断水がいつまで続くかは原因で決まり、工事なら数時間、水道管の事故なら数日、大きな地震では一部地域を除いても数か月に及びます。
断水とは、水道の給水が止まること、または止めることです。いま断水している地域の見通しは、その地域の水道事業者(市町村の水道局など)が出す発表でしか確かめられません。この記事では、それを確かめる方法を先に示したうえで、国や自治体の資料に残る過去の記録から、原因ごとに断水が何日続いたかを並べます。後半では、復旧の「断水解消」が何を指すか、トイレと水の備え、学校・工場・病院が断水で何を失うかまで整理します。
この記事でわかること
- 長さは原因で決まる:工事の計画断水は数時間、水道管の事故や寒波は数日〜1週間、大雨で水源側が壊れると数週間、最大震度7の地震では一部地域を除いても1か月以上。
- 「断水解消」は蛇口の復旧ではない:国の定義では水道本管まで水が通ること。宅内の配管や水質の確認が残り、家で使えるのはそのあとです。
- 施設は受水槽の残りで持ちこたえる日数が決まる:学校・工場・病院は止まるものが違います。長い断水に備えて、水道とは別の水源を持つ方法もあります。
断水はいつまで続くのか|原因別の目安
断水の長さは、工事なら数時間、管の事故や寒波で数日〜1週間、大雨で数週間、大地震は一部地域を除いた最大で1か月以上です。
国や自治体が公表している記録から、原因ごとの長さと実例を1枚にまとめました。同じ原因でも、壊れた場所と規模で日数は大きく変わります。
| 原因 | 断水の長さの目安 | 実例 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 工事の計画断水 | 数時間 | 豊中市 13時〜16時/大阪市 22時〜翌5時 | 各市の断水のお知らせ |
| 水道管の破損・事故 | 1日〜1週間 | 沖縄本島 2025年11月24日発生、7市町の断水が27日17時までに解消/和歌山市 2021年10月 約6万世帯が約6日間 | 沖縄県企業局、和歌山市 |
| 寒波による凍結・破裂 | 数日〜1週間 | 2023年1月 11県21事業者で最大約14,242戸/伊東市 2026年2月 約1週間で全域解消 | 内閣府、静岡新聞 |
| 大雨・台風 | 1〜5週間 | 呉市 2018年7月7日〜8月2日/丸森町 2019年10月13日〜11月14日 | 国土交通省、厚生労働省 |
| 大きな地震 | 数日〜約5か月(一部地域を除いた最大) | 東日本大震災 約5か月(津波地区等除く)/能登半島地震 2024年 約5か月(建物倒壊地域等を除く) | 国土交通省 |
各出典は本文と参考情報に記載。地震の日数は国土交通省の表の「最大断水日数」で、括弧の地域は含まない
工事の計画断水は数時間
水道工事のための計画断水は、昼か夜の数時間で終わるように組まれ、事前に知らされます。
豊中市の例は13時から16時まで、横須賀市は13時30分から17時まで、大阪市には22時から翌朝5時までの夜間の例があります。横須賀市は「終了時間は、状況により変更となることがあります」と断っていて、予定より延びることもあります。豊中市は工事の断水について、事前に「断水のお知らせ」の文書を配っています。
水道管の破損・事故は1日から1週間
水道管の破損による断水は、1日から1週間ほどで解消した例が並びます。導水管のような太い管では範囲が市町をまたぎます。
沖縄本島では2025年11月24日、1967年に布設した直径750mmの導水管が壊れ、本島中南部の7市町で断水が起きました。沖縄県企業局の発表では、この7市町の断水は11月27日17時までにすべての区域で解消しています。和歌山市では2021年10月3日に紀の川に架かる水管橋が落ち、約6万世帯が約6日間断水しました。
背景には管の古さがあります。法定耐用年数の40年を超えた管の割合(管路経年化率)は全国で25.4%、1年間に更新される管は0.61%です(総務省、令和5年度決算)。国土交通省の資料では、漏水や破損の事故は年間2万件を超えています。
寒波による凍結・破裂は数日から1週間
寒波では給水管の凍結や破裂が相次ぎ、断水が数日から1週間ほど続いた例があります。
国土交通省は、最低気温が−4℃以下になるときは凍結に特に注意するよう呼びかけています。2023年1月の寒波では、11県の21事業者で最大約14,242戸が断水しました(内閣府)。静岡県伊東市では2026年2月の寒波で給水管の破裂が相次ぎ、最大5000世帯が断水し、約1週間で全域が解消したと静岡新聞が報じています。
大雨・台風で水源や導水管が壊れると1〜5週間
大雨や台風で浄水場や導水管が壊れると、断水は1週間から5週間ほど続いた例があります。
鹿児島県姶良市では2025年8月の大雨で導水管が川底で壊れ、約1万5000世帯が断水しました。市内の全面解消は8月19日14時30分です。2018年の西日本豪雨では最大263,593戸が断水し、呉市は7月7日から8月2日まで続きました。一部地域を除き全域で解消したのは8月13日で、飲み水としての利用を控えるよう求める給水は9月中旬まで残っています(国土交通省)。2019年の台風19号では約167,986戸が断水し、宮城県丸森町は10月13日から11月14日まででした(厚生労働省)。
大きな地震では1か月から5か月(一部地域を除く)
最大震度7の地震では、断水の最大日数は一部地域を除いても1か月から約5か月に及んでいます。
国土交通省の表に載る震度7の6回(阪神・淡路、新潟中越、東日本、熊本、北海道胆振東部、能登半島2024年)は、いずれも最大断水日数が1か月以上です(東日本の「津波地区等除く」、熊本の「家屋等損壊地域除く」など、表の除外条件を付けた値)。一方、震度6弱の大阪府北部の地震は2日、鳥取中部の地震は4日でした。数字には除外された地域があるので、次の章の表で条件ごと確かめてください。
いま断水している地域の「いつまで」を確かめる方法
いま断水しているなら、見通しは住んでいる市町村の水道事業者のサイトや公式SNSの発表で確かめます。
断水の原因と範囲を知っていて、復旧の段取りを組むのは水道事業者だけです。記事やまとめサイトの日数は過去の例で、いまの断水の答えにはなりません。確かめる先は次のとおりです。
- 水道事業者のサイトの断水情報:東京都水道局は23区と多摩に分けた「断水・濁水情報」のページを置いています。大阪市は配水管工事の計画断水のうち、100戸以上のものをサイトに載せています。
- 水道事業者の公式X(旧Twitter):横須賀市は作業の知らせを「ホームページおよび公式X(旧Twitter)」で出すとしています。
- 事前に配られる文書:工事の断水なら、豊中市のように事前に「断水のお知らせ」が配られます。
突発的な事故では、知らせが後になることがあります。豊中市も「水道管破裂等の突発的事故により、お知らせできない場合があります」と書いています。日本水道協会の地震時の手引きは、水道事業者が「極力、通水時期を示すことが出来るように努める」としています。見込みが出ていない段階では、発表の更新を待つのが確かです。
水道事業者の断水情報に載っていないのに、自分の建物だけ水が出ないときは、受水槽のポンプなど建物の中の設備が止まっている場合があります。そのときの問い合わせ先は、建物の管理者や管理会社です。
過去の地震で、断水は何日続いたか
過去の主な地震の断水は2日から約5か月まで幅があり、長さは震度より「どの施設が壊れたか」で決まります。
国土交通省がまとめた表を、除外条件を落とさずに写しました。最後の行は2026年7月の地震で、同省の発表から足しています。
| 地震 | 発生 | 最大震度 | 断水戸数 | 最大断水日数(除外条件) |
|---|---|---|---|---|
| 阪神・淡路大震災 | 1995年1月17日 | 7 | 約130万戸 | 約3か月 |
| 新潟中越地震 | 2004年10月23日 | 7 | 約13万戸 | 約1か月(道路復旧等の影響地域除く) |
| 能登半島地震 | 2007年3月25日 | 6強 | 約1.3万戸 | 14日 |
| 新潟中越沖地震 | 2007年7月16日 | 6強 | 約5.9万戸 | 20日 |
| 岩手・宮城内陸地震 | 2008年6月14日 | 6強 | 約5.6千戸 | 8日(全戸避難地区除く) |
| 駿河湾を震源とする地震 | 2009年8月11日 | 6弱 | 約7.5万戸(緊急遮断弁の作動による) | 3日 |
| 東日本大震災 | 2011年3月11日 | 7 | 約256.7万戸 | 約5か月(津波地区等除く) |
| 長野県神城断層地震 | 2014年11月22日 | 6弱 | 約1.3千戸 | 25日 |
| 熊本地震 | 2016年4月14・16日 | 7 | 約44.6万戸 | 約3か月半(家屋等損壊地域除く) |
| 鳥取中部地震 | 2016年10月21日 | 6弱 | 約1.6万戸 | 4日 |
| 大阪府北部を震源とする地震 | 2018年6月18日 | 6弱 | 約9.4万戸 | 2日 |
| 北海道胆振東部地震 | 2018年9月6日 | 7 | 約6.8万戸 | 34日(家屋等損壊地域除く) |
| 福島県沖の地震 | 2021年2月13日 | 6強 | 約2.7万戸 | 6日 |
| 新潟県沖の地震 | 2022年3月16日 | 6強 | 約7.0万戸 | 7日 |
| 能登半島地震 | 2024年1月1日 | 7 | 約13.6万戸(6県) | 約5か月(建物倒壊地域等を除く) |
| 令和8年熊本地震 | 2026年7月28日 | ― | 最大約10万8千戸 | 8月28日に全水道本管の応急復旧が完了 |
出典:国土交通省「水道施設の耐震化の推進」内の表「最近の主な地震と水道の被害状況」。令和8年熊本地震は国土交通省の報道発表(最大震度は同発表の該当箇所を取得していないため空欄)。鳥取中部地震の発生日は、国土交通省の表では10月31日と記載されているが、気象庁の記録に合わせて10月21日とした
表の日数は「最大」で、除外された地域がある
表の日数は、除外された地域を除いた最大の日数です。除外された地域では、断水がそれより長く続いています。
2024年の能登半島地震では、石川県内だけで最大約11万戸、6県では最大約13.6万戸が断水しました(国土交通省、2024年6月時点の資料)。輪島市・珠洲市の早期復旧困難地域を除き、水道本管の復旧が済んだのは5月31日で、表の「約5か月」はここを指します。残る地域は2024年12月時点で691戸、2025年6月時点で133戸あり、国は本復旧を令和10年度末までに終える目標を示しています。同じ2024年9月の豪雨では5,216戸が新たに断水し、12月20日にすべて復旧しました。
断水が長引く3つの理由
断水が長引くのは、水源や浄水場が壊れたとき、管の被害に人手が追いつかないとき、停電が続くときです。
- 水源・浄水場とそこへの道が壊れる:石川県は能登の断水が長引いた理由を、大元の浄水場の損傷と浄水場に通じる道路の被害、配水管の広い範囲の損傷と説明しています。東日本大震災では、受けていた用水供給が止まった地域で約2か月、水源や拠点施設が津波の被害を受けた地域で1〜4か月かかりました。
- 管の被害が多く人手が足りない:東日本大震災では、管路の被害が多く人員が足りない事業体で、断水の解消まで2〜3か月かかりました。応急復旧の体制に支障が少なかった仙台市・福島市・千葉県水道局は10〜18日です。
- 停電でポンプが動かない:東日本大震災の断水約257万戸のうち、約30%にあたる約76万戸は停電が原因でした。4月7日の余震では24.3万戸が再び断水しています。
管そのものの強さも影響します。地震に耐えられる基幹管路の割合(耐震適合率)は、2024年度末で全国44.56%です(国土交通省)。
「断水解消」は、蛇口から普段どおり水が出る日ではない
国の資料でいう「断水解消」は水道本管まで水が通ることで、家や施設の蛇口から普段どおり出る日とは違います。
国土交通省は資料の中で「断水解消とは、修繕等により水道本管まで通水可能になることをいう」と注記しています。その先の配水支管、建物の中の配管(宅内配管)が壊れていれば、「解消」のあとも水は使えません。
石川県の公表資料(令和6年2月2日)の復旧の順番と、水道の耐震化計画等策定指針(平成27年)の応急給水の目標をもとに作成
復旧は水の流れの順に進む
水道の復旧は、取水・浄水場から始まり、送水管・配水本管、配水支管、宅内の順に、水の流れに沿って進みます。
石川県の資料は、①浄水場の上流側の施設と管路、②浄水場の下流側から配水本管、③配水支管の漏水調査と復旧、④宅内、の順を図で示しています。浄水場から蛇口へ向かう水の流れと同じ並びです。
国の目標もあります。厚生労働省が平成27年に定めた「水道の耐震化計画等策定指針」は、応急復旧の期間を2週間以内、病院や避難所などへつながる管は1週間以内とするのが望ましいとしています。水道行政は2024年4月に国土交通省へ移り、同省の令和8年3月の「地震対策マニュアル策定指針」も同じ目標を引いています。この指針は、発災から24時間以内に避難所や医療施設などへの水の供給に全力を挙げる、としています。
復旧までの間に配る水の量も、段階ごとに目標があります。発災から3日までは1人1日3リットル(おおむね1km以内で受け取る)、7日目には20〜30リットル(約250m以内)、14日目には被災前と同じ約250リットル(約10m以内)です。20リットルは飲み水と洗面の分、トイレを流す分を含めると30リットルとされています。
解消のあとも、宅内配管・濁り・飲用制限が残る
本管の断水が解消しても、宅内配管の修理、濁りの確認、飲み水としての制限が残り、すぐには普段どおりに使えません。
2024年の能登半島地震では、国の委員会の報告書が「個人が管理する宅内配管の復旧が遅れ、家庭で水が使えない状況が長期化した」とまとめています。同じ報告書は、宅内配管が壊れているのに本管の復旧を「断水解消」と呼んだことで誤解が生じた例も挙げています。
水質も確かめる必要があります。国の指針は、水質検査が終わっていなければ、飲用を制限して配水することを検討するとしています。2018年の西日本豪雨では、愛媛県宇和島市三間地区で断水が解消したあと、9月12日までの41日間、飲み水としての利用が制限されました。和歌山市の2021年の断水でも、紀の川以北の全域で飲料水として使えるようになった時刻(10月10日20時)を、通水とは別に発表しています。
断水中のトイレはどうするか
断水中は、建物の配管が無事だと分かるまで水洗トイレを流さず、携帯トイレを1人1日5回分使います。
断水していても便器そのものは使えます。問題は、流した先の排水管が壊れているかどうかが、外からは分からないことです。
配管が壊れていると、流した水が逆流する
地震のあとは、排水管が壊れていると流した水や汚水が逆流するため、確認できるまで流さないのが原則です。
東京都下水道局は、配管が壊れている状態で流すと汚水が逆流したり噴き出したりし、集合住宅では「下の階のお宅へ汚水が逆流する場合があります」と注意を呼びかけています。神奈川県も、排水管の損傷に気付かずに使うと下の階で汚水があふれるおそれがあるとしています。バケツの水で流す方法は、配管の無事が確かめられてからの話です。
携帯トイレは1人1日5回を、まず3日分
携帯トイレは、1人1日5回を目安に、人数と日数を掛けて用意します。まず3日分、できれば7日分です。
内閣府の「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」は、トイレの平均的な使用回数を1日5回としています。神奈川県は「最低3日分、可能であれば7日分」、経済産業省は1人あたり35回分(7日分)の備蓄を呼びかけています。4人の家庭なら、3日分で60回分、7日分で140回分です。
断水への備え|水は1人1日3リットルを最低3日分
断水に備える飲み水は1人1日3リットルを最低3日分、大きな災害に備えるなら1週間分が目安です。
農林水産省は、飲料用と調理用だけで1人1日3リットル、最低3日分として9リットルと示しています。首相官邸の案内は、大規模災害に備えて1週間分の備蓄が望ましいとし、飲料水とは別にトイレを流すための生活用水も必要だとしています。量の目安を1枚にまとめると次のとおりです。
| 用途 | 量の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 飲み水(飲料・調理) | 1人1日3リットル。最低3日分(9リットル)、大規模災害には1週間分 | 農林水産省、首相官邸 |
| トイレ(携帯トイレ) | 1人1日5回×日数。最低3日分、できれば7日分 | 内閣府、神奈川県、経済産業省 |
| 断水から1週間後の給水目標 | 1人1日20〜30リットル(20リットルは飲み水と洗面、トイレを流す分を含めて30リットル) | 水道の耐震化計画等策定指針 |
| 普段の使用量 | 1人1日約250リットル | 同上 |
給水目標は水道事業者が配る水の量の目標で、家庭の備蓄量の基準ではない
企業の備えには差があります。内閣府の令和7年度の調査(備蓄の設問は大企業・中堅企業あわせて1,759社が回答)では、飲料水を3日分以上備えている企業は大企業で66.1%、中堅企業で43.0%でした。簡易トイレを備えていない中堅企業は37.1%です。事業継続計画(BCP)の策定率は大企業75.8%、中堅企業54.8%でした。施設の水の備えを計画に落とす手順は、事業継続計画(BCP)と水の確保の記事で詳しく扱っています。
施設が断水したとき、何が止まるか
施設が断水すると、学校は給食とトイレ、工場は生産と洗浄、病院は医療そのものが止まるおそれがあります。
どの施設も、最初に水を支えるのは受水槽に残っている水です。受水槽が空になるまでの日数が、断水に耐えられる日数になります。
学校:給食・トイレ・避難所の運営
学校が断水すると給食とトイレが止まり、避難所に指定されていれば避難者の生活用水も要ります。
2025年11月の沖縄本島の断水では、与那原町の小中学校3校が給食の提供を止めました(東京新聞)。文部科学省の調査では、避難所に指定されている公立学校29,529校のうち、断水時のトイレ対策をしているのは75.1%、飲料水の確保は83.4%、生活用水の確保は36.7%です(2024年11月1日時点)。飲み水より、トイレや掃除に使う生活用水の備えが遅れています。
工場:生産と洗浄、そして目標復旧時間
工場の断水は生産と洗浄を止めますが、断水で工場が何日止まったかを横断的にまとめた公的な集計は見つかりませんでした。
手がかりは国の指針です。内閣府の事業継続ガイドラインは、事前対策に「水をはじめライフラインの代替対策」を挙げ、ライフラインの復旧時期をいくつか仮定して目標復旧時間を検討するよう求めています。この記事の原因別・地震別の日数は、その仮定の材料になります。1995年の阪神・淡路大震災では、断水中は通常の10分の1程度の水で耐えなければならず、医療施設や廃棄物焼却施設などに深刻な影響が出たと記録されています。2025年の沖縄本島の断水では、那覇空港の旅客ターミナルで館内の飲食店全44店舗が営業を取りやめました(琉球新報)。業種ごとの水の使い方は工場の地下水利用のページにまとめています。
病院・福祉施設:3日分の水が要件
災害拠点病院には、少なくとも3日分の病院の機能を保つ水の確保が要件として求められています。
厚生労働省の通知(令和元年7月)は、災害拠点病院の指定要件に、災害時に少なくとも3日分の病院の機能を維持するための水を確保することを加えました。具体的には3日分の容量の受水槽か、停電時にも使える地下水利用の設備(井戸設備を含む)を整えておくことが望ましく、必要に応じて優先的な給水協定などで確保することも差し支えないとしています。2019年の台風19号では、合計142の医療機関が断水しました(厚生労働省)。受水槽の水が尽きるまでの日数が、病院が水道に頼らずに診療を続けられる日数の上限になります。病院の水の確保は病院向けのページで扱っています。
事業所が断水したら最初に確かめること
事業所が断水したら、まず受水槽の残量と1日の使用量から、あと何日持つかを出し、使い道に優先順位を付けます。
- 受水槽の残量と1日の使用量:有効容量を1日の使用量で割ると、持ちこたえられる日数の見当が付きます。節水で使用量を減らせば日数は延びます。
- 水道事業者の発表:断水の範囲と見通しを確かめ、見通しが出ていなければ更新を待ちます。
- トイレを流してよいか:地震のあとは排水管の無事を確かめるまで流さず、携帯トイレに切り替えます。
- 水の使い道の順番:飲み水、医療や衛生、トイレ、生産の順など、止められないものから割り当てます。
計算の考え方を示した図。実際の日数は施設の受水槽の容量と使用量で確かめる
断水が長引く前提で、自前の水源を持つ
断水が長引くことに備え、水道とは別の水源として井戸・地下水を持つ施設があります。ただし井戸にも弱点があります。
国の委員会の報告書は、防災用井戸や耐震性貯水槽、仮設水槽などを整えることを「効果的」としています。能登と熊本の地震では、実際に井戸が断水中の水を支えました。
能登と熊本で、井戸は何を担ったか
能登と熊本の地震では、民間や地域の井戸が開放され、断水中の生活用水を支えました。
2024年の能登半島地震で、石川県七尾市では断水中に59件の井戸が使われました。内閣官房の地下水マネジメント研究会の資料によると、回答者の85%が地震から3日以内に井戸を開放しています。熊本市は、災害時に民間の井戸を提供してもらう協定を市内99社の100か所と結んでいて、2026年の地震では南区の14か所が稼働しました。
井戸も止まる・傷む。弱点を先に知る
井戸は、停電でポンプが止まる、地震で井戸そのものが傷む、津波で塩水が入る、といった弱点を持っています。
七尾市の調査では、使われた井戸の2割でトラブルがあり、停電によるポンプの停止、ポンプや管の故障、井戸水のにごりが挙がっています。2026年の熊本の地震では、八代市を中心に各家庭の井戸の多くが被害を受けました(国土交通省)。東日本大震災では浅井戸の塩水の被害が23か所で起き、改善に100日以上かかった所もあります。能登では、地震で水質が変わったおそれから、それまで飲んでいた井戸水を飲まなかった例もありました。災害のあとの井戸水は、検査で確かめてから飲むのが安全です。検査の項目と頻度は水質検査の記事で解説しています。
施設の水源に地下水を加える
施設の水源に地下水を加えるなら、深い井戸・浄水処理・非常用電源を組み合わせ、水道と二本立てにします。
当社のオンサイト浄水処理サービスは、施設の敷地内の深井戸から地下水をくみ上げ、浄水処理した水を受水槽へ送ります。井戸と浄水処理の設備を非常用電源につないでおけば、停電中も給水を続けられます。設備に異常があるときは、水道水が自動でバックアップします。東日本大震災では、導入先の病院が水道の復旧までの数日間、すべての飲用水と医療用水を井戸の浄化処理水でまかないました。仕組みは地下水の飲料化のページで説明しています。
断水についてのよくある質問
Q. 断水と給水制限(減水)は何が違いますか
A. 断水は給水そのものが止まることです。給水制限は、水不足のときなどに水道の圧力を下げて水の量を減らす「減圧給水」と、時間を区切って給水を止める「時間給水」の2つを指します。給水制限は水の量や時間を絞るもので、断水はそれを超えて給水が止まった状態です。
Q. 断水が解消したら、水はすぐ飲めますか
A. すぐには飲めないことがあります。通水の直後は濁りが出ることがあり、水質検査が終わるまで飲用を制限して配水することもあります。2018年の西日本豪雨では、愛媛県宇和島市三間地区で断水の解消後41日間、飲み水としての利用が制限されました。水道事業者が「飲用可」を発表するまでは、発表どおりに使い分けてください。
Q. 断水はどこに問い合わせればよいですか
A. 住んでいる市町村の水道事業者(水道局や上下水道部など)です。東京都水道局の「断水・濁水情報」や横須賀市の公式Xのように、サイトやSNSで状況を出している水道事業者もあるので、先にそちらを確かめます。水道事業者の断水情報に載っていないのに自分の建物だけ出ない場合は、受水槽のポンプなど建物の設備が原因のこともあるため、建物の管理者へ連絡します。
Q. 受水槽のある建物では、断水してもしばらく水が出るのはなぜですか
A. 受水槽に貯めてある水を、ポンプや高置水槽から配っているからです。受水槽が空になれば水は止まります。蓄えている量は建物ごとに違うので、残りの日数は有効容量を1日の使用量で割って見当を付けます。停電でポンプが止まると、受水槽に水が残っていても上の階へ送れなくなることがあります。
Q. 井戸水は断水のときに飲めますか
A. 普段から飲用の検査をしている井戸でも、災害のあとは検査で確かめるまで飲まないのが安全です。能登半島地震では、水質が変わったおそれから、それまで飲んでいた井戸水を飲まなかった例がありました。飲用に使えない井戸水も、トイレや掃除などの生活用水には役立ちます。検査の考え方は水質検査の記事にまとめています。
参考情報
- 国土交通省「水道施設の耐震化の推進」(表「最近の主な地震と水道の被害状況」)
- 国土交通省 報道発表(令和8年熊本地震の水道本管の応急復旧の完了、2026年8月)
- 国土交通省「上下水道地震対策検討委員会報告書」(令和6年9月)
- 国土交通省「令和6年能登半島地震を踏まえた上下水道の強靱化について」(内閣官房 会議資料3、令和6年6月)
- 国土交通省「令和6年能登半島地震から1年」(令和6年12月)、「復旧・復興状況と今後の見通し(令和7年出水期前時点)」(令和7年6月)
- 石川県 水道の被害と復旧の公表資料(令和6年2月2日)
- 国土交通省 上下水道の復旧状況の資料(「断水解消」の定義の注記)
- 厚生労働省「水道の耐震化計画等策定指針」(平成27年6月)
- 国土交通省「地震対策マニュアル策定指針」(令和8年3月)
- 「東日本大震災水道施設被害状況調査の概要」ほか、国土交通省サイト掲載の東日本大震災の水道の被害と復旧の報告書
- 厚生労働省水道課ほか「平成30年7月豪雨 水道施設被害状況調査報告書」(令和3年1月)、厚生労働省 令和元年台風第19号の水道の被害状況の資料
- 内閣府 令和5年1月20日からの大雪等の被害状況の資料、国土交通省 水道管の凍結への注意の案内
- 沖縄県企業局 断水に関するお知らせ(2025年11月)、和歌山市「六十谷水管橋の落橋に関する報告書」、姶良市 市長メッセージ(2025年8月)
- 豊中市・横須賀市・大阪市 断水のお知らせ、東京都水道局「断水・濁水情報」
- 日本水道協会「地震等緊急時対応の手引き」(令和7年3月改訂)
- 総務省「水道事業の現状等」(令和7年7月)、国土交通省「基幹管路の耐震化状況(令和6年度末)」
- 内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(令和6年12月改定)、東京都下水道局・神奈川県・経済産業省 災害時のトイレと携帯トイレの備蓄の案内
- 農林水産省「大事な水、どうやって備えますか?」、首相官邸「災害に対するご家庭での備え」
- 内閣府「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」、内閣府「事業継続ガイドライン」(令和5年3月)
- 文部科学省 避難所となる公立学校施設の防災機能の調査(令和6年11月1日時点、令和7年6月公表)
- 厚生労働省 災害拠点病院の指定要件の通知(医政発0717第8号、令和元年7月17日)、内閣府「阪神・淡路大震災教訓情報資料集」
- 内閣官房 地下水マネジメント研究会の資料(七尾市の井戸の利用調査、2024年7月)、熊本市 災害時の協力井戸の案内、国土交通省 令和8年熊本地震の井戸の被害の案内、国土交通省「災害時地下水利用ガイドライン」(令和7年3月)
- 小学館「デジタル大辞泉」(コトバンク)「断水」「給水制限」
- 静岡新聞、東京新聞、琉球新報 各報道
