚水試験の記録が、比べる元の数字になります。

災害のあとは、掘れる業者が足りなくなることがある

2026年7月に熊本県で起きた地震のあと、熊本県は、被災した井戸を掘り直す業者を全国から募集しました。

県は、県内だけでは掘削ができる業者の数に限りがあり、掘り直しを希望する人は長期間待たなければならないことが想定されると説明しています。

災害用井戸に取り組む市区町村は約32%

災害用井戸の取組をしている市区町村は、内閣官房の調査に回答した1,490のうち約32%です。

内閣官房の災害用井戸施策実態調査では、民間が所有する災害用井戸は延べ31,994で、そのうち企業のものが2,665、病院のものが106でした(複数回答)。国は令和7年3月に「災害時地下水利用ガイドライン」を公表し、同年12月の改訂で、公共が新しく井戸を掘る場合の記述を加えています。

断水への備え全体は断水に備えるBCP対策で、断水が続く日数は断水はいつまで続くかで解説しています。井戸の水を建物へ送る配管の備えは、給水管の老朽化と更新の目安で整理しています。

豊の地下水飲料化では、掘削の費用と「出なかったとき」を当社が負う

豊の地下水飲料化システムでは、井戸の掘削の費用も、水が基準に届かなかったときの費用も、当社が負担します。

豊の仕組みでは、仮契約の段階で井戸を掘り、原水の水質を39項目検査します。水質と水量が基準に届かなければ撤退し、要した費用は請求しません。土地の原状復旧も当社の負担です。掘削は敷地の一角で行うため、施設の営業は続けられます。

豊は、さく井工事業者ではありません。豊は代理店として窓口を担い、井戸の掘削は、システムを運営する供給事業者が契約する井戸業者が行います。料金は従量制で、契約期間は10〜18年です。仕組みは地下水の活用とBCP対策としての井戸で紹介しています。

自社の施設で井戸を掘れるか、数字で確かめる

上水道の使用量と設置スペースがわかれば、地下水を施設の水源に加えられるかどうかを判定できます。掘削の費用と、水が出なかった場合の扱いもあわせてご案内します。導入後の保守はサポート体制のページで紹介しています。

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さく井工事についてのよくある質問

Q. 「さく井」は「さくい」と読みますか

A. 「さくせい」と読みます。デジタル大辞泉と精選版 日本国語大辞典は「鑿井」を「さくせい」の読みで載せ、全国さく井協会も国の技能検定も「さくせい」と読んでいます。

Q. さく井工事とボーリング工事は同じですか

A. 辞書は鑿井を「井戸を掘ること。ボーリング」と説明しています。建設業法の業種名は「さく井工事」で、井戸を掘る工事と揚水設備の設置がここに入ります。見積書に「ボーリング」とある場合は、井戸として仕上げる工事(ケーシング、揚水試験、揚水設備)まで含むかを業者に確かめます。

Q. 井戸を掘るのに何日かかりますか

A. 井戸の規模によります。浅井戸は10〜14日間程度が国のガイドラインの目安です。深井戸の公的な目安は見つかりません。公共工事では、深さ30mの防災井戸で、設備と電気の工事を含めて工期93日間の例があります。見積りでは、掘削だけの日数と、試験・設備・手続きを含めた日数を分けて出してもらうと、工程を比べやすくなります。

Q. 敷地に井戸を掘るのに、許可や届出は要りますか

A. 場所と使い道によります。地下水の採取を全国一律に規制する法律は無く、工業用水法とビル用水法の指定地域、自治体の条例で決まります。飲料水として100人を超える人に供給するか、1日最大給水量が20m³を超える場合は、専用水道として工事の前に知事の確認が要ります。まず、所在地の都道府県と市区町村の地下水の担当窓口で確かめます。

Q. 掘っても水が出なかったら、費用はどうなりますか

A. 請負工事では、契約の決め方によります。見積りの段階で、水量や水質が届かなかった場合に費用をどう扱うかを書面で確かめます。豊の地下水飲料化では、仮契約の段階で掘り、水質と水量が基準に届かなければ撤退して、要した費用は請求しません。

参考情報

  • 国土交通省 建設業許可の案内、昭和47年建設省告示第350号、建設業許可事務ガイドライン
  • 国土交通省「建設業許可業者数調査の結果」(令和8年3月末現在)
  • 国土交通省「建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧」(2025年12月18日施行)
  • 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」令和7年版
  • 全国さく井協会「さく井工事施工指針」、さく井・井戸の改修・災害用井戸・さく井技能士の解説
  • デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典「鑿井」、常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)
  • 中央職業能力開発協会 技能検定「さく井」の説明
  • 日本地下水学会 Q&A、東京都水道局の水源の解説、内閣官房「地下水の基礎」
  • 内閣官房水循環政策本部事務局「災害時地下水利用ガイドライン」(令和7年12月改訂)、災害用井戸施策実態調査
  • 国土交通省・内閣官房 地下水の適正な保全と利用に関する検討会の発表(2026年3月)、地下水の採取規制の解説
  • 環境省 全国の地盤沈下地域の概況(令和6年度版)
  • 大阪府 工業用水法の案内
  • 水道法、温泉法、国土交通省 水道の種類の資料、千葉県 専用水道の確認の案内
  • 京都府長岡京市 防災井戸整備工事の入札公告(令和8年7月)、令和8年度の発注見通し
  • 熊本県 被災井戸の復旧に向けた井戸掘削業者の募集(2026年9月)、朝日新聞の報道(2026年9月)
  • 東京都練馬区、千葉県船橋市 防災井戸の案内
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